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三題噺もどき2

並ぶ

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくさんじゅうさん。

 


 じりじりと、陽の光が肌を焼く。

 どうして、こうも日差しっていうのは攻撃的なんだろうなぁ。

 最近じゃあ最高気温が40度近くなんて当たり前にある気がする。それより低くても34度前後あたりだろうか…。とは言え、体感は40度近くあるように感じてしまう日々……。

「あつ……」

 普段なら、こんな時に外に出ている事なんで全くないのだが。

 ……ならばなぜ出てきたのかと聞かれると、分からないとしか言いようがない。

 なぜ自分がこんな炎天下の中で、外にいるのかが全くもって分からない。

 その上、何に並んでいるのかもわからない行列の中に立っているのだから、訳が分からない。

「……」

 でもこの列を抜けると言う選択肢が、浮かんでは消えするあたり、この先にある何かをどうにかしないといけないのだろう……。

 幸い、行列に並んでいるとはいえ、先頭は見える位置にいる。そうそう時間はかからないだろう。

「……」

 何だ。

 暑さで意識が朦朧としているのだろうか。

 全く持ってここに居る理由が検討もつかない。

「……あいす?」

 1人、1人と前から人がはけていき、一歩、一歩と進んでいくうちに見えてきたのは、アイスの看板だった。

 だが、そこに売っているのは、ソフトクリームと言われるやつだった。

 ミルクやチョコなどの、柔らかなアイスを。コーンまたはカップに渦巻き状に入れて食べるやつ。

 ……ここはミルク一択のようだが。

「ひとつ」

 ―??

 辿り着いたその先。

 店というか、露店という雰囲気に近い。

 その中に、店主らしき影は見えない。

 ソフトクリームの絵が描かれた看板が置かれているだけ。

 それでも、なぜか、口から「ひとつ」と漏れた。

 中に人はいない。

 というより、薄暗い空間が広がっているだけのように見える。

「……」

 その中から、手が出てくるのかと思ったら。

 ―いつの間にか右手にソフトクリームを握っていた。

「……」

 それを、なんとなく受け入れている自分がいて、気持ち悪い。

 何だろうか……。

 この違和感と言い、異常というか異様さというか、

 でもそれを、不思議とは思わずに、受け入れている自分。

「……っ」

 いや、きっと。

 それも、これも。

 暑さのせいだ。

 この異常な暑さのせいで、思考がぼんやりとしているのかもしれない。

 徐々に意識もあやふやになりだしてきているんだろう。

 だからこんな、変なことを思うのだ。

「……」

 ―と、そう思い。

 少しでも涼をとろうと、冷静になろうと。

 つい先ほど手にしたソフトクリームを口に運ぶ。

 口が。

 唇が。

 ソフトクリームの先に触れ

「――ぇ?」

 途端に、その先からソフトクリームが溶けた。

 どろりと。

 触れた先から。

 解けていく。

「―――」

 本当は。

 それをどうにかすべきなのに。

 落ちないように手を出すとか、急いで口に入れるとか。

 何か動きを起こすべきなのに。

「―――」

 なぜか、私は固まって。

 手の甲をつたって。

 地面に落ちることなく、手首まで。

 どろりと溶けてきたそれを。

 茫然と眺めながら。

 気持ち悪いとしか思えず。



 ――――――――――――あつ……」


 ―?なんだ。

 何の列に並んでたんだっけ。

 じりじりと陽の光が肌を焼く。

 攻撃的な日差しを、むき出しの肌に受けながら、何かの列に並んでいる。

 何時間も、この列に並んでいた気がする。

 いや、違う。

「……」

 幸いなことに、前に並んでいる人は少ない。

 全員下を向いて、ケータイでもいじっているのか、真黒な塊しか見えない。

「……こーら?」

 なにに並んでいたんだったかと思い。

 一歩進むごとに見えてきた看板に書かれた文字を読む。

 ―あれ?ソフトクリームではなかったか?

「……?」

 なんだ、ソフトクリームって。

 普段そんなの食べないだろうに。ましてや並ぶなんてことない。

 冷たいものは腹を壊しかねないので、基本避けている。

 それにアレは、溶けると厄介なのであまり好きではない。

「……」

 しかし、飲み物があるにしても、コーラのみか?

 この時期だと、ああいう…なんだ。レモンが入っているやつ。

 レモネード?というんだったか。あまり飲むことはないが、こう暑いとああいうさわやかな感じのが欲しくなる。

「ひとつ」

 ―??

 辿り着いた店の中は、薄暗く、店主らしい影はない。

 それでもなぜか、漏れた声。

 そして。

 ―気づくと手に握られていた、コーラの入った容器。

「……」

 違和感と既視感の両方に襲われる。

 同じようなことがあったような気がする。

 けれど、何もなしに現れたこの右手に握っているものを、何も疑いもなく受け入れているのが気持ち悪い。

「……」

 あぁ、だめだ。

 きっとこれは、暑さで頭がやられている。

 こう、何度も何度も。

 何時間も何時間も。

 熱にさらされていては、頭のおかしくなるものだ。

「……?」

 何だろう……。

 今の何かおかしい。

「……」

 いやもう、それより早く。

 のども乾いてきた。

 水分を入れなければ……。

 少しでも涼しくなれば、何かわかるかもしれない。

「……」

 そう思い。

 コーラを一口。

 炭酸の効いた甘い液体を。

 口内へと流す。

「――――!!??」

 瞬間。

 鋭い痛みが走った。

 口腔内に、内側から刺されるような痛み。

 それに合わせて、ジワリと広がる鉄の匂い。

「―――」

 口を開けて、中身を出すべきだと分かった。

 これは飲み込むべきものではない。

 炭酸だからって、こんなになることはあり得ない。

「―――」

 そう、思っているのに。

 こくり。

 と、喉は上下した。


 ―――――――――あつ……」


 じりじりと、陽の光が肌を刺す。






 お題:ソフトクリーム・コーラ・レモン

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