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愛されたことなどなかった

 僕とにこは小学校の入学式の日に、公園で出会った。

僕の五つ離れた妹のせいで両親は僕の入学式に来てはくれなかった。来てくれたのはおじいちゃんだけだった。家に帰っても両親は僕に『おめでとう』の一言もくれなかった。ただ泣きじゃくる妹の周りを慌ただしく回っているだけだった。嫌になって家を飛び出して、近くの公園で蹲っていた。

そこににこが現れた。両親が物心付く前に亡くなって、面倒をろくに見てくれない叔母さんに引き取られた君は「誰も私を見てくれない」と泣いていた。

愛されてなかったんだ。君と僕は誰にも愛されないまま生きてきたんだ。

同じような境遇で生きていたにこのことは簡単に信じられた。

クラスは別々だったけど、一緒にいれる時はいつも一緒だった。泣いて、笑って、ふざけて。

 でも、中学になると僕らはだんだんと離れていった。話すこともなくなって、にこが虐められているのを通りかけに教室の窓から見るだけだった。声をかけることもできなかった。

_このころから、僕らの世界は少しずつ歪み始めていった。


 駅に着いたころには雨は止んでいた。

二人で寂れた駅のベンチに座った。誰も居なかった。

でもそれが心地よかった。

「降りてみようよ」

にこは線路を指差すと、僕を待たずにぴょんと下に降りた。

「えっ、ちょっ…電車来るんじゃ」

「来ないよ、多分。うーん、怖いなら手を握ってあげる。一緒に死んでくれるんでしょ?」

「…しょうがないなぁ」

君の手に触れると、暖かかった。さっきまで微かに震えていたのに、既になくなっていた。

にこは小学生の頃のようにはしゃいでいた。レールの上を手を広げて歩いたり、枕板のとこだけ歩いたり。 

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