〜ニートから這い上がれ!〜
―…申し訳ないですが、今回はご縁が無かったということで…―
「…っんだよ!不採用なら『お前は必要ない』って一言書きゃあいいんだよっ!!」嬉々として読み始めた自分がバカみたいだ。
(いや、バカだけど。こんな手紙が3通も一気にくれば、誰だって頭にくるだろ?)
28の俺、津和夫木 駆は30代を前にニート卒業を目論んでいた。それなのに、ことごとく試験に落ち、只今職探しの真っ最中。
「なぁー母ちゃん、俺って名前の通りなんか『かけて』るんかなぁー?」母親に愚痴る。
「なわけないでしょ!ていうか、名前のせいにしないでよ。あんたの日頃の行いの悪さとやる気の無さが、見透かされてるのよ。」
日頃の行いに関しては閉口するしかないが、やる気なら一応あるつもりだ。一応ね。
「…あっじゃあさ、採用が無理なら起業とかしちゃえばいいんじゃね?」途端に希望が見えてきた気がする。
「起業なんて、採用されるよりもっと難しいわよ。いい?他人を使うのよ!?」母が呆れと怒りの混じった声で言う。
「まぁ最初から人を使おうなんて思ってないさ。初めは自分で働いて、口コミとかで大きい企業にしていくんだ!」もう未来予想図はばっちりだ。
「で、何するの?」止めるのを諦めた様子の母。
「宅配便。」きっぱりと言う。
「具体的には、ハートを届ける宅配便かな。…んー…『にこにこ宅急便』っていう名前にしよう!」
「…は…!?」母は鯉の様に口をパクパクされているが、言葉にならない。
「だからさ、大切な人・大好きな人に気持ちを届けるお手伝いをするわけだ。絶対成功するって!」もう今からでも始めたい気分だ。
「手始めにマークとか決めて、Tシャツでも作るかな。」働くことがこんなにもワクワクすることだとは思わなかった。
「キャチコピーも考えるか。…『愛のキューピッド』…うーん、捻りがな。『縁の下の力持ち』?…なんか嫌だ。…『あなたの幸せお助けマン』なんていいかも!」
「…あんたは、言い出すと聞かないんだから。まぁ何でもやれるだけやってみな!一応、応援はするから。」
「ありがと。母ちゃん。」『母は 偉大』という言葉を改めて実感する。なんだかんだ言いつつも、認めてくれたのが嬉しかった。