悲しき怪物
いやぁ、グロかった。
最後カメラの前を横切った燃えている自分の生首はこれからしばらく夢に出てくると思う。
一通り見終わった僕は今、エンドロールを眺めている。
門番隊長はカルロスさん。
魔法を打ち込んだのはサシュマさんね。
怪物役は僕、スタルビニアラルフィード・サシュマシャルルペペペぺ・チャチュムラッチャヌボンボ。
撮影は神様。
スペシャルサンクスに& you と入れるこだわり様だ。
さすが神様仕事が早い。
おふざけもいい加減にしろよ。
いやぁ、文字で見ても自分のフルネームは頭に入ってこないなぁ。
色々ツッコミどころはあるけれど、死因は分かったよ。
でも解決したい所が色々あるから聞いて良いかな。
「どうぞ。」
なんであんなムッキムキにしたのかは聞いたけど、なんで顔はそのままなの。
アンバランスが過ぎるって。
元々童顔気味の僕の顔を315cmのハイパーボディにそのまま載せたのはマズイって。
「え、だって、望んだのは、鍛え上げられた最高の肉体でしょう?
顔は気に入っているのかと思いまして。」
そうだね。
確かに僕はそう頼んだよ。
だけどこんなにでっかくなるなんて…いや、いいや。
多分、無駄な議論になっちゃうから。
今後身体を変える時は相応に顔も変えて欲しいな。
すごく気持ち悪かったから。
「そうですか?
ちょっと神様、美醜とかに疎くて。
千年ぐらい直接人と会っていませんでしたからね、ははは。」
そっか。
じゃあ仕方ないのかな。
とはならないよね。
これからはトータルバランスで勝負しようね。
あ、あのさ、そういえば、なんで、あの人達は僕の事を悪者だと認識したの?
寄って行ったタイミングでは、とんでもない見た目の善良な人間の可能性がギリギリあったりよね。
あんな、矢と魔法を乱射するのは早計じゃない?
「あぁ、あれは仕方ないですよ。
とんでもないマッチョが、殺すぞと言いながら駆け寄って来たんですから。」
えぇ!?
言ってないよそんな物騒な事!
ただ、おーいって手を振りながら声をかけただけだって。
「あ、それ。
この世界の言語で、殺すぞって意味の単語の発音にとても近いです。」
嘘でしょ。
そりゃ撃たれるわ。
3m越えてるムキムキマッチョに童顔が乗っかってる男が、走りながら殺すぞって言ってたんでしょ?
悪魔の仕業じゃん。
鬼の宴じゃん。
っていうかさ、言語とか鑑定とかマジックバッグって、異世界サービスパック的なやつに入ってないの?
「なんですか、それ。」
あ、こっちの話。
無いのか、そういうの。
まずこれあげておけば間違いないみたいなやつ。
何となく分かっていたけどね、この神様は優しいけど気が利くタイプではないし。
言葉を喋れないのは辛いけど、言語を覚えるためだけに神様の力を使うのは勿体ないなぁ。
英語だって現地で覚えれば3ヶ月くらいで習得するって言うし、他の事に使えるならまだしも言葉の為だけにはなぁ。
マジックバッグ的なやつも欲しいけど、絶対に最優先じゃないしなぁ。
剣やら槍やら魔法やらを使っている人達がいたから、武力を持つべきだと思うんだよ。
だけど、何を選ぶべきか分からないんだよね。
戦ったことなんてないから。
そもそも魔法がある世界なんだって今知りました。
言おうよ、早く。
全然大事な情報じゃない。
「え?貴方の世界にもありませんでしたっけ?」
無いです。
いや、多分、一般的では無いです。
「あら、そうですか。
珍しいですねぇ。
ならば次は魔法の才能にしますか?
特別な魔法は無理になりましたが、汎用的なものならまだ与えられますよ。」
魔法か…確かに憧れるけど…。
え?特別なのが無理って何?
「え?波を出す力は、個人の固有魔法として扱ったので、もう二度と付与出来ませんよ。
なので魔法に関して今後与えられるのは、この世界にある範囲内の魔法内に限られますね。」
うわ…めっちゃ大きな力を失ってるのかもしれない。
だけど今のところ知識が無さすぎて、それがどれぐらいのやらかしか分からない。
そんな奴が魔法の才能を貰っても持て余すよなぁ…。
あ!モニターで見たやつ…何処だっけ…結構終盤の…これ!
神様、この鳥って何?
何処からやって来たの?
「この鳥はこのメガネをかけたララさんという女性の召喚獣です。
契約した生き物を呼び出し力を貸して貰う魔法ですね。」
なにそれ最高じゃん!
素敵アニマルと一緒なら言語を覚えられていない異世界初心者でも寂しさは紛らわせるし、素敵アニマルがつよつよアニマルなら、僕の戦闘能力の無さもカバー出来ちゃう!
やっとしっくり来たよ。
次の能力は召喚だ!
「良いんじゃないですか?
確かに強い獣に保護して貰うっていうのは良い考えだと思いますよ。
ちなみにここまで4回死んでますが、この世界に滞在している時間なんて合計30分程ですからね、そろそろ本当にいい加減にして欲しいです。
命を何だと思ってるんですか。」
いや、僕の死因を深掘りするとね、果たして僕だけの責任かな。
僕が車の保険屋さんだったら、神様と責任割合の件で相当やり合ってると思うよ。
「ははは。」
何笑ってんだ。
「次の力は貴方の言うとおり召喚にしましょうか。
では、幸多からん事を。」
なんかこの目の前が真っ白になるのも慣れて来たな。
神様が光るのもなんか、神々しさが薄れて来た。
変顔でもしておこう。




