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第5章 争乱編 第49話 終戦④

 

「で、ではいいか……」

「はい」

「そう、もったいぶるで無いわ」

「……」


 こうして俺は、イザベルにこの度の大戦について説明することになったのだった。


 全く、俺は口下手だというのに。正直、勘弁して欲しかったのだが……。



 ◆



 どうやら今回の大戦は、大陸北部を完全に制圧したカサティーク帝国皇帝の個人的な意思が発端だったようだ。


 高齢の皇帝は、幼い我が子に安心して後を託すため、まず、唯一国境を接する大国であるグレンゴイン王国との婚姻政策に着手。

 帝国は王国に対して、王族をはじめ多くの大貴族との間で婚姻を結び、両国の絆をこれでもかと深めていったのだった。


 おそらく帝国の狙いは、王国をして大陸統一戦の先兵とすることだったと思われる。


 そして、王国との婚姻政策を着々と進める帝国に、思いもよらない事態が訪れた。


 王国国王の実弟でもある公爵は、帝国の王子との婚姻をすすめようとしていた最中、当の本人であるイザベルは南部遊学との名目で、どこの馬の骨とも知れない辺境伯……つまり俺の元に遊びに行ってしまったという。


 帝国はこれ幸いとばかり、ブラックベリー謀反とのデマを流し、反乱鎮圧とイザベル救出の名の下に大軍を起こしたのだった。



「ううう……何か、責任を感じてしまいますわ」

「気にすることは無いぞ。帝国のことじゃから、どうせ難癖付けて侵攻しておったことじゃろうて」

「しかし、イザベルは、よくぞ無事にハウスホールドまで来てくれた」

「はい…レオン様に早くお会いしたくて」

「え…あ、ありがとう」

「は、はうう……」


「ここは、若い二人に任せてわしはちょっと席を外そうかの」


「「結構です!!」」

「なんじゃ、息もぴったりではないか」


 イザベルの気持ちは分からないが、少なくとも俺はキールがいないと間が持たないのだ。

 ここは、何としても一緒にいてもらいたい。


「さ、続きをお話くださいませ」


「こ、コホン。では、えーっと……」


 わざとらしい咳ばらいをひとつして、俺は話を続けたのだった。



 ◆



 南部諸国から見れば、これまでは王国が帝国との緩衝地になってくれていた。


 しかし、この二国間の同盟は、南部諸国側から見れば、自分たちののど元に刃物が突きつけられたことに等しい。その結果、大陸南部の諸国が互いの結びつきを深めていったのは、自然の成り行きだろう。


 帝国軍の目論見としてはは、王国は帝国軍の先鋒として、インスぺリアルに侵攻してくれることは、あらかじめ想定されていた。

 そして、二か国の大軍の前にインスぺリアル領は、戦わずして降伏するであろうと想定されていたらしい。

 その後は、ブラックベリーを陥落させ、降伏したインスぺリアルの海運力を使って、ハウスホールドを含めた南部諸国へ侵攻するという青写真を描いていたと思われる。


 ところが、ここに予想外のことが起きた。


 何と、王国は国王自らが人質として帝国に行くことで従軍を逃れた。


 これだけならまだしも、インスぺリアル領も帝国の予想に反して、反旗を翻したのだった。


 そして、アウル領を含めた南部諸国は軍事同盟を結び、一丸となって帝国に立ち向かってきたのだった。


 その結果、帝国軍は、東トーチ砦にてインスぺリアル軍と戦うはめになったのである。


 キールたちは、東トーチ砦にて帝国軍を防いで時間を稼ぎ、自領を空にしてハウスホールドに退却した。


 そして俺は、帝国軍の大軍をブラックベリーで引き付けることに成功した。


 ブラックベリーは帝国の大軍に包囲されつつも、籠城を続けたおかげで、帝国軍の矛先をハウスホールドへと向けることができた。


 帝国軍は、インスぺリアルが遺棄した船に分乗し、大軍をもってカルア海を渡ろうとしたのだが……。


 キール率いるインスぺリアル艦隊は、帝国軍をカルア海海戦で完璧な形で葬った後、ブラックベリー港の閉塞へいそく作戦を行ったのだった。



「そして、自分の活躍でクラーチ家は公爵家と盟約を結び、更には裏ギルドと力を合わせて、東トーチ砦前を岩石で塞いだっす。これにより、ブラックベリーを包囲した帝国軍は補給路を断たれ、逆に兵糧攻めに遭ったっす~」


「え、何でお前がいるんだ?」


「しかも『アウル』の大砲砲弾や乗組員を調達した後、ブラックベリーの危機一髪のピンチに駆けつけて帝国軍を蹴散らし、この大戦を勝利に導いたのは、他でもない自分っす~♪」


 おれの声を無視して、得意そうにもふもふ尻尾をゆっくり揺らしているモルト。


 本当に、こいつはいつの間に入って来たんだ!


「おい、モルト!」

「クラーチ家の筆頭執事として常に主のことに気を配るのは当然っす!」

「仕事の方はいいのか?」


「決裁ならすべて済ませてきたっす。あと残っているのは、レオン様のプライベートなことくらいっす」

「……そ、そうか。ありがとう」


 今更ながら、モルトの有能さには舌を巻く思いである。正直、もう少しポンコツでも良かったくらいだ。


 急なもふもふ尻尾の出現に慌てる俺とは裏腹に、イザベルは落ち着いたもの。さすが王家の血筋とでも言おうか、平然と微笑を浮かべている。


「でも、帝国軍をブラックベリーに釘付けにして、東トーチ砦とブラックベリー港を封鎖しての兵糧攻めなんて……。そんな戦略など誰も思い描けません。さすが、レオン様ですわ」

「い、いや……」

「しかも、ドラゴンゾンビの討伐まで!」

「……」


「レオン殿、顔が赤いぞ」

「何照れてんすか!」


「やはりここは、若い二人に任せるしかないの♡」

「そうっすね。お邪魔虫の自分らは退散するっす~♪」


「お、おい!」


「それでは、二人ともしっかりの」

「領主館の仕事は片付いたんで、自分は、領主館の見回りを済ませてから、またお邪魔するっす~♪」


「い、いや、キール様…。モルトも、もう少しここに居てもいいんだぞ!」

「…………」


 そういう訳で、俺はイザベルと二人、寝室に残されたのだった。

いつも、ご愛読ありがとうございます!

ここのところ、毎週土曜日+αで投稿してきましたが、第六章(最終章?)の投稿は11月5日(土)を予定しております。

これからもお付き合いのほど、よろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
[一言] これは、次回……ついにパフパフするのか(違
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