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かまいたち(3)~その疾きこと風の如く~

龍樹は夜の飯島市の繁華街を歩いていた。

付近で2件も殺人事件が起きたせいかいつもは賑わっているはずのここもひっそりとしている。

店も7時にはほとんどの店が営業を終了した。



龍樹はこの珍しい光景に目を移しながらもピンマイクへと話しかけた。

「全く妖怪が出る様子が無いんだが」


佳奈のやるせない声が返ってきた。

「そう言われても今日中に仕留めないとまた被害者が出るよ?いいから黙って歩きなさい」


「はあ・・・・・・」

龍樹の足取りは更に重くなった。
















龍樹から少し離れた路地にて



「佳奈先輩、もしかまいたちが出たらどうするんですか?」

「まだかまいたちとは決まってないけどね。いつもは龍樹がFake Six使って終わりだけど今回はそれが無いから佳奈が燃やして殺すと思う」


直哉は佳奈の口から出た言葉の意味を尋ねた。

「燃やす?」



佳奈が答えようとしたその瞬間。

彼女のすぐ後ろを明らかに違う雰囲気の風が通った。


佳奈は勿論、その風を浴びてすらいない直哉でも気付く程その風は異常だった。

「今のですよね?」

「うん」


佳奈と直哉はすぐに路地から飛び出して龍樹の元へと走り出した。


















龍樹はその身を切りつけられるまで異変に気付かなかった。



背中に走る燃えるような衝撃が彼を襲った。


「うっ!?」


すぐにホルスターからグロックを抜き、構える。

風は狭い道を存分に使い、前後左右上下を飛び回る。


牽制の意味も込めて龍樹は3発程撃ったが当然かわされた。



風がまた龍樹を襲う。


何とか直撃は避けたものの、今度は右肩に深い切り傷が出来た。



「狙うなら後ろの2人にしろよ、畜生」




風は大きく空に上昇し、急降下してきた。


それを見越して龍樹はカバンに入ってるM870を取り出し、風に向かって発砲。



しかし、多方向へと弾を撒き散らす散弾ですら風に傷をつけることは出来なかったが龍樹の計算通りに事は進んでいた。


「この狭い道で散弾かわすとなるとやっぱ上か下だよな」


下降することでかわした風に2発の9ミリ・パラベラム弾が襲った。



弾は風の中心部へと吸い込まれていった。


獣の悲鳴のような叫びを上げると風は逃げて行った。



それからすぐに風が逃げて行ったのと逆方向から少しばかり遅い援軍が来た。


「どうしたの?」

「大丈夫ですか?」

佳奈と直哉は同時に尋ねた。


「やられた。あいつ予想以上に速いぞ。くそっ」



龍樹は傷口に学生カバンから出した消毒液をまず右肩にかけ、強引に背中にも垂らす。

痛みに声を上げそうになったが我慢した。


包帯を巻きながら2人に指示を出した。

「あとから必ず追いつくから先に行っててくれ」

「分かったけど妖怪は何処に行ったの?」


「血の跡を辿れ。最低でも2発撃ち込んだから出血してるはずだ。細胞組織が回復してその内追跡できなくなる。早く!」

「分かりました」

「分かった」



佳奈と直哉は道路に点々と続いている真っ赤な血を目印に走り始めた。

















血が続いていた場所は森だった。


草木がうっそうと生い茂るその森はまるで来る者を拒むかのように木々を揺らして威嚇してるように見える。



直哉は正直少し逃げ腰である。


「この中みたいね。直哉くん、明かりある?」


直哉はポケットからペンライトを取り出した。

佳奈は少し不満げな顔をしたが無いよりはマシだと思い、直哉の手からペンライトを受け取った。



「直哉くん、もしも危なくなったらすぐ逃げて。ちょっと危険っぽいから」

「分かりました」


普段だったら絶対女子を先頭に歩かせることなどしない直哉だったが、今回ばかりはそれも躊躇われ、先頭を佳奈に譲った。




だが、直哉はいくらなんでもそんな簡単に妖怪とは遭遇しないだろうと高をくくっていた。

その幻想は森に入って3分もしない内にいとも簡単に崩された。



先に気付いたのは直哉だった。

一か所。本当に小さくその空間にだけ小さな竜巻が出来ていた。


竜巻は木の葉を纏いながらゆっくりとこちらに近づいてくる。


「佳奈先輩!!」



佳奈がこちらを向くよりも早く直哉は近くの茂みへと飛び込んだ。


佳奈もすぐに先の呼びかけの意味を理解し、右に前転することで竜巻をかわした。









竜巻の中にはいたちがいた。

両手が鎌の様な鋭い刃物になっているという点を除けばそれは正しくいたちだろう。

その姿はやはりかまいたちだ。



かまいたちの体当たりで直哉のペンライトは壊され、光源が森から消えた。


「ったく、もう!」


佳奈の右腕を伝って辺りの草木が燃えだした。

それによって再び辺りは明るくなる。




「熱っ!!」


だが、直哉はその燃えている草木の生い茂る茂みへと隠れていたのだからたまったものではない。

佳奈の右腕から炎が出たのが気になったが直哉は身の安全を第一に考え、その場を離れた。


かまいたちは佳奈に狙いを定めたらしく直哉を追ってこない。


「この!」


佳奈の右腕から炎が噴射される。


今度の炎は明かりとりの為ではなく、かまいたちへの火炎放射である。



かまいたちは火炎放射をかわして佳奈に体当たりを仕掛ける。

竜巻の中でかまいたちが両手を前に突き出して構えていることから触れたら指の1本や2本は持ってかれるだろう。


佳奈も危険を察知し、体当たりをかわしてすぐに火炎放射による反撃に移る。

そして、かまいたちはそれをかわす。



その応酬を何度か見て直哉の頭に一つの疑問が浮かんだ。

「何で佳奈先輩あんなトロい(・・・)やつを仕留められないんだ?」

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