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三題噺もどき

おでかけ

作者: 狐彪

三題噺もどきーきゅうこめ。


とある少女のお話。

特に何も起こらない、日常の話。

お題:りんご・すみれ・月




「今日は、素敵なお出かけ日和ね!」

 太陽が真上に上り、燦々と街を照らすある日の午後。

 私は、親友の白猫と共に街の外れへと出かけた。

「お!今日はどこに行くんだい?」

 道中、魚屋のおじさんに声をかけられる。

「町外れの草原に!」

「そうかい。気を付けて行ってくんだぞぉ!」

 威勢のいいおじさんの声がとても嬉しかった。

「えぇ!ありがとう、おじさん。」

 魚屋に手を振り、道を進む。


 お気に入りのりんごのパイを、お気に入りのすみれ色のバケットに入れて。

 お気に入りの、可愛い小花柄のワンピースを着て、赤の靴を履いて。

「〜♪〜〜♪」

 自然と鼻歌が、漏れる。

 それに合わせるように、足運びも軽くなり、猫と共にスキップで向かう。

 彼女はとても気まぐれな猫なのだけれど、こういう時は一緒に楽しんでくれる。

 とても賢い子なのだ。


 街の外れには、大きな草原が広がっている。

「着いたわ!」

 目の前の草原には、小さな花々が咲いている。

 すみれや、たんぽぽ、シロツメクサ―色とりどりの小さな花が、風に吹かれ、踊っていた。

「さて、先にりんごのパイを食べましょうか!」

「ニァー」

 もう腹ペコだとでもいうように、元気よく返事が返ってきた。

「ふふ、あなたも早く食べたいのね!」

 草原の上に檸檬色の、ピクニックシートを広げる。

「さ、いただきましょ♪」

 表面がサクッとした、パイ生地の中に、ゴロゴロとたくさんのりんごが入っている。

 口の中いっぱいに甘いりんごの香りが広がり、一瞬で幸せな気持ちに包まれる。

「ん〜♪美味しいわ!」

  ―さすが私!なんて、思いながら、パクパクと食べすすめる。

 彼女も黙々と、お上品に食べている。


 少し多めに作ったパイをあっという間に食べてしまった。

「さて、食べたあとは動かないとね!」

 ランチの後片づけをして。

 これだけ広い草原だ。

 どこまで行ったって、終わりが見えない。

「ねこさん!あっちに可愛いお花が咲いているわ!」

 可愛らしい、小さな花と、三つ葉をあわせて白猫と自分の花冠を作ったり、どこまで行けるのか走ってみたり、木陰に隠れて休憩したり……


 そうしているうちに、日が傾き始めた。

「あら、そろそろ帰りましょうか?月が登る前にお家に帰らないと。」

  ―月が登ったら、悪い狼やお化けにさらわれちゃうのよ―

 そんな事を言いながら、街へと帰る。

「お嬢ちゃん、おかえり!」

「ただいま、おじさん。」

 今度は、パン屋のおじさんだった。

「楽しかったか?」

 店じまいをしながら。

「えぇ、とっても!」

 ―今度、おじさんのパンを買いに行くわ!

 そんな約束をして、家へと帰る。

「ただいま!」

「ニャー」

 今日も、何も無い、普通の日。

 それでも、毎日が楽しいのは、この街がたくさんの光に溢れているからだろう。

 明日は、どこへ行こうかしら。

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