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七人ミサキ(4)~商品名ザミエル~

龍樹と恵子は七人ミサキから出来る限り離れた場所で座り込んでいた。



落ち着いてからまず恵子が龍樹に尋ねた。



「あれは何なの?妖怪ってことは分かるけど」

「七人ミサキ。常に七人組で行動し、人間を見つけると追いかけてくる」

「それだけ?」


「な訳ないだろ。捕まったら即死亡。一番先頭のミサキが消える代わりに一番後ろに捕まった人間がミサキとして並び彷徨い続ける。全く面倒な奴らだ」



そう言って龍樹はM870のスライドを引き、空薬莢を排出してから12ゲージ弾を一発込めた。


恵子は龍樹の説明で高田が何故あそこにいたかを理解した。




不安そうな表情の恵子を見て龍樹は続けた。


「大丈夫だ。鈴の音で向こうの位置は分かるし奴らはのろい」

「そっか・・・・・・もう一ついい?」



「何だ?」

「何でそんな古い銃使ってるの?」


「俺の悪友が好きなんだよ。レトロな銃」

これは半分嘘で半分本当である。確かにNⅤの副委員長はレトロな銃が好きでよくそれに関する物を作ってくれたりする。

もっともこれは副委員長がレトロな銃しか改造したくないというわがままのせいだが・・・・・・。



だが、銃そのものは業者から買っている。


前にも述べたように裏・風紀委員への援助は少ない。

よって、単純に安い旧式のものを使っているといった次第である。




今度は龍樹が尋ねた。


「じゃあ今度は俺の番だ。何しに来た?こんなところに」



恵子は一瞬、躊躇ったがやがて淡々と語り始めた。

「分かった。言うよ。・・・・・・お母さんを生き返らせるんだ」


「人体生成か」

「そう」











人体生成。

古来から妖怪には不思議な力が備わっていると信じられてきた。

有名な所でいけば、人魚の肉を食べれば不老不死になれる等、たくさんの逸話が残っている。



その妖怪の肉を使って死んだ人間を生き返らせるという話を龍樹も聞いたことがある。

「そんなもの本気で信じてるのか?」



恵子はムキになって反論した。

「お母さんが戻ってくるならどんなことでも信じる!」

「ふーん。・・・そうか」


龍樹は興味無さそうにそう返すと視線を自分の学生カバンへと移した。


そして、カバンから古びたコルトSAAと赤い弾頭のコルト弾を一つ取りだした。



SAAはそのまま右手に持ち、コルト弾はポケットへと仕舞われた。



「まあ、仕方ない。これで一気に決めるか」
















シャン シャン シャン




七人ミサキは動きを止めた。



前方に獲物がいたからである。



「さてと。三沢、頼むぞ」


龍樹はSAAのハンマーを下ろした。

恵子は龍樹の持っていた懐中電灯で七人ミサキを照らした。

七人ミサキはこちらから見て横にほぼ一列に並んでいる。


まず恵子が照らした一番左端のミサキに一発。




弾はミサキの心臓部へと吸い込まれていく。



「アギャアアアアッ!!」



ミサキはこの世のものとは思えない叫び声を上げて砂とも塵とも似つかないようなものに変わり、消えた。


龍樹がまたハンマーを下ろす。

シリンダーが回る。


「次頼む!」

恵子はさっき消えていったミサキのすぐ右隣りのミサキへと光を当てる。



すると、ミサキ達は鈴の音を響かせながらこちらへと前進を始めた。

「カ・・・・・・マ・・・・・・ター」


元・高田が龍樹の名前を呼びながらゆっくりとした足取りで近づいてくる。



一匹一匹端から順に龍樹はミサキを撃ち殺していった。



しかし、SAAの装弾数は6発、相手は7匹。




それが何を意味するか恵子は龍樹が6匹目のミサキを撃ち殺した時に気付いた。



「鎌田くん逃げて!!」


「カマタアアア!!」



龍樹が空薬莢を排出し、赤い弾頭のコルト弾を1発装填した時、最後のミサキである元・高田は龍樹に抱きつこうと両腕を伸ばしていた。



恵子は龍樹のそして自分の死を身近に感じた。


が、その感覚は杞憂であったことに後々気付く。









SAAの発砲音より一際大きな発砲音と共に元・高田の体は宙を舞った。




まるで映画のワンシーンのようにそれでいて景色がスローモーションで動いているかのように恵子には感じられた。


元・高田は地に着いた後も2m程転がって行った。



龍樹の左手にはM870が握られている。

これで吹き飛ばしたのだろう。


「悪いな。言い忘れたが俺は両利きなんだ。・・・・・・安心しろ三沢、今までの6発はフェイクだ。7発目こそが魔弾・・だ」



恵子は魔弾の射手を知らないので意味が分からなかったが、自分の身の安全だけは保障された気がした。


「商品名ザミエル・・・発射」



SAAの銃口から放たれた赤い弾頭のコルト弾は元・高田の心臓部へと吸い込まれていった。

しかし、弾は動きを止める事を知らない。

そのまま方向転換し、元・高田の体中を駆け巡った。



「ア・・・・・・カ・・・・・・カ・・・・・・マ」


元・高田は呂律が回らず訳の分からない声を上げて後ろに仰向けに倒れ込んだ。









「Fake sixは妖怪の核を的確に射抜くのに対し、ザミエルは妖怪の核の周囲で同心円状に運動を繰り返す。勢いそのままでな。むごいもんだ」



核というのは妖怪の心臓に当たる部位のことである。

Fake sixはその核が発する微弱な電波に反応して核を確実に射抜く。



それに対してザミエルはその微弱な電波に乗り、電波の動きと同じ同心円状の運動を続ける。


だが、核は破壊されない限り電波を発することを止めない。


といっても、妖怪とて人間より生命力が強いといってもある程度の傷を負ったら死ぬ。




だが、コルト弾程度の大きさの弾丸の威力で殺せる程ではない。

妖怪にとってはまさに生き地獄である。


しだいに元・高田の体中から真っ赤な液体が流れ始めた。

これは妖怪の血に当たるものである。


妖怪であろうともその体のベースは生物と一緒なのだ。



それとほぼ同時にザミエルも動きを止めた(核の活動が止まった訳ではなく、ただ単に弾丸の勢いが死んだからである)。






龍樹はその光景をただただ眺めていた。

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