表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/40

4話「休息と出会い」

1日1〜2話を目標に執筆できればと考えています。

 気づけば、窓の外に淡い朝の光が差し込んでいた。

 「……ふぁぁ、よく寝たぁ」

 昨日の疲れがすっかり取れて、体が軽い。

 柔らかい寝台の上で体を伸ばすと、筋肉が軽く鳴った。

 初めての依頼をやり遂げた充実感が、胸の中に静かに残っている。


 窓を開けると、街のざわめきが流れ込んできた。

 馬車の音、パン屋の鐘、通りを行き交う人々の話し声。

 サーブルの朝は、いつも明るくてどこか穏やかだ。


 「よし、ギルドに行こっ」

 昨日ギルドに預けた魔獣の素材。

 その買取査定がどうなったか、確認しに行く時間だ。



---


 サーブル冒険者ギルド。

 街の中心に建つ石造りの二階建て。

 重厚な木の扉を押して中に入ると、朝の光が窓から差し込み、木の床に柔らかく反射していた。

 冒険者たちが依頼板の前に集まり、受付ではミリアがいつもの笑顔で対応している。


 「リーネちゃん! おはようございます!」

 「おはようございます、ミリアさん!」

 「昨日の素材の査定ですね? えっと……」

 書類をぱらぱらめくりながら、ミリアが申し訳なさそうに首を傾げた。

 「すみません、もう少し時間がかかるみたいです。お昼ごろには報告できると思います!」

 「大丈夫です! また来ますね!」

 軽く手を振って、ギルドを後にした。



---


 外はすっかり朝の喧騒。

 石畳の通りには、露店が並び、果物の甘い香りと、パンを焼く匂いが混じり合っていた。

 屋根の上では猫が昼寝をし、行商人が声を張り上げる。

 そんな中、ふと聞き覚えのある声がした。


 「もしかして……昨日ぶつかった方、ですよね?」

 振り向くと、金色の髪を揺らした少女が立っていた。

 「えっ、昨日の……!」

 「やっぱり。覚えていてくれたんですね」

 その微笑みは、昨日の一瞬よりもずっと柔らかくて、目が離せなかった。


 「もちろん! あの、ごめんなさい、昨日は急いでて……!」

 「いえ、私のほうこそ。落とした紙を拾ってくださってありがとうございました」

 彼女は少し頬を染めて笑った。

 「……もしお時間あるなら、お礼も兼ねて、お茶でもどうですか?」

 「え、いいんですか!?」

 「はい。すぐ近くに、落ち着いた喫茶店があるんです」

 「じゃ、じゃあお言葉に甘えて!」

 自然と返事が出ていた。



---


 二人で歩く街路は、昼の光に包まれていた。

 喫茶店「ルーメン」は、蔦が絡む白壁の建物。

 扉を開けると、カランと鈴が鳴り、ハーブと焙煎豆の香りが広がる。

 「いらっしゃいませー!」

 木のテーブルに案内され、窓際の席に座った。


 温かい紅茶を注文し、少しの静寂が訪れる。

 陽光が差し込んで、彼女の金髪が透けるように輝いていた。

 「……昨日からずっと、あなたのことが気になってたんです」

 「えっ?」

 「ギルドのカード、見えちゃって。私、冒険者の人を近くで見るの初めてで」

 「そっか……。うん、私も登録したばかりなんですけどね!」

 そう笑うと、彼女も微笑んだ。


 少しして、彼女がカップを置いて言った。

 「そういえば、私まだ名乗ってませんでしたね。セリアっていいます」

 「リーネです! 改めてよろしくね!」

 「リーネさん……。うん、いい名前」

 「ありがとう。セリアさんも、素敵な響き」


 二人で笑い合いながら、喫茶店の穏やかな時間が流れていった。



---


 話題はいつの間にか、冒険のことに移っていた。

 「……私も、冒険者になってみたいなって思って」

 「ほんと!? いいと思います!」

 「でも、私、魔法がちょっと使えるくらいで……」

 「それなら十分! きっと才能あります!」

 「そ、そうかな……」

 少し照れるセリアの姿がなんだか嬉しかった。


 「それじゃあ、登録してみましょう!」

 「えっ、いま!?」

 「うん! ちょうどギルドに行く用事があるんです」

 「そ、そんなに早く……でも、リーネさんが言うなら」

 顔を見合わせて笑い、ふたりは喫茶店を出た。



---


 午後のサーブルの街は、穏やかな風が吹いていた。

 ギルドの扉を押すと、ミリアが明るく顔を上げる。

 「リーネちゃん、どうされました?」

 「この子の登録をお願いしたいんです!」

 「えっ、あ、はいっ!」

 セリアが慌てて頭を下げた。


 「はいはい、落ち着いて大丈夫ですよ!」

 ミリアは笑顔で頷き、奥に声をかける。

 「ハルドさーん! 新規登録お願いしまーす!」


 記録員ハルドが、静かに姿を現した。

 「新規登録か。……手を」

 無口な声で、水晶球を机に置く。

 セリアが両手を添えると、淡い光が水晶の奥に浮かんだ。


 「判定完了。“アンブラメイジ”」

 「アンブラメイジ……?」

 ミリアが柔らかく説明する。

 「影を操る魔法職ですね。支援も妨害も得意なんですよ」

 「へぇ、すごい……!」

 「リーネさんの“カースメーカー”と相性良さそうですね!」

 「たしかに!」


 ハルドは淡々と書類を書き、鉄製のギルドカードを差し出した。

 「登録完了。Hランク。無理をするな」

 「ありがとうございます!」



---


 ミリアが顔を上げて言った。

 「お二人、せっかくですしパーティーを組まれては?」

 「えっ、パーティー?」

 「はい! 初心者同士なら助け合えると思います!」

 「うーん……どうする?」

 「リーネさんさえよければ……」

 「もちろん! 一緒に!」

 「じゃあ、登録の手続きを――」


 そのとき、低い声が割り込んだ。

 「――査定、出たぞ」

 ハルドが無表情で書類を持って現れた。

 ミリアが小声で「もう少し待ってくださいよぉ……」と苦笑する。


 「魔獣素材一体、状態良好。報酬追加。銀貨一枚」

 「ありがとうございます!」

 「……パーティー登録は明朝にしろ。記録班が今は埋まっている」

 言い残して去るハルドの背中を、ミリアがため息まじりに見送った。

 「……ほんと、タイミングだけは完璧なんですよね」

 「ふふっ、そうみたいですね」

 二人で思わず笑い合う。



---


 ギルドを出ると、夕日が街を金色に染めていた。

 通りの石畳が光を反射し、風が柔らかく吹く。

 「じゃあ、明日の朝ギルド前で!」

 「うん、また明日!」

 セリアが手を振る。

 その笑顔を見て、胸の奥が少し温かくなった。


 (……これが、“誰かと歩く冒険”のはじまりかも)


 明日の朝が待ち遠しくて、私は軽い足取りで街を歩いた。

誤字脱字はご容赦ください。

時間を見つけて訂正していこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ