犬と熊編 3rd-contact
3rd-contact
深まる仲
「なぁー顔見してぇやぁ〜」
「やだ」
白鳥さんとの仲直りの翌日、俺は窮地に陥っていた。
「なぁ笑ったりせんからさぁ見してぇやぁ」
昨日、白鳥さんに言われた通りにカラコンを外してきた。
すると、登校中は周囲からは奇異の目で見られ、篠田には知らない人扱いされたのだ。
「もうぜってーカラコン外さねぇ」
「えぇー!!なんでなんで!それやったら1回くらいは見して!」
「ぜってー顔もあげねー」
「頑なやなぁ……」
机に突っ伏して断固拒否の構えを撮ると、困り果てた白鳥さんの声を聞く。
良心が痛むが、仕方ない。
「史くん……」
「うおぁ!」
耳元で名前呼ばれた……!
鼓動が高鳴り、顔が火照る。
俺ってここまで女子に免疫なかったのか。
それと同時に顔を上げてしまい、コンプレックスが顕になる。
「わぁ……」
絶対笑われる。
これは終わった。
「綺麗……」
笑われ……。
ん?
綺麗?
いま、綺麗って言った?
「海堂くんサイコーやん!めっちゃかっこいい!」
「へ?いや、ん?かっこいい?」
「うん、かっこいい!やっぱそっちの方がええで!」
予想外の反応に、赤面のままフリーズしてしまう。
かっこいい?
まさか、ただのお世辞だろう。
そんな俺の考えは、クラスメイトの反応により粉砕された。
「あれ、海堂くん?」
「まじ?!綺麗な目してるな」
「かっこよすぎでしょ」
「なんで隠してたんだろう?勿体ないな」
ちょっと待てちょっと待て!
これはどういうことなんだ?!
とうとう俺には理解ができなかった。
✲✲✲
まさか、ここまで破壊力があるとは思わなかった。
最初は少し興味本位で言ってみたのだけど、これは拝めてよかった。
周りのクラスメイトは海堂くんの美貌で騒ぎ立てている。
篠田くんと並んでも頷ける程の綺麗さに、女子からは黄色い声も聞こえてくるほどだ。
「なんで隠してたん?」
「いや、一度気持ち悪がられてな。それからカラコンで誤魔化してた」
「その子はきっとその目の良さがわかってないんやろ。それか嫉妬やな」
「嫉妬……?」
「そう、嫉妬や。その綺麗さにきっとヤキモチ妬いて煙がったんや。でも、その目は気持ち悪くなんかない、綺麗や。だから、もっと見せびらかしてもええねんで?」
「まさか、これが綺麗なわけない」
「もっと自信もって!それは海堂くんの武器や!」
ちょっと言い過ぎか?
や、でも、自信もってもらわな、これは勿体なすぎる。
「それじゃあ、まぁ、これからはこれで来てもいいかな……でも、一つだけ」
「ん?どしたん」
「あんまり調子乗って色仕掛けすんなよ。男子に狙われんぞ」
細かい気遣いもできて、やっぱりこの人と仲良くなって正解だったと思い直した。
「海堂くんにしかせーへんから大丈夫や!」
「いや、そういう問題じゃねぇんだけどな……」
そしてこれから、この美貌を眺められることを喜ばしくも思った。