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第6章 独立編 第22話 後継者

 

 俺は三人から全員平等になるよう、三人の誕生月をもとにそれぞれの優先月を決めた。お付きのメイドや執事たちにも徹底させたことで、我が家も少しは平穏になったかと思う。


 しかし三人ともそれぞれが強力な後ろ盾を持っているのだから、俺としては気を遣うことこの上ない。

 ちょっとした痴話喧嘩が、国家間の紛争に波及しそうな今の状況は正直勘弁して欲しい所である。


「はあ~っ。気を遣って肩がこるよ。その点、独身のお前は気楽でいいよな」

「何言ってんすかレオン様! 大陸でも指折りのご令嬢を三人も射止められたんすから、それくらい我慢して欲しいっす! 自分なんて、自分なんて~!」


 俺が愚痴をこぼす度、もふもふ尻尾を逆立てて怒るモルト。

 そういや、モルトにも縁談を紹介してやったのだが、すこぶる不満のようだ。


「自分はもっとこう……。大人の女性がいいっす!」

「まあ、まあ。モルト落ち着けって」

「レオン様、ひどすぎるっす~!」


 相手の家は帝国領の飛び地を治めてもらっている元帝国貴族で、カスター元伯爵。

 俺は飛び地に関しては断っていたのだが、カスター家がこれまで通り統治するという条件で渋々もらうことにした。

 カスター元伯爵には新たにアウル公国から伯爵を叙任したため、そのお礼にブラックベリーを訪れてくれている。

 そして伯爵は、一人娘であるクレア姫の婿として、クラーチ家に繋がる良縁を紹介して欲しいと申し出て来た。しかも、入り婿ではなく一人娘を嫁がせても構わないのだとか。その場合、伯爵家は弟家族に継いでもらう予定だという。


「良縁だからって来てみれば、相手が六歳なんて聞いてないっす!」

「身長的には釣り合っているだろうが」

「年齢的には全く釣り合ってないっす!」


「当主自らわざわざ、ブラックベリーまで出向いてくれたんだぞ。無下に断るのも悪いだろう」

「だからと言って何で相手が自分なんすか?!」


「そこを丸く収めるのが執事の腕の見せ所じゃないか。このようなことはモルトにしか頼めないんだぞ」

「ううう……そう言われれば少し嬉しいっすけど、何だか騙されているような気がするっす~」


 ◆


「きつねさん、しっぽふわふわ~」

「きつねじゃないっす。モルトっす!」


「おみみもふさふさ〜。だーいすき♪ ぎゅうう~」

「く、苦しいっす~」


 ところがクレア姫はモルトのことがすっかり気に入ったらしく、今日もモルトにまとわりついては、尻尾や耳をもふもふしている。将来はモルトのお嫁さんになりたいなどと言っているそうだ。

 ペットか何かと間違えているだけかも知れないが。


「クレア姫は、もう少し待てば美しい女性に育つと思うぞ」

「もう少しっていつっすか。どう考えても十年以上先っす~!」


 クレア姫はお見合いが終わった後もモルトと遊びたいそうなので、ブラックベリーの滞在について、俺は快く許したのだった。



 ――――――



「そんなことより、レオン様、ハウスホールドの件はどうするんすか?」

「う~ん。そこなんだが……」

「自分は絶対に反対っす!」


 幼女に抱き着かれたままモルト口をとがらせる。


 先日、リューク王とキール王妃がブラックベリーを訪れた際、俺は重大な相談を持ち掛けられた。

 それは、アウル公国のハウスホールドへの編入とそれに伴う次期王についての件である。



 ◆



 この前、リューク王とキール王妃がウチに来た際、俺は二人からハウスホールドの跡継ぎ問題に関して折り入って相談を受けていた。


 キールは結婚前から子どもを授かろうとあらゆることを試していたらしいが、どう頑張っても無理との結論に至ったという。

 このような場合、普通は側室を設けるのが一般的なのだが、リューク王はどれだけキールが側室をすすめようが頑として首を縦に振らないという。


「レオン殿からもリューク王を説得してくれまいか」

「しかし、自分などの口からそのようなことを言うのは、まことに恐れ多く……」

「……」


 普段、笑顔を絶やさないリューク王もこの度は顔をこわばらせている。俺ごときが余計な口をはさんでいい問題ではないだろう。

 そんな王を見やり、困った様子でため息をつきながらもどこか嬉しそうなキール。


「むう……すまんのレオン殿。ではこうするしかないの」


 …………。


「いや、まさかそんな……」


 何とハウスホールドの王として、俺にリューク王の後を継いで欲しいという。


「レオン殿が一番ふさわしいのじゃ。何しろイザベルとニーナの婿でもあるしの。アウル領がハウスホールドに併呑されると危機を持つ向きもあろうが、ハウスホールドまるまる差し出そうというのじゃ」


「……このような重大事、自分の一存ではお答えできません。家臣とじっくり話し合いたいのですが」

「当然じゃの。色よい返事を待っておるぞ。長居してもレオン殿に悪いの。さ、リューク、引き上げるとするかの」


 終始無言のリューク王を促し、キールたちはブラックベリーを後にしたのだった。

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[一言] 繋ぎのための一時的な統治でええんやない?
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