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七人ミサキ(1)~飯島高校の日常~

作中のM102BはM92Fで

mac15はmac11のイメージです。


高校2年生の鎌田龍樹は飯島高校2-Cで宿題に没頭していた。



「よう、リューちゃん。今頃宿題か?」


そう言って龍樹の肩に手を乗せた軽い雰囲気の少年は二宮耕治にのみやこうじ


耕治は龍樹と中学からの親友である。

といっても、その仲は複雑なものだが。


「まあな。昨日も駆り出された」

「またお化け退治かよ。大変だな正義の味方も」



龍樹がじろりと耕治を睨んだ。それを見て耕治はバツが悪そうに続けた。



「分かってる。リューちゃんのことは誰にも言わんさ。大体、俺自身あのことが無ければリューちゃんのことなんか絶対分からなかったぜ?」


「そうしてくれ」

龍樹がそう言葉を返してからすぐの事だった。



何人かの男子生徒が龍樹と耕治を取り囲んだ。


逃げられないように四方八方を塞いでいる。



リーダー格の少年が口を開いた。



「勉強か?真面目くーん」


「あちゃあ、高田君ご一行か」



耕治はおどけながらそう言った。


リーダー格の少年・・・高田は拳銃を龍樹のこめかみに突きつけた。

「そういう真面目な態度、俺大嫌いなんだよね」



高田とその一味はクククッと笑いだした。


他のクラスメイトはそこから一気に距離を置いた。


「あっそ。だから留年するんだろ、苦学生」




ちなみに、高田は本来もう3年生のクラスにいるはずの年齢である。


龍樹は高田に目も向けずに計算式を解き続ける。



その澄ました態度に対して、高田は激昂した。

「てめ、俺は撃てる男だぞ?おい!」

「・・・・・・M102B。M92Fの改良に改良を重ねた結果がこれか。ベレッタの名も随分と落ちたな」


龍樹は冷静に銃の分析をしてそのままの調子で続けた。



「どうでもいいが安全装置セーフティくらい外したらどうだ?」

「なっ・・・・・・」



高田が自らの愛銃を顔に寄せたのを龍樹は見逃さなかった。


龍樹は愛銃のグロック17学生カバンから取り出し、高田の額に突きつけて引き金を引いた。



乾いた音が教室中に鳴り響く。


クラスメイト全員が口をポカンと開けている。

唯一、無表情なのは龍樹と耕治くらいのものだろう。


当の高田は白目を剥き、大口を開けて倒れ込んでいる。



「あー、空砲空砲。先生には適当に言っといて。あとそこの部下達はそいつ席に座らして」


パンパンと手を叩きながら耕治は場を仕切り始めた。

発砲音を聞いて駆けつけてきた教師に1人の男子生徒が嘘の説明を始めた。

部下達は負け惜しみを呟きながら高田を席まで引きずって行った。


「悪いな」

「良いってことよ。俺はサポートでさ」

「人望はお前の方があるだろ?」

「もうちょい口数増やせばリューちゃんだって・・・」



担任の男性教師が教室に入ってきたのを見計らって耕治は自分の席に戻った。


担任が空砲を撃ち、生徒達に黙るように促した。


















銃刀法。それは戦後の日本では完全に死語だった。



今や小学生でも防犯ブザー代わりにサバイバルナイフとmac15で武装する。


そんな世の中である。




















「ねえ、鎌田君」

「ああ?」


龍樹は2限目の後の昼寝の時間(個人的なもの)が何よりも好きである。

それを邪魔されたからか口調もきつくなっている。



「鎌田君は妖怪の居場所って知ってる?」


質問の主は龍樹の同学年の三沢恵子みさわけいこだった。

恵子は学年で一番背が低いので一部の男子から強烈な支持を受けている。

もちろんロリコン的な意味でだ。




もっとも龍樹はそんなことには興味は無い。

ただ単にクラスでも浮いてる存在の自分にそんなことをなぜ聞いたのか驚いた。


「知ってても教えねえよ。んな危険な場所」

「そっか・・・・・・」


「何で俺に聞いたんだ?お前、もっと仲良くてそういう情報に敏感な友達いるだろ?」

「でも、佳奈ちゃんが鎌田君は詳しいって言ってたから」

「あの馬鹿・・・・・・」



そう言って龍樹は頭を抱えた。

















去っていく恵子に龍樹は声をかけた。


「お袋さんの命日だったな。今日」



恵子が足を止めて振り返らずに答えた。


「覚えててくれたんだ。ありがと」

「まあな。1年の時、結構衝撃的だったからよ」

「うん。あの時はごめん」

「親が死んだら泣くのが普通だ。あそこで異常だった(・・・・・)のは俺だけだ」


恵子はその言葉に何も返さず無言で教室から出て行った。


その背中は少し悲しげだった。

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