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第6章 独立編 第27話 最終話☆

 

 大陸一の名勝負と言われたあの試合の後、アウル公国は正式にアウル王国となり、俺は初代国王となった。

 イザベルは女王として最初に手掛けたシーク=モンドの引退試合『剣聖 引退記念特別大会』が興行的に大当たりし、その最初の業績として王国史に刻まれることになった。この順調な滑り出しに俺も胸をなでおろしたところだ。


 そして、イザベルとの間に生まれた子は、元気な男の子と女の子の双子。俺はいきなり二人の父親になり、嬉しい半面、戸惑い気味でもある。


 この予想外の慶事にハウスホールドの国民は大喜び。今度産まれる子が男か女かという話題は、酒場、職場、家庭を問わず話題に上らない日は無いくらいの注目を集めていたのだ。

 なにしろ、国民の声に押される形でハウスホールドは、二人の誕生日を祝日にしたくらいだからその熱狂は推して知るべし。そして圧倒的な国民人気の後押しもあり、イザベルは女王としての地位を盤石なものにしたのだった。


 そんな女王なのだが、重要な行事があるとき以外はブラックベリーで過ごしている。

 それもこれも、リューク王からの家臣たちが引き続き国政を運営し、それを女王の印璽をあずかったキールが後見人として代わりに決裁してくれているおかげである。


「レオン様、二人とも目元があなたにそっくりです。将来は二人でハウスホールドを支えてくれるに違いありませんわ」


 ほほ笑むイザベル。二人とも間に置かれたぬいぐるみの『レオンくん』を抱きしめるようにすやすや眠っている。

 この二人はハウスホールドの大切な跡継ぎとして、宮廷で育てられる決まりになっている。これにより、俺とイザベルの二国間をせわしく行き来する生活が始まったのだった。




「キール様、お元気そうで何よりです。イザベルを支えて頂き、感謝の言葉もありません」

「ほかならぬレオン殿とイザベルの幸せのためなら仕方ないの」


 シークの引退試合が終わって数日後、キールは俺に用があるとかで久しぶりにブラックベリーに遊びに来てくれた。

 キールには今のイザベルのことをはじめ、俺は今までさんざん世話になっている。自分にできる事ならなんでもしたいと思う。


「孫とは本当にかわいいものよの。わしも実際に抱くまで信じられんかったわ」


 そう言って、相好を崩すキール。ひとしきり孫をあやすと神妙な顔で俺を見据え話を切り出した。


「レオン殿にはここ数年の間に最愛の伴侶を二人も失ったわしの悲しみがわかるかの」


「キール様……」


「陛下は年上の包容力が魅力じゃった。リューク王は幼き頃より気心の知れた心安さがあったの。そんな二人に先立たれてしまい、わらわは、わらわは……」

「………」


静かに涙を流すキールを前に、俺も声を詰まらせる。俺が王都からこちらへきて後、キールは次々と伴侶を亡くしていたのだ。


「愛するひとと死に別れることほど、つらいことは無いの」

「おいたわしいことです」

「もう二度と、愛するひとと死に別れるのはごめんじゃ」


 キールの話に、イザベルにニーナ、それにセリスまで無言で涙を拭いている。



「…………だから思うのじゃ、どこぞにわしより年下で健康な殿方はいまいかと!」

「は?」


「何じゃ。レオン殿は不満かの? 儂より元気で長生きしてくれる殿方なら、もうわしが悲しむこともあるまい。年下で健康なら多少幼かろうが大丈夫じゃぞ! むしろ新鮮じゃ!」



「「「…………」」」



 キール様、それ一歩間違えれば犯罪です。

 さっき感動した俺たちの気持ちも返して欲しいです。

 しかも呆気にとられて言葉を失う俺たちに対し、キールはさらにとんでもないことを言い出した。


「なら、こういうのはどうじゃ。レオン殿は嫁が三人おる。この際、一人くらい増えても大丈夫かと思うのじゃが……」


「お、お義母かあ様っ!」

「ニーナのものを取らないでくださいまし~!」

「……」


 おいセリス、いくら何でも黙ってレイピアのつかに手をかけるのはやめなさい!



 ◆



 イザベルの出産から半年後、セリスとの間にも女の子が生まれた。セリスはこの子に剣を教えるらしく、シークをブラックベリーに呼び寄せる準備を始めている。


「これからの時代、女の子にも剣は必要です!」


 その主張には賛成なのだが、いくら何でもシークの返事も待たずに道場の建設に着手するのはどうかと思うぞ。


「お兄様、いえ、あなた……」

「…………」


 どうもいまだに言いなれず、お互い恥ずかしくて赤面してしまう。


「ところでセリス。もう俺を守る必要もないだろ。これからはお前の好きなようにしたらどうだ」

「好きなようにですか……なら、子育てがひと段落しましたら、お兄様専属の秘書になりたいです!」


 え? それじゃあ今までと変わらないと思うのだが。


「お兄様は、まだまだ私がお守りしないと、危なっかしくて見ておれません」


 どうやらセリスとは、これからも変わらない関係が続きそうだ。



 ◆



 そしてセリスの後を追うように、程なくしてニーナとの間にも女の子が生まれた。

 ニーナは親子でスイーツを作るのが夢だとか。


「この子が将来、素敵な殿方に手料理を振る舞う姿を見るのが楽しみですの~」

「そ、そうだな。俺も家庭的な子に育って欲しいぞ」

「まあ、レオン様ったら! ニーナと同じ思いですの~♪」


 嬉しそうなニーナの腕の中で熟睡中の我が娘。

 この子には将来好きな男の子が出来ても泥団子なんて食べさせないように教育しようと思う。

 ここだけの話。幼いころ甘いもの好きだった俺は、ニーナの初めての手料理? を食したせいで、スイーツが苦手になってしまった。

 しかし、将来この子の手料理なら、俺はトラウマを克服できそうな気がする。



 ◆



「やれやれ」


 書庫の中で俺は大きく伸びをすると、栞を付けていた愛読書の続きのページを開く。


「レオン様~」

 

 俺は祖父の墓参りを済ませてきたばかり。何だか急に祖父のことが懐かしくなった俺は、書庫にこもって祖父の書物を整理しているとの名目で読書を楽しもうとしていたところである。


 あの大戦が終わってから僅か三年。俺が辺境へ追放されてから数えても五年余り。


 全く……。

 辺境でのんびり過ごしたかったのに、いつの間にこんなことになってしまったんだ。


「レオン様どこっすか〜。レオン様~!」


 さっきからモルトが俺のことを探している様だが、俺がいなくても何とかなるだろう。

 それより、たまには息抜きも必要だ。


 祖父の書物を含め、資料や貴重な本は全て、新たにつくったこの書庫に保管されている。

 しかし、異世界の文字を読めるのは、クラーチ家に昔から仕えていた者くらいしかいない。俺も子供たちに伝えなきゃな。俺はずらりと並んだ書物や資料を見渡して心に決めた。


「あっ、レオン様! こんな所で何やってんすか。決裁の書類が溜まってるっす!」

「書庫の維持・管理も大切な仕事だぞ」


「自分には、さぼっているようにしか見えないっす。それから、明日は道場を建ててもらったお礼にシーク様が来るらしいっす」

「そうか、あんな大きな道場建てられたんじゃ仕方ないな。何だかシークに申し訳ないな」


「書庫は自分が整理しておくっすから、レオン様は執務室で仕事して欲しいっす!」

「いや、ここはやはり俺が…」

「国王としての仕事が先に決まってるっす~!」


 モルトに急き立てられた俺は、手にしていた書物を適当に本棚にしまうと、仕方なく仕事に戻ることにしたのだった。



 ――――――



「ここに来るのも久しぶりっすね」


 モルトとてクラーチ家の生え抜き。異世界語で書かれたこれらの書物は、大体読むことが出来る。

 アウル領に赴任後しばらくして、レオンからまず領地経営に必要な書物を持ってくるよう命じられたのもモルトである。


「これ、何だか場違いな所にあるっすね」


 モルトが手にしたのは古い書物。古文書か何かだろうか。貴重な物どうかはわからないが、通常は保管のため奥の金庫にしまうことになっているものである。おそらくレオンが読みかけて、適当にしまったというところだろう。


「まったく、しょうがないっすね~」


 改めて手に取ると、かなり昔の物らしく表紙はタイトルも滲んで読めない所もある。ただし保存状態が良いようで、中身は何とか読めそうだ。どうやら歴史書のようである。


「そういや、ドランブイもいつか言っていたカルア海に眠るお宝のことが書いてあるかも知れないっす~」


 肝心の中身は“審判”と呼ばれる大災害が起こる以前のこの辺りの歴史が、主にひとりの王の視点から綴られているようである。


「しかし古い書物っすね。よくもまあこんな本まで収集したもんっす。タイトルは、なになに……」



 ――――――



 ここに書かれていることが本当なら、大森林の奥にはこの国の地方都市の遺跡が残っているのかも知れない。もともとカルアは大森林を含めた大陸中央部を指す呼び名でもある。


「大森林には二度と行きたくないっすけど、ヒィにはもう一度会いたいっすね……。あ、でもレオン様の傍にずっといたら安全かも……」


 もふもふ尻尾を揺らしながら、真剣な目つきでページをめくるモルト。何やら発見があったらしい。


「こ、これはレオン様を説得するほかないっす。レオン様、一大事っす~!」


 モルトは、すっかり当初の目的を忘れ、再びレオンを探して駆け出していったのだった。



 完

挿絵(By みてみん)

(七海 糸 さま より)


皆様方のあたたかい応援のおかげで、1年半に渡る連載が終えることが出来ました。

できましたら、七生の3作目の長編『玄関あけたら2秒でダンジョン‼』是非是非、お読みくださいまし~。 https://ncode.syosetu.com/n0368ie/

宜しければ、ブクマと評価、お願いします~!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! みんな幸せになって良かった……本当に良かったです(つД`)感動……! ラストがモルトくんなところもすごく嬉しかったです♡ そしておめでとうイラストを掲載してくだ…
2023/01/13 18:07 退会済み
管理
[良い点] 完結おめでとうございます! 1年半という長期の連載、お疲れさまでした。 個人的には見たかったシークとの再戦がみれて、その結果に満足でした。 いやあ、シーク、好きなんですよ。 物語の最初と…
[一言] >お兄様は、まだまだ私がお守りしないと、危なっかしくて見ておれません わかりみ(;'∀') そして完結お疲れ様です!( ´∀` )
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