守護者が聴いた歌
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守護者が聴いた歌
作:狩屋ユツキ
【斎藤 蒼雨(さいとう そうう)】
大学四年生。
家事全般の出来るスパダリ。
離れて暮らす妹がひとりいる。
両親は海外出張中。
【荒崎 由舞(あらざき ゆま)】
大学一年生。
破天荒だが人に気遣いは出来る子。
一人っ子。
30分程度
男:女
1:1
蒼雨♂:
由舞♀:
(由舞が子守唄を歌うシーンがあります。ご注意ください)
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蒼雨M「妹――緋雨も独り立ちし、家を出た。少し遠い大学に入るためだという。両親は医者で、帰ってくることのほうが少ないこの家は、一人には少し広すぎた」
間
(街、街路樹のある道にて)
由舞「寒い……」
蒼雨「……?」
蒼雨M「ある寒い雨の日だった。街の道端で、傘もささずにしゃがんで震えている女の子を見つけた」
由舞「……これからどうしよう……」
蒼雨「どうしたの、君。風邪引くよ」
由舞「っ!!」
蒼雨「あ、、驚かせちゃったかな。怪しいものじゃない……って言っても説得力はないか。そこにコインランドリーがあるから、服だけでも乾かしたほうが良いよ」
由舞「……」
蒼雨「それとも……雨に濡れたい理由でもあるのかな」
由舞「……振られたんです」
蒼雨「え?」
由舞「二股で!!振られたんです!!」
蒼雨「あ、そ、そうなんだ……」
由舞「酷くありませんか?!あんなに好きだよって言ってくれて色んな所にも連れてってくれたのに、本当は本命が居て、プロポーズまでしてたなんて知らなかった……!!」
蒼雨「それは……また……」
由舞「だから、私はいらない子なんです!!!」
蒼雨「……いらない子……ね」
由舞「……」
蒼雨「……俺の家、すぐそこなんだ」
由舞「……へ?」
蒼雨「幸いにして妹が残していった服があるから、とりあえず体を温めたほうが良い。大丈夫、何もしない……あ、するか。お腹空いてないかい?」
由舞「空いてる……」
蒼雨「俺も晩ご飯まだなんだ。一緒に食べてくれると嬉しいな。一人の食事は味気なくてね」
由舞「あ……」
蒼雨「ほら、立って。歩ける?無理ならおぶっていくけど、傘は君が持ってね」
由舞「あ、歩けますっ!!」
蒼雨「じゃあ、行こうか。いらない子さん」
間
蒼雨M「それは、妹の緋雨に重ねたのかもしれない。だけれど何故か放っておけない目をした子だった。絶望感と、生きる意思。相反するそれを併せ持つ少女を、俺は緋雨以外に彼女しか知らない」
由舞M「それは、蒼雨センパイの気まぐれだったのかもしれない。ただ一緒に夕食を食べる人が欲しくて、もしかしたら下心もあって、私を招き入れたのかもしれない。でも、私を立ち上がらせてくれた手は温かくて、信じられる気がしたんだ」
間
(斎藤家、リビング)
由舞「お風呂……いただきました……」
蒼雨「おかえり。ああ、服のサイズが合ってよかった。君は高校生?その服、妹が高校の時の服だからさ」
由舞「大学一年生です。秋間大学一年、荒崎 由舞と言います……」
蒼雨「秋間?なんだ、後輩じゃないか。俺は秋間大学四年、斎藤 蒼雨。さ、晩御飯ができてるよ。外が寒かったから体が温まるようにお味噌汁とご飯と、生姜焼きにしたんだけど、……アレルギーとかある?」
由舞「無いです。……っていうか、この御飯全部蒼雨センパイが作ったんですか?!あの短時間で?!」
蒼雨「結構長くお風呂に入ってたよ?体が温まるまで時間がかかったんじゃないかな。ささ、冷めないうちに食べて食べて。お腹が一杯になったら、話を聞くから」
由舞「え」
蒼雨「君が自分をいらない子だ、なんていう理由を聞かせてもらいたくてね。捨て猫みたいにあんなところにうずくまってちゃ放っても置けないし。同じ大学の後輩ならなおさら」
由舞「……いいんですか?」
蒼雨「俺から言い出したことだよ。さあ、テーブルについて」
由舞「……いただきます」
蒼雨「どうぞ、召し上がれ」
由舞「(一口食べる)……!!!!なにこれ、すっごい美味しい!!お肉柔らかいし味しみてて絶品……!!こっちのお味噌汁も体温まる……!!」
蒼雨「ははっ、よっぽどお腹空いてたんだね。おかわりはいっぱいあるから、好きなだけ食べていいよ。元々三人分作るくせがついてて、寧ろたくさん食べてくれると助かるんだけど」
由舞「生姜焼きもおかわりありますか!!!」
蒼雨「あるよ」
由舞「おかわりお願いします!!」
蒼雨「(笑って)はいはい」
間
由舞「それでですねー、私はそいつに言ってやったわけですよ。私は最初からいらない子だったの?!って」
蒼雨「うんうん」
由舞「そしたらそいつなんて言ったと思います?『君のことは好きだ。でも将来を考える気はない。今まで通りだって構わないだろう?』だって!!よーするに愛人になれって言ったわけですよ!!この私に!!婚約者がいるくせに!!」
蒼雨「それは酷いね」
由舞「でしょう?!だからね、私もカチンときて『ああそうですか私はあなたにとってその価値しか無いんですねじゃあ私にとってあなたはいりませんさようなら』って叩きつけてやったわけですよ!!!」
蒼雨「うんうん」
由舞「そうしたら『じゃあ僕にとっても君は価値のない人間だ』なんて言われまして。……だから私はいらない子なんですよぉ……(泣き出す)」
蒼雨「……はい、ティッシュ」
由舞「(鼻声で)ありがとうございます……」
蒼雨「話は大体わかったけど……それなら次の恋を探せば良いんじゃないかい?何も男はそいつだけじゃないだろう?君は……客観的に見て十分魅力的な女の子だと思うよ。……ちょっと思い込みと勢いが凄い気がするけど」
由舞「はい……新しい恋ならもう見つけました……」
蒼雨「えっ早っ」
由舞「蒼雨センパイ!!好きです付き合ってください!!」
蒼雨「……は?」
由舞「だから!!!私を拾ってくれたのも何かのご縁!!私を彼女にしてください!!」
蒼雨「は、はいぃ?!」
間
蒼雨M「それから由舞は俺を学校で見つけるたび、笑顔で駆け寄ってくるようになった。最初は軽いスキンシップだったのが、最近は腕を組んで彼女気取りなのがちょっと気になるけれど……誰かに聞かれると『彼女立候補中です!!』とちゃんと答えてくれるので、未だ友人たちに誤解を生まないで済んでいる」
由舞M「蒼雨センパイは優しかった。私が実家暮らしだけれど、家族仲が悪くて、自分の生活費は全てバイトで食いつないでいると知ったら、毎日お弁当を持ってきてくれるようになった。お昼ご飯はいつも一緒。それがとても嬉しくて、私はお昼になると蒼雨センパイのお弁当と蒼雨センパイ自身を待ち遠しく思うようになっていた」
間
(大学構内、夕暮れ時)
蒼雨「すっかり遅くなっちゃったな……卒論、まだテーマ決まってないし……急がないと……」
由舞「蒼雨センパイー!!!(背後から抱きつく)」
蒼雨「うわあ?!」
由舞「えへへー。センパイの姿が見えたので思わず走り寄ってしまいました!!これから帰りですか?」
蒼雨「まあね。卒論が行き詰まっててさっきまで図書館に居たんだけど……って、由舞、その背中のものは何?」
由舞「これですか?ギターですよギター!私、バンド組んでるんで!!」
蒼雨「バンド?」
由舞「そうです!!所謂ロックバンドってやつですね!!意外と名も売れてるんですよー!!その名も“BEGIN”!!」
蒼雨「ビギン?始まりってこと?」
由舞「何事もやってみなくちゃ、始めてみなくちゃわからないってっことでつけた名前です!!そうだ、今日リハやるんですよ!!見に来てくれません?」
蒼雨「え、リハってリハーサルのこと?そういうのって関係者以外立ち入り禁止なんじゃ……」
由舞「私の知り合いってことで特別に入れて差し上げますから大丈夫です!!今日は時間合わなくて私のチームしかリハやんないし。センパイに私の歌声、聞いてほしいです」
蒼雨「え、由舞、ギターだけじゃなくて歌もやるの?」
由舞「はい!!最近流行りのギターボーカルってやつですね!!」
蒼雨「そうなんだ……なんか、凄いね」
由舞「お?お?興味出てきました?じゃあ早速レッツゴーです!!」
蒼雨「うわ、由舞、腕引っ張らないでくれ!転ぶ!!」
由舞「大丈夫ですよぉ、スピード落としてますからー」
蒼雨「そういう問題じゃなくてバランスと身長差が……うわあああああ」
間
(某所ライブ会場、ステージ前)
由舞「じゃあセンパイ、そこの椅子に座っててください。特別席です」
蒼雨「普通立って聴くものじゃないの?」
由舞「本物のライブだとそうですけど、今日はリハですから。演出家とか、ライトの人とか、色々見やすいように座って聴いててください」
蒼雨「……わかった」
由舞「じゃあ行きますよー!!!!ワン、ツー、スリー!!!」
間
蒼雨M「由舞の掛け声で始まった音楽は、最初は耳を劈く爆音で始まって何がなんだかわからなかった。次第に耳が慣れてメロディが聞き取れるようになるまで、少しかかったと思う。だけれど」
蒼雨「……なんだ、これ……」
蒼雨M「歌詞も上手く聞き取れない、だけれど由舞の力強い歌声とギター、そしてドラムにベース、キーボード。それらの音楽が一つに合わさって、楽しそうに歌い続ける由舞の姿は、ライトのせいかキラキラ輝いて、いつもの由舞と別人のようだった。胸に直接響くようなドラムの音に泣きそうになりながら、俺は最後までぽかんと口を開けたままで由舞の音楽を聴いていた」
間
由舞「蒼雨センパーイ。……ありゃ、放心状態。音ちょっとうるさかったかな……おーい」
蒼雨「聞こえてるよ。……すごかった。なんだかよくわからなかったけど凄かった」
由舞「(笑って)なんですか、なんだかよくわからなかったけど凄かったって」
蒼雨「だって、そうとしか言いようがないんだ。胸に響くと言うか……腹の底に沈むと言うか……なんて言ったら良いのかわからない。けど凄かった。格好良かった」
由舞「おんなじです」
蒼雨「は?」
由舞「蒼雨センパイが初めて私を助けてくれたときとおんなじです。あのときも私、なんだかよくわからなかったけど、この人なら信じられるってついて行っちゃったんです。本当ならそんなこと絶対しないのに……格好良くて」
蒼雨「……」
由舞「私の夢は、この歌を世界中の人に届けることです。もちろん、生易しい夢じゃないのもわかってます。今の私じゃ全然この夢にたどり着けないことも……。でも、おばあちゃんになってもギターは手放さないって決めてるんです」
蒼雨「由舞……」
由舞「なーんて、臭かったですかね!!要は有名になりたいってことです!!お金ガッポガッポ!!写真バシャバシャ!!」
蒼雨「写真はスキャンダルじゃないかな……」
由舞「あ、そうですね。じゃあお金だけで!!」
蒼雨「(吹き出して)適当すぎ」
由舞「(笑いながら)よく言われます」
間
蒼雨「卒論のテーマかあ……やっぱり医療関係が一番いいよな……。……音楽療法?」
間
(大学構内)
由舞「あ、蒼雨センパーイ、今日お昼」
蒼雨「ごめん、由舞、卒論で忙しくてそれどころじゃないんだ。今日のお弁当は渡しておくから一人で食べて」
由舞「え」
蒼雨「それじゃ!!」
間
蒼雨「ごめん、今日はどうしても抜けられない講義があって昼休みを予習に使いたいんだ。はいこれお弁当」
由舞「蒼雨センパイ……」
蒼雨「悪いね、今度埋め合わせするから」
間
由舞「……今日も、忙しいですか……?」
蒼雨「ごめん……お弁当は作ってきたから、それを食べて元気だしてくれよ」
由舞「……」
蒼雨「ごめん」
間
由舞M「それから一週間。蒼雨センパイが一緒にご飯を食べてくれることはなくなった。まだしばらくはこの状態が続くのだろう。……センパイは今年の卒業生だ。卒論やら就職活動やらで忙しいに決まっている。でも……」
由舞「……センパイ……ご飯……味、しないです……」
間
(斎藤家、午後)
蒼雨「よっし書き終わったー!!!あとはこれを教授に提出してと……。……由舞にも悪い事したな。ずっと一緒にお弁当食べてなかったし。悲しそうな顔もさせちゃったし……」
蒼雨M「一週間の徹夜の後、俺は卒論の大まかを書き上げた。あとは教授に提出して添削を貰って最終論文として提出するだけだ」
蒼雨「そういえば、まともに飯食ってなかったな……」
蒼雨M「ふらふらする頭でキッチンに向かう。確か冷蔵庫に作り置きのなにかがあったはず……」
蒼雨「……あれ?チャイムの音?はいはーいいま出ます、よ……?」」
蒼雨M「ぐらりと視界が揺れる。そういえばドアに鍵は昨日かけただろうか。不審者だったら困る、と思う頭は冷静なのに、体が言うことをきかない。俺は受け身も取れないまま、玄関先で派手な音を立てて倒れ込んだ」
由舞「あれ?鍵あいてる……センパイ、いるんですか?……っ、センパイ?!」
蒼雨「ゆま……?」
由舞「蒼雨センパイ、しっかりしてください!!ええとこういうとき、救急車呼べばいいの?それとも警察?ええと番号なんだっけ……」
蒼雨「……由舞、落ち着いて……。ただの寝不足だから……」
由舞「寝不足?!じゃあ寝てください今すぐに!!」
蒼雨「いや今すぐだと玄関で寝ることになっちゃうから二階まで肩貸してくれないかな……」
由舞「肩ですね!!お任せください!!!毎日重い機材とギターを担いでる私の腕力舐めないでください!!」
蒼雨「はは……助かるよ……」
由舞「センパイ?……センパイ、起きてください!!蒼雨センパイ!!」
間
(斎藤家、リビング、夜)
由舞「ねーむれー、ねーむれー、はーはーのーむーねーにー(眠れ眠れ、母の胸に)」
蒼雨「ん……」
由舞「蒼雨センパイ!!気が付きましたか!!」
蒼雨「あれ……俺いつの間に眠って……ってリビングのソファ?」
由舞「流石に二階に運ぶのは無理だったのでリビングのソファに運びました!!」
蒼雨「なんか……頭がズキズキする……」
由舞「それは……その、運ぶときに一回落としてですね……」
蒼雨「……」
由舞「すすすすすみません……!!!」
蒼雨「いや、よく眠れたし、運んでくれてありがとう。……よく寝たらお腹空いたな。由舞、食べてくかい」
由舞「や、病み上がりの蒼雨センパイのお世話になるわけには!!」
蒼雨「一人分作るのも二人分作るのも変わらないよ。……それに最近は一緒に昼ご飯食べてなかっただろう?久しぶりに一緒に食べよう」
由舞「あ……」
蒼雨「それとも、由舞は俺と食べるのがもう嫌になったかな?」
由舞「そんなことありません!!!!」
蒼雨「じゃあリクエストを聞こうか。何が良い?」
由舞「ご飯と、お味噌汁と、生姜焼きをお願いします!!」
間
蒼雨「生姜焼き、好きだね」
由舞「すっかり蒼雨センパイの生姜焼きの虜です!!他のお店で食べてもなんか物足りないんですよねー」
蒼雨「愛情の差かな」
由舞「(盛大にむせる)ぐほぉっ!!」
蒼雨「あはは、ごめんごめん冗談冗談」
由舞「……センパイ、私に好かれてるって自覚あります?」
蒼雨「あるよ」
由舞「よくそんな台詞ポンポン出てきますね」
蒼雨「んー……性格かな。妹がツンデレでね。その世話を焼いていたら自然に」
由舞「妹さん?見たことないですけど。ご両親も……」
蒼雨「両親は海外出張。妹は別の大学で一人暮らし中。だからこの家には俺一人」
由舞「……寂しく、ないんですか」
蒼雨「寂しくなかったら、由舞をご飯に誘ったりなんかしないよ」
由舞「またそんな事言う……」
蒼雨「ごめんって。……でも本当。この家は……俺一人には広すぎるよ」
由舞「……私」
蒼雨「ん?」
由舞「私、家出してきたんです!!」
蒼雨「へ?」
由舞「ちゃんと学校の成績もキープしてるのに、音楽辞めろって親が言うから家出してきたんです!!だから今日一日でいいので泊めてください!!」
蒼雨「……」
由舞「……だめ、ですか……?」
蒼雨「……あのねえ、由舞。健全な男子の家に転がり込んで泊めてくださいってのは、何されてもいいって言ってるのと同じことだよ?もうちょっと危機管理を……」
由舞「蒼雨センパイになら何されてもいいです」
蒼雨「……」
由舞「だから、泊めてください」
蒼雨「由舞」
由舞「さっき、この家は広すぎるって言った蒼雨センパイ、すごく寂しそうでした!一人が寂しいなら私お金入れますからここに住まわせてください!!何されたって良いです、どんなことでもします、だから」
蒼雨「(たしなめるように)由舞」
由舞「……」
蒼雨「……親御さんに、ちゃんと連絡するように。それから、俺にも親御さんと話をさせてくれるかな。由舞は俺が責任持って引き取りますって」
由舞「……へ?」
蒼雨「知らないわけないよね?結婚出来る年齢が幾つなのか。俺、それなりに甲斐性はあるつもりだよ」
由舞「そ、それってどういう……」
蒼雨「……あのねえ。なんにも思ってない女の子に毎日徹夜してまで弁当作る男が何処にいるっていうんだよ。ちょっとは気づいてくれ、頼むから」
由舞「あ、あぅ……?」
蒼雨「あの歌を聴いたとき、俺は由舞を好きになったんだ。あの歌を守りたいと今は思ってる。だから親御さんにもちゃんと理解してもらわないとね」
由舞「……」
蒼雨「じゃ、ご飯食べたら恋人記念で一緒にお風呂に入ろうか」
由舞「一人で入ります!!!!!!」
蒼雨「あっはっはっはっはっは!!!」
間
由舞M「蒼雨センパイは掴めない人だ。あのあとちゃんと私の家に電話して、親をきちんと説得してくれた。勉強も見てくれることになった。あとになって知ったことだが、蒼雨センパイはあの有名な大病院、斎藤総合病院の跡取り息子らしい。そんな人が面倒を見てくれるならと、親も納得してくれた」
間
蒼雨M「本当は、由舞を恋人にするつもりなんかなかった。だけれど、寝ている間に聞こえてきた子守唄が優しくて、それで恋に落ちたなんて知ったら由舞はどんな反応をするのかな。……あんな優しい歌声は聞いたことがなかった。守る立場だった俺が守られてる気分になるなんて何年ぶりだったかわからない。あの心地よさは……誰にも譲りたくないと思ったんだ」
間
由舞「蒼雨センパイ、今日のお昼はお重ですか?」
蒼雨「そう、俺達が付き合って一ヶ月の記念日だから張り切った」
由舞「うわあまじですか!!じゃあ今日のライブは張り切って歌いますね!!」
蒼雨「もちろん聞きに行くから最前列のチケット用意してくれたよね?」
由舞「モチのロンです!!」
蒼雨「OK。好きなだけお食べ。残したら俺が食うから」
由舞「じゃあ蒼雨センパイの分がなくなるまで食べちゃいますね!!」
蒼雨「そこは少し残しといてくれないかな……」
長い間
蒼雨M「愛しの妹と、その恋人へ。俺にも恋人ができました。今度会うときはダブルデートをしようか。きっと楽しいよ。蒼雨より」
了
作業BGM:北野井子「Begin」
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