流れ星降る森の広場にて
流れ星が降る夜。
人も入らないような森の中。
広く拓けた広場で、二人の男の子が流れ星を見上げていた。
「凄いねー!よう君!」
「だろう!流れ星が降るって知ってから探した穴場スポットだ!」
よう君と呼ばれた男の子は誇らしげに胸を張ります。
「うん!でも、良かったの?ここ、大人達から入っちゃダメって言われてる森だよ?」
「何言ってたんだよ!ゆう!あんなん嘘に決まってるだろ!」
ビクビクと怯えるゆうと呼ばれた男の子をバカにするようにフンと鼻を鳴らしたようは戯言だと切り捨てる。
「で、でも……」
「問題ないんだから、良いだろう!それに、もうここまで来てるのに今さら怯えるな!!」
せっかく、見つけた良い場所を紹介したのに大人達の言う事を気にするように苛ついたゆうは苛立たしげにそう言った。
「うぅ……そうだよね……」
そこまでやっと諦めがついたのか、小さな声で返事を返しつつも心の中で何も起こりませんようにと願いながらゆうは上を見上げて流れ星を見る。
「それで良いんだよ。何があっても俺が守ってやるから」
「うん……ありがとう」
ぶっきら棒で高圧的な言い方だけど、優しいようにゆうはほんわかとした暖かな気持ちを胸の奥に感じた。
そんな想いが視線を通じてように伝わったのか、ようは照れ臭そうに頬を掻くとゆうと同じように空を見上げて流星を見る。
「よう君。今日はここに連れて来てくれてありがとう」
「また礼かよ。俺が連れて来たかっただけだから礼を言われる理由はないぞ」
「ふふ。僕がお礼を言いたいから言ったんだから、理由なんて関係ないよ」
いたずらっぽく笑みを浮かべてそう言えば、ようはフンと鼻を鳴らす。
機嫌悪そうに感じるが、それが照れ隠しだと分かってるゆうにとっては微笑ましい光景でしかない。
「帰ったら。ママやパパ、大人達にいっぱい怒られちゃうね」
流れ星を見ながら隣に居るように話しかけるが、ようからの返事はない。
「何処行っていたんだ。心配したんだぞ。夜に出かけるんじゃありません。いっぱい!大人達から心配の言葉が掛けられると思うんだ」
よう君からの返事はない。
「だから、僕達はごめんなさい。ごめんなさい。て、泣きながら謝るんだ」
よう君からの返事はない。
「説教が終わって泣き疲れた僕達は一緒のベットに入って寝るんだ」
よう君からの返事はない。
「そして、今日はいっぱい叱られた思い出と共にキレイな流れ星をよう君と見た思い出としてずっと残るんだ」
よう君からの返事はない。
「だからね……この思い出と共に帰ろう、よう君」
「ああ」
よう君からの返事が返って来た。
「ふふ。やっと落ち着いたんだ。今日はいつもより長かったね」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「誰でしょう?」
「分かってるだろうが」
ニコニコと笑みを浮かべるゆうに対してギロリと睨みつけるよう。
「こ、怖いよ!そんな怖い顔してるから友達できないんだよ?」
最初は怯えたように、最後は心配げに言うゆうに対してようはフンと鼻を鳴らす。
「友達は居る」
「僕でしょ?」
「……そうだよ」
言い返してやろうと考えていたようの考えはすぐさま潰され、不服そうに答えた。
「よう君が僕の事を友達って言ってくれるのは嬉しいけど、僕が言いたいのは―――」
「帰るぞ!」
その先は言わせないとばかりに言葉を割り込ませたようは、ゆうの襟首を引っ張って帰ろうとする。
「わわっ!分かったから引っ張らないで!転んじゃう!」
「罰だ」
「なんで?!」
「ゆうだって友達、俺以外に居ないのに偉そうにするからだ」
不機嫌そうに答えると、それ以上答える気がないようは歩みを再開する。
「あっ!気にして―――ぐぇ!」
また何か言いかけたゆうの襟を強めに引っ張って話すのを止めさせると先程よりも早足で森の中に入って行くのだった。