10,7 狭山蒼生の撮影
写真は好きじゃない
特にとられるのが苦手だ。
理由としては、
自分の顔をあまり見たくない
そして画像になって残っているというのがあまりすきじゃないからだ
そんなことを言っておきながら高校時代
惚れた子がカメラを撮って応募しようと言った冗談を本気にして
ついデジカメを買ってしまったのは悪い思い出である。
そんな理由からデジカメを所有している僕。
僕とは逆に伊田芽麻友はカメラが好で
自分専用の一眼をもっていた。
本当に森ガールである。
今日はカメラ同好会が無事カメラサークルになった記念、という名目で
(みんなで自然を撮って市のコンテストに応募しよう)というイベントを斉藤が企画してくれた。
本日のこのイベントに集まってくれたメンバーは
斉藤、伊田芽、僕、有田さん、川井さん、中村さん
この6人だ
本来もう一人くるはずだったのだが、諸事情によりこれなくなったそうだ。
中村さんは同じクラスの同級生で、いたって普通の女の子だ
あまりしゃべったことがないからあまりわからないが
今日の中村さん、カメラも何ももってきてないところを見ると
どうやらケータイで撮るようだ。
ケータイも今はデジカメに負けず劣らずに画質が良いから、デジカメ業界も大変だろう
そして僕個人としての問題なのだが
このメンバー個人的には非常に気まずい。
僕は斉藤と伊田芽とは仲よくしゃべれるだろう
ただ他の人とは仲良くしゃべれる気はしない。
どこか気まずいし気も使う。
たぶんこのイベントの裏の名目が斉藤と川井さんにあるせいだ
このイベントの趣旨名目上は市のコンテストに応募することだが
本来の趣旨は斉藤が川井さんと仲良くなるために行われている。
同好会をつくって1年もたつというのに
いまだに斉藤は川井さんとまともな会話をすることができていない。
僕らはもう大学2年の秋にさしかかっていた。
僕と伊田芽の関係は僕自身でさえ表現していいのかわからない
よく言えば付き合っている。
悪く言えば煮え切らない関係。
僕らは付き合っているわけではないが、お互いのことが好きである
それだけは確かであった。
「狭山行くぞ」
斉藤が僕に声をかけてきた
どうやら近くの公園に行って自然をテーマに撮影するらしい。
「車どうする?」
「6人だし2台でいいだろ俺とお前が運転。あと伊田芽とお前は2人でいけ。お前らの会話には誰もはいってこれないから空気が悪くなる」
ずいぶんな事を言ってくれるものだ
でも確かに僕らの会話に割り込んできた人は見たことがない気がする
「あいよ
俺の車のって」
僕は伊田芽にそう言おうとした所
彼女はすでに僕の車の助手席に座り、シートベルトをしていた。
「・・じゃあ俺は先いってるから、川井さんとの会話がんばってくれ
お前有田さんとは、わりと仲いいんだからそのへん協力してもらえよ」
「もうしてもらってる」
えらそうに言ってはいるが
非常に女々しい男である
まあ僕自身も女々しい部分があるから強くは言えない。
今日は天気もいいし散歩するにはいい日だと思いながら
僕は伊田芽のいる車にのり、車を出発させた。
「ねえさやぼう、川井さんと斉藤君どう思う」
彼女は持ってきていたお菓子をたべながら唐突に聞いてきた
「まあ難しいじゃないかな、どっちかっていえばまだ有田さんのほうが脈ある気がしてしまう」
「ダメだよー有田彼氏いるんだから」
「まあ雰囲気だよ、なんとなくっていう感想。」
「はは、そうかもね
そしたら4人でデートもできるもんね。食べる?」
彼女はもっているお菓子を僕に差し出した
運転中だから見えない。脇見運転はわりと危ない
「斉藤とずっと遊ぶのは大変だから嫌だ。運転中だから赤で止まったらくれ」
「口開けて」
彼女はお菓子を僕の口元までもっていき食べさせてくれた
「ありがと」
「確かに斉藤君とずっと一緒は大変かもね」
彼女は僕の肩に頭をよりかけながら言う。
彼女の右手が僕の左側の太ももに置かれたので
僕は僕の左手で彼女の右手を軽く握った。
「まあいいやつなんだけどね
基本的にはずっと偉そうだけどさ。
それで川井さんとのときはあれって・・」
「確かに、なんであんなに偉そうなんかね絶対俺様って感じなんに」
彼女の笑っている振動が僕の肩に伝わる
「そう中身女々しい」
「君と一緒だね」
「うるさい。
今日はけっこう髪巻いてきたんだな」
赤信号になったので、僕は彼女のまかれている髪をいじってみた
「うん、あんまりいじんないでね。
くずれちゃうから」
「はいよ。」
そいう言われたため僕は彼女の頭をなでることに変更した
「そろそろつくの?」
「うん。もうすぐそこ」
しばらくすると公園がみえてきたので
近くの駐車場に車を停めた
「運転お疲れ様。ありがとね」
「あいよ。」
車をでて僕は斉藤の所へ向かう
そこには機嫌の悪そうな斉藤がまちかまえている
やはり体がでかいというだけでも随分高圧的になる
「お前らイチャイチャしすぎだ、後ろに俺らがいるの考えろ」
どうやら後ろの車は斉藤の車だったようで、僕が彼女の髪をいじくっている所など見られていたようだ
けっこうこれは恥ずかしい
「わるいわるい、さて自然をとりいきますか」
僕は気にしないように、話題を公園へむけ
僕はデジカメをもたず彼女の元へ歩いて行った。
僕はまだ彼女と一緒に写真を撮ったことがない
彼女は一緒に撮ろうとしているが
僕としては付き合ったときにちゃんと撮ろうという考えをもっていたため
僕が写真に写るのが嫌いという理由から未だに拒んでいる。
彼女を見つけると
彼女はすでに小さめの体には不釣り合いな一眼レフを構えながら
自然の写真を撮り始めているようだ。
僕は近くのベンチに座りそんな彼女をずっと眺めていた




