呪い
「え?ラルフちゃん、治癒魔法が使えるの?」
じゃあおねがいしちゃおっかな、とサンドラちゃんは言った。
小さな傷を治させて欲しいとお願いしたのだ。
神様から貰った聖属性魔法。
発動するのは間違いないけど、それが一般的に見て違いがあるのかをこの際に知っておきたい。
流石にこの世界にある技術を使って、また変な作用で死ぬ事はないと思うんだけど、魔法に不慣れな僕は練習が必要。
サンドラちゃんの傷はまさに練習に丁度いい軽傷だ。
「つかえる、らしい。
やったことない、だけど。」
そんないかにも失敗しそうなセリフを言ったにも関わらず、サンドラちゃんもカルさんも止めようとはしなかった。
あ、そっか。
僕自身の魔力はパッと見で分かるぐらい低いんだっけか。
発動に失敗したとしても、大事故につながりにくいと思っているんだろう。
驚くぞぉ。
召喚の時に分かった事だけど、神の力と僕の魔力は関係ないらしい。
僕が出せるフルパワーに上乗せして放つから、魔力のほぼない僕でもアイシャを呼べた訳だからね。
…うし、魔法を出す感覚が分かる。
これと神様のアシスト機能のうちの一つだろう。
僕は手のひらをサンドラちゃんに向けて集中する。
そうすると手のひらに泡立つ様な感触があり、多分これが発動待機状態。
後は意思で放つだけ。
「待ちなさい。」
というところでストップが掛かった。
声の方を見ると、いつの間にかサシュマさんが立っていて、僕の魔法を見守っていてくれたみたい。
あぁ、だから二人も僕の拙さMAXの魔法の行使を黙って見ていたのか。
気づいてたなら教えてよね、もう。
「初めての魔法はな、意図せず巨大になり身を焼く事もある。
基本を教えてあげるから、こちらへ来なさい。」
ホント?
危いなぁ。
身を焼くって…多分止めてくれなきゃ身を焼いてた。
だってコントロール不可の神様の力だから。
これまでの実績が語っているよ…。
「いや、ちょっと待って下さいよ。
まずはラルフに本題を話してからにしてやって下さい。
野生の教え魔人って呼ばれてんの自分で知ってるでしょ?
長くなるんだから。」
あやつと一緒にするなと文句を言うサシュマさん。
野生の教え魔人とかいうモンスターは、一体じゃないらしい。
「ふむ、そうじゃな。
ラルフ、君はラルフという名か。
忘れていたのを思い出したのかな?
それは何より。
さて、子供に聞かせるには少し嫌な話もするが良いかな?」
僕は目を見て頷く。
嫌な話ってなんだろ。
あれか、僕が悪魔憑きだなんだの、あのヘンテコ推理を聞かされるのかな。
吹き出さない様にしないと…!
そう身構えた僕に、サシュマさんが話し始めたのは別の話だった。
「ラルフ、お前の見た目がな、神様に似ておる。
なのでな、危険が多いのだ。分かるか?」
おぉっと。
神様!やっぱダメなんじゃんか!
イケメンになりそうなのは嬉しいけど、神様似ってやっぱ危ないんじゃん!
神の真似事をさせて私利私欲を満たそうとする輩が出てくるだろう事が予見されるから、そこらの孤児院にいたら攫われるってさ!
それどころか、学校とかにも通うのは難しいって!
あれ?異世界の定番を神様のせいで潰されてまくってない?
「もう既に門の所で怪し奴に連れて行かれそうになってた。
俺が割って入らなきゃ危なかったよ。
サシュマ様からそう聞いてはいたけど、実際目にすると本当なんだなって思ったよ。
ラルフ、あの爺さんは悪い人じゃない。
子供好きで、偉い人で、優しい、誠実な人だ。
サシュマ様に保護されるのがお前の為だと思う。
どうだ?」
なんの不満もないよ、カルさん。
むしろありがたいくらいだ。
思えば僕…と神様の不始末をこの2人におっ被せてばっかりだ。
感謝こそすれって感じだよ。
「家族、いたことないから、嬉しい。
ちちに、なって、ほしい。」
孤児って単語が分からなくて、逆に重めの表現になってしまったけどこれで伝わるだろう。
「うむ。
そうか…ラルフ。
お前は今日から私の子だ!」
ヤバい!
このまま喜びを爆発されたら、任務完了で召されてしまう!
その前に魔法の使い方を教えて欲しいのに!
「ちょっと先生!
距離の詰め方が怖いわよ、そういうのは時間を掛けないと。
ゴメンねラルフちゃん。
でも、本当に先生は喜んでいるだけだから、仲良くしてあげてね。」
落ち着かせる方法に悩んでいると、サンドラちゃんが止めてくれた。
この人は本当に気が回ると言うか、優しい人なんだなぁ。
仕草も綺麗だし、立ち姿に品もあるし、理想のお姉さんって感じなんだけどなぁ。
ひげもじゃがなぁ、男すぎるんだよなぁ。
「そうだな、すまん。
…そうだ、さっき話しかけて中断していた魔法。
私が教えてやろう。
使おうとしていたのは聖属性だったな。
サンドラ、親子の親睦を中断したのだから実験台になりなさい。
ははは。」
なんかサシュマさん、ご機嫌だ。
僕を受け入れたことを喜んでくれているなら、僕も嬉しいよ。
「まずは診察の魔法を使ってなさい。
系統としては治癒と同じ、聖属性だ。
だがこちらは身体に作用するものでは無く、症状を見るために使うものなので比較的安全。
もし魔法が大きくなり過ぎても人を傷つける事はあるまい。」
サシュマさんがサンドラさんに近づき、魔法を行使する。
僕は漠然と魔力を溜めて放てば効果が出ると思っていた。
だけどサシュマさんの使うきちんとコントロールされた魔法は表面を撫で回るヴェールの様な光で、使用者の意図を感じる。
…診察の魔法って言っていたから、多分症状を探っているんだろうな。
「ふむ。
サンドラ、よく鍛えられた健康体である。
しかし幾つか問題も見つけることが出来たぞ。
例えばそのアゴの切り傷もそうだが…。
コツは細かい魔力を集めた布で身体を包む感じだな。
聖属性魔法は人体と相性が良く身体を透過するから、わざわざ中へ入ろうと意識せずとも入り込む。
さぁ、お前も上手くいかなくて当たり前と考えて、やってみるといい。」
分かりやすい。
異世界分かりやすく教えてくれるランキング1位が更新されたよ。
最下位は神様ね。




