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男爵令嬢の領地リゾート化計画!  作者: 相原玲香
第一章 〜リゾート領地開発編〜
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吹きすさぶ懸念の嵐

▪️ご無沙汰しております! 本当に長らくお待たせして申し訳ありません……!


 誰にも頼れない。

 最初からわかっているつもりでいたそれは、本当に「つもり」にしか過ぎなかったのかもしれない。


 リアムは他にも思い付く限りなのか、たくさんの例を挙げて話してくれていた。

 私にはその中でも、「優しいおばあちゃんメイド」と「採用されたばかりの新人召使」の喩えがわかりやすかった。



 人の因縁は、どこで繋がっているかわからない。


 その優しさは狂信に結び付くかもしれないし、誰かへの愛情は誰かへの憎悪に簡単に変わるかもしれない。高位の方が気にも留めない裏方部屋、平民の小さな世界にも怨恨とトラウマはありふれているし、その引き金は思わぬところに転がっているかもしれないーーーー。


 簡単にまとめれば、関係ないと思える人こそ、一番過敏に反応してしまう人なのかもしれない。誰しもが「地雷」になり得る可能性があるということだろう。


 逆に身分ある方は、事が家や一族に及ぶ以上、王族に関わる問題には極めて消極的かもしれないし、圧力をかけてくる方もいるかもしれない。


 「優しい人」「信頼できる」「まだ新人さんで関係者なんていなさそう」「協力的」「地位や力がある」……つまり、あらゆる意味での"この人なら大丈夫だろう"が通用しないのだ。


 これがまず、一つ目の事実。



 そしてもう一つ。

 考えてみれば当然のことだと思えるのに、全く気付けていなかったこと。


 今日こうして席に落ち着いた時点で薄々感じ、やがて話を進めていく段で確信に変わった、「リアムは反対なんだろうな」との思い。結論から言うと、やはり正解だったようだ。


「ルシアちゃんのお願いだからね。なんでも、ぜーったい叶えてあげたいって思ったけど……でももしかしたら、それはヴァーノンのみんなは良く思わないのかな。父上やヴァーノン王宮にとっては困ることなのかなって、ちょっと考えちゃってたんだ」


 そう。リアムはだいぶ柔らかい言い方をしてくれてはいたが、この問題……ヴァーノン王国にとってはとんでもない大迷惑なのである。


 一人の貴族の行動は、一族の意志と見なされる。

 では()()ならばどうなるか? ーーそれはきっと国の意志であり、国民の総意と見なされるだろう。


 私に付き合うことで「アーロン王子の動向を探っている」とでも見られればどうなるか。


 ……やはり友好留学など建前に過ぎなかったのか。当世ヴァーノンが与しやすいと考えるのはアーロン王子の方なのか? エレーネの実権を握り、意のままに操る心積りか。いや、あるいはもうすでに、大陸の中枢はヴァーノンの手中に堕ちているのでは…………。

 

 そんな噂を立てられてしまってもおかしくはない。ひょっとしたら、大陸中を巻き込む大騒動にもなり得る。


 そうなってしまえば、平和の統治を夢見たリアムのお祖父様の尊いご遺志も、ヴァーノンにはない"何か"を見つけてきてくれると信じ、かつての敵国へと一人息子を送り出したリアムのお父様の決死の苦悩も、新たな王国の未来に希望を託したヴァーノン国民の人々の想いも……その何もかもが台無しだ。



 リアムは私人ではなく、公人なのだ。

 しがらみも何もなく、たとえその行動が家の意志と見なされたところでなんの影響力もない、お気楽端くれ貴族の私とは違う。


 私は可愛い弟として、大事な友人としてのリアムのことしか考えていなかった。


「リアム。色々説明してくれてありがとう。……でも、今日は『ありがとう』より先に、『ごめんなさい』を言うべきだったかもしれないわね」


「私……お友達としてのあなたじゃなくて、王子様としてのあなたのこと、ちゃんと考えられてなかったわ。ごめんね」


「ううん、ルシアちゃんが謝ることないんだよ。ボクの方が…………」



 あれ……? どうしよう。思っていた以上に深刻だぞ……!


 自分の無策ぶり、あまりの無配慮ぶりにびっくりというか、呆然というか……ただただ愕然とする。

 謝罪を呟いたつもりではいるが、もしかしたら声にも出ていないかもしれない。目の前が真っ白だ。


 これ、「誰にも頼らない」という私の頑張りどうこうの話じゃない。本当の意味で「誰にも()()()()」んだ…………!


□長期間の更新停止をお待ちくださっていた皆様に、改めて感謝と謝罪を申し上げます! 本当にご心配おかけしており申し訳ありません。そしていつもありがとうございます!

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