9,6 川井結海の興味
少し困った事態が起こっている。
今日はクラスの演習日
今回もクラス内でいくつかのグループに別れ
各々が議題の内容を話しあいレポートにまとめる。
ほとんど意味が内容に見えるため
だいたいのグループが雑談か無言状態で終わる。
たぶんこの授業のねらいはコミュニケーション能力を高め
会議の席でも発言できるような人間を作るのが狙いなのではないだろうか。
私は正直興味のない人とはあまり関わりたくない。
そんな私は現在興味のない人間の目の前に座っている。
空気が重くてしかたがない。
そしてこの重い空気を壊そうとしている男もいる
こちらの男性は、私が興味あるない以前に
私事態に興味がないようで
普段は彼から話しかけることは、ほとんどない
私が知る限り彼の毎日は伊田芽麻友という女性とずっとしゃべっていることがほとんどだ。
だが今日の彼は、しゃべりかけてくる
そして隣の男とアイコンタクトをしているのだろうか
少しそわそわしている。
普段だったら何かを悟ったかのように
麻友の事を見ているはずなのに。不思議だ。
麻友も麻友で先ほどから
この男をちらちら見ながらニコニコしている
彼女も不思議な部類の人間だ
だが今回の笑顔は何ていうのだろうか
仮面の笑顔という表現が似合っている。
先ほどから、笑声が異常に大きい。
席が離れているにもかかわらずすごいものだ
彼と麻友はいいかげんに付き合ってしまえと思うが
それは言わないでおこう。
そこは本人達でがんばってほしい
彼の名前は狭山蒼生といい
何かを悟ったような目をしている。
あまり笑わず
服装はわりと学生らしい
普通の普通の男という印象だ。
麻友もこの悟った男の何が良いのか少し不思議でもある。
「あの川井さんは・・」
やっと狭山君の隣にいる斉藤君が
何か言っているみたいだが
声が小さくてあまり聞こえない
どちらかというと「声が小さいよ斉藤」と
小声でしゃべっている狭山君の声のほうが大きい
斉藤君
声も大きくはきはきしているはずの彼が今日は別人みたいだ。
風邪なのだろうか?
「か、川井さんは、た誕生日い、いつなんですか?」
「私の誕生日は9月26日だよ、斉藤君は?」
「10月5日です」
「わりと近いね」
「そうですね」
・・・・
狭山君なんか話して
そろそろ間がもたない
それを察してくれたのか狭山君はしゃべりだした
「・・川井さんさ、今度みんなで遊びたいからアドレス教えてくれないかな?」
随分唐突だ
そして君には麻友がいるだろ
それはまずいんじゃないのか?
「別にいいけど・・」
私は少し携帯をいじり
アドレスを狭山君に教えた
「ありがとう川井さん、じゃあ今度斉藤から連絡させるからよろしくね。」
・・狭山君を睨んでみると狭山の顔は少し青ざめていた
私の顔がこわかったのだろうか・・
しばらくすると狭山君は「ちょっとごめん」と言いそのまま廊下へ行ってしまった
だが今、斉藤と私がとりのこされている
この空間をどうしよう
無言の常態がつらい
しかたなく私は携帯の電話長を意味もなく見ることにした
しばらくすると狭山が帰ってきた
少し疲れ気味な雰囲気である。
そして少し遅れて帰ってきた麻友の笑顔が印象的で
対象的な二人がお互いを際立たせていた。
その姿を見ていた斉藤君はさっきまでと違い
冷たい顔つきをしていた。
「斉藤君どうしたの?」
そういうと斉藤は
「えっと、ちょっとね。あんまり良くないよなーって思って」
そんなよくわからないことを彼は言っていた。
少しだけ興味がでてきたので
メールくらいなら返してあげよう
そう思った今日であった