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男爵令嬢の領地リゾート化計画!  作者: 相原玲香
第一章 〜リゾート領地開発編〜
25/91

登場人物紹介【アシュリー男爵領編】


  ーアシュリー男爵領ー


 コバルトブルーの深い森と、雄大な沼が特徴のエルト地区。

 一帯を藤と蔦が覆うアイヴィベリー区域、野苺畑に囲まれた森の集落のラズクラン区域、沼のほとりの深奥部に位置するマーシュワンプ区域の三つに細分される。

 田舎ののどかな町並みを有する、ある程度拓かれた小さな領都のテナーレ地区。

 こちらは旧領主邸や学校、広場があるカンファー区域、寂れた商店通りや住宅街があるファンティム区域、領地の水源のため池を湛えるポンドウィスト区域の三つに分けられる。

 その二地区三区域で構成されている、アシュリー家が与えられた領地。


 エドウィン・クローディア伯爵という老紳士が治める土地であったが、数年前に病死、廃嫡に。

 三人の代官によってひどい目に遭わされ続け、領地の子供たちが生死の境をさまよう事件さえ発生。

 よそ者に対する強烈な不信感が根付いていた。


 伯爵領であった頃はシプラネ地区・バレトノ地区も広大な領地の一部だったが、それぞれシプラネ地区はドートリシュ侯爵領に、バレトノ地区はブルストロード辺境伯領に併合された。


 領主主導で観光リゾート業を始動。

 今では新領主・アシュリー男爵家を皆心から信頼しており、温かい家族のような関係性を築く。

 特に令嬢、ルシア・アシュリーを領地の姫として大切にしている。


  ーアシュリー男爵家ー


 室内生活、のんびりライフを好む引きこもり一家。

 代々エレーネ王都で雑貨屋を営む中流商家であったが、人気のない商店会共有倉庫で在庫整理をしていたある日、迷子と思われる男の子を保護したことで大きく運命が変わることとなる。

 立身出世や金もうけよりも引きこもることを是とするのは、脈々と受け継がれてきた血筋である。


「自分の財は隣人のために」という家訓と、お人好しな性格から他者からの評価は高いが、ソファとベッドでゴロゴロすることしか頭にない彼らがそれを知る由はない。


 自然豊かな領地が大好き。

 ここは運命の地であり、唯一無二のリゾート!

 色んな人々に魅力を知ってもらいたい。


 すっかり心通わせた愛する領民たちと共に、アシュリー家は今日も突き進む。



  ルシア・アシュリー


 創始紀1000年9月21日生まれ。9歳。


 腰までふわふわに伸びた赤髪、ルビーよりも紅く煌めく赤目を持つ、本作の主人公。

 前世と転生時の記憶を持ち合わせており、自分が希望した通りの容姿に大満足している。

 両親から受け継いだ赤髪赤目が何よりの自慢。これに勝る美しさなどないと常々考えている。


『赤髪赤目であること』『基本引きこもり生活が送れること』を転生時の条件に設定したが、ニュアンスの説明不足で貴族に取り立てられる運命の持ち主に転生してしまった。

 学園にも通わねばならない定めで、今から憂鬱な日々。


 しかも、この世界は『学園シンデレラ ―真理の国の姫―』という乙女ゲームの世界であり、自分こそは残念チュートリアル悪役令嬢(仮)、『ルシア・エル=アシュリー』であるという残酷な事実にも気付かされてしまう。


「主人公をいじめず、攻略対象たちとも一切関わらないこと」しか対応策が思い浮かばず絶望していたが、使用人たちの「退学になっても問題ない。領地に帰ってくればいい」という言葉に救われ、今のところ平和に過ごしている。


 今もこの先も、乙女ゲームの登場人物たちとはなんら関わりを持つつもりはないと思っているが、果たして…………?


 領地の暗く悲しい過去を聴き、せっかくの素敵な環境を活用しないのはもったいないと「観光リゾート業」を始めることを宣言。

 地球の「ホテル」と観光業態のあり方、そしてこの世界の社会の仕組みを参考に、『貴族ぐらしの里』を提案する。


 眠ることを何よりも愛する。

 ベッド周りを充実させ、寝具にこだわるのが趣味。

 読書や刺繍など、部屋でできること(寝転んでできることであればなお可)ならば全般好き。

 食べ物は汁物が好物である。


 商会の一人娘から男爵令嬢になった時にはどうしたものかと思ったが、周囲の人々にも恵まれ、それまで以上の充実インドア生活を送れているので、今の人生がとても幸せ。

 家族も使用人も、領民たちも皆、周りの人全員が宝物である。


  ヴィンス・アシュリー


 49歳。

 紅花のような赤い髪色。クセ毛で、いくらまとめようとも左右にハネる赤髪が遠目からでも視線を引く。

 瞳はよくある濃い茶色をしている。

 先代である両親をはじめ、親類に赤髪を持つ者はおらず、奇異の目で見られることも多く、髪色には深いコンプレックスを抱いていた。

 しかし、双子神エレーネとロイに熱心な祈りを捧げた結果授かった愛しい娘が、「綺麗な髪と瞳の色! とっても大好きよ」と産まれてきてくれた時からずっと言ってくれるうちに、だんだんこの髪色に嫌悪感も無くなり、愛着も沸いてきた。


 両親は早くに亡くなってしまい、愛する妻と頼れる従業員と共に四苦八苦しながら商会を運営してきた。

「需要もさほどない日用雑貨屋」であったことは事実だが、「親身に商品選びをしてくれる雑貨屋さん」と王都の人々からの評判は高かった。


 隣国の王太子、リアム・スタンリーを無事保護したことにより叙爵され、一家の主である彼が男爵の称号を得ることになってしまった。

 城でやるべき仕事を長時間・短期間・詰め込みで終わらせるように設定し、出仕は毎月に一、二度程度。


 読書が趣味であり、生きがい。

 仕事も、食べることも寝ることもしなくて良いのならば、ずっとこうしているのに……というのが口癖。

 おそらく本が一冊もない環境に置かれたら衰弱してしまうだろう。

 娘も読書家であることが非常に嬉しい。

 物語の感想を語り合うだけでなく、もう少し娘が成長すれば学識書について論議を交わすこともしてみたい。


  エイミー・アシュリー


 49歳。

 雪原の如く輝く銀色の髪色と、鮮血のごとし赤の瞳の持ち主。

 肌は青白いほどに透き通る、雪の女王さながらなアルビノの麗人。

 見た目からは冷たい印象を受けるが、よく笑う優しく物静かな女性。

 初見で悪い方に誤解されるタイプ。

 日光に弱く、体調を崩しがち。

 生まれつき病弱。


 旧姓はクインシー。

 平民では最も大金持ちと言っても過言ではない大豪商の生まれ。

 五人兄妹の末娘で、二人の兄・二人の姉とはだいぶ歳が離れている。

 家族から現在のルシアのように溺愛されて育った。


 年老いてから産まれた末娘を心配した両親は、跡継ぎも補佐もおり、政略結婚をしなければならないような家でもないため、病弱で家に引きこもりがちな娘を大切にしてくれる者の許へ嫁がせたいと考えた。

 優しそうで見込みのありそうな商家の若い男を徹底的に選び出し、お見合いさせたのがヴィンス・アシュリーだった。

 二人は運命を感じ合い、トントン拍子で結婚した。


 商会の仕事はもちろん家事も得意。

 少し体調が悪い時でも無理をしようとするため、使用人たちは彼女の様子にいつも目を光らせている。

 実家でも嫁ぎ先でも、そして貴族夫人となった領地においても、いつも皆から大切にされている。


 裁縫に刺繍、織物に編み物までプロ並の実力。

 細く白い指でなんでも作り上げてしまう。

 ずっと部屋で何かを作っていたい。

 大きくなった娘が、少しずつ編み物や刺繍の技術を習得しつつあるのを嬉しく思っている。

 もっと色々な手法を教えてあげたいし、いつか何かを合作してみたい。



  ーかしましファイブ withキャプテンジニー ー


 かしましシックスでも、かしましセクステットでもなんとなく語呂が悪いためこうなった。

 アシュリー商会の誇る若い女性従業員六人。今はアシュリー男爵家に仕える侍女集団。

 ジニーが彼女たちのリーダーかつ精神的支柱である。

 お客様に評価されていたそれぞれの特技がある。


  ジニー・バーンズ


 21歳。

 地毛の色は茶髪で、一部分を黒に染めている。もみあげから横髪は金のメッシュを入れている、三色の髪。

 横髪のみ鎖骨までの長さで、あとの長さは肩まで。

 ポニーテールにしている時もあれば、サイドテールにする時も。

 マーマレード色でアーモンド型の瞳。

 フレンチメイド服。

 スカートは膝丈。

 ところどころにオレンジと黒の重ね布を仕込んでいるのがこだわり。

 胸元はリボンタイではなく、お兄ちゃんとお揃いのネクタイを着用している。


 いつも明るく元気。

 ピンクゴールドのアクセサリーが好き。

 誰からも好かれるリーダータイプのギャル。

「予算を告げると、きっちりその予算内で最もお似合いの装飾品を選び出す」ことに定評があり、貴族夫人からも街のご婦人からも気に入られていた。

 実家は商売とは関係のない家庭だったが、生き生きと働く兄に憧れアシュリー商会に就職。

 すぐに「旦那様はめっちゃ良い人だし、奥様は優しい上にマジ綺麗すぎ。お嬢様かわいい」が口癖になった。


 兄妹で力を合わせ、友人でもある女性使用人みんなで協力しながら、アシュリー家一同が室内でゆっくり過ごせるよう、彼女は今日も元気いっぱいに働いている。

 しかし、仕事がない。

 ホテルで働けることが今の楽しみ。

 お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんが世界で一番カッコいいと思っている。


  リリア・カロー


 21歳。

 黄色に近い、明るい金髪のミディアムヘア。

みつ編みカチューシャが特徴。みつ編みにした部分に、さらにリボンカチューシャを重ねることも。

 ピンク色の瞳。

 大きく丸い目をしているが、ぽややんとした雰囲気やぽけーっとしている顔立ちが相まって、タレ目がちに見える。

 ミディアム丈のクラシカルメイド服。

 肩元や袖など、本来白のフリルの部分は全て桃色のフリルにしている。

 小柄で華奢。身長は一四○センチメートル台。

 おそらくルシアに抜かされる日も近いが、別に焦ってはいない。 


 子供からとても好かれる。

 親に連れられて店に来た子と買い物の最中に遊んであげたり、卸で貴族家に行けば令息や令嬢からも懐かれて遊んだりしていた。

 リリアのおかげで、「大人としてはいらないもの」がよく売れたり、「あのお姉ちゃんと遊ぶ!」と小さな子供のいる貴族家からご指名をいただけたりと、ものすごく重宝されていたスキルである。

 今でも領地の子供たちから大人気。


 やる時はやる。

 気合いの入った顔は、子羊が懸命に威嚇しているかのよう。

 使用人になってからというもの仕事がないので、食器洗いや掃除のチャンスを見つけるたびに、皆と同じように素早く動こうとするのだが、もとがのんびり屋さんなので出し抜かれることが多い。

 しょんぼりした愛くるしい顔を見かねて、おこぼれで洗濯物畳みなどの仕事をもらえることもある。

「主人家族に家事を取られ、本来メイドがやるべき仕事が回ってこない屋敷」という異様な状況に、皆少しずつ毒されてきている。


  メリー・クロース


 17歳。

 若草色のロングヘア。

 サラサラストレートで、芝生を織り込んだはたのよう。

 商会に入る前は伸ばしっぱなしだったが、お姉さんたちに可愛がられ、最近はヘアアクセを付けたり色んなヘアアレンジを試したりと、オシャレ勉強中。

 赤目に限りなく近い赤茶色の目。

 昔は特になんとも思っていない瞳だったが、今では妹のように感じているルシアお嬢様と似た瞳が大の自慢。

 ミニスカメイド服。

 黒のニーソックスとガーターベルトがお気に入り。


 とにかく声が大きい。

 かしましファイブが騒がしくしている時、よく耳をすましてみるとおおよそがメリーの声である。

 そして、胸も大きい。

 ルシアが独自に調査した結果、最もたわわだったのは彼女であった。

 失敗してもめげない、前向きな頑張り屋さん。

 お姉さんたち皆の良いところを吸収して、頼れる立派なメイドになるのが目標。


 本人に自覚はないが、営業の才に恵まれている。

 あとひと押しのお客様に彼女が明るく挨拶し、おすすめポイントを説明するともう一発で落ちる。

 頑固で有名なお客様やプライドが高い方も、メリーの前では態度が軟化する。

「あの子出して。緑の髪のいい子」と、名指しで接客を求められることが多かった。

 彼女自身は皆がそうだと思っており、才能だということに全く気付いていない。


 まだ警戒心を解いていなかった頃の領民たちが、最初に心を許し始めたのは買い物に訪れる彼女の笑顔があったから。


  パンジー・ノット


 20歳。

 青髪ロイヤルブルーのひし形ミディアムロング。

 愛されゆるふわパーマ。天然でこの髪型だという。

 自分の髪型が好きなので、あまり手を加えたくない。

 前髪を毎日違った雰囲気にセットすることでアレンジを楽しんでいる。

 髪の明度を薄くしたような水色の虹彩。瞳孔は髪と同じ色。

 クラシカルロングメイド服で、フリルは多め。エプロン、フリルともに水色。

 後ろのリボンは白。細めで片結びにしている。


 起業したての商家の生まれ。

 幼少期は両親も何もかも手探りで、お金のやりくりに必死な貧乏生活を経験した。

 生きていくために独学で簿記を学び、常にそろばんを弾き、暗算の練習に日々励み、驚異的な計算速度を身につけた。

 ちょっとした勉強のつもりで地域で名が知れていたアシュリー商会に勤めたが、いつもピリピリしていた実家と違い暖かく、やりがいを感じ、一時労働契約を破棄。

 解雇されるその日まで雇ってほしいと永久契約に変更した。

 実家は弟が継ぐことになったという。


 脳内で貸借対照表と損益計算書を作成できる。

 ただ会話をしていたのを聞いていただけで的確なアドバイスを送ってくる。

 経理のプロ、アンリから目をかけられている。

 ただ、どうしてもアンリの計算速度にはまだ敵わない。

 いつの日かアンリと同じ高みを目指したい。


  ユノー・エマソン


 18歳。

 ベージュ色の髪。

 頭頂部が栗色で、毛先に近付くにつれハイライトになっており、毛先は淡いメルティベージュ。

 内巻きのセミロングで、前髪はぱっつん。

 瞳はヘーゼルグリーン。まつ毛がとても長く、自然なカールを描いている。

 リボン大きめ、キャップなしのヴィクトリアンメイド服。

 丈はかなり冒険して、膝下。

 メイド服の色は青色。白線で型取りしている。

 刺繍は彼女のお手製。


 控えめで人当たりのよい性格。

 裁縫と刺繍が得意。

 素材を話し合うところから始めて、色違いのものを作ったりお嬢様に内緒でプレゼントを作成したりと、夫人エイミーと仲が良い。

 絵心もあることが近頃判明した。

 イラストレーター並の可愛らしい絵を描く。

 無償で描かせるのはあまりに申し訳ないので、今後一枚ごとに臨時給を支払うことを真剣に検討されている。


 人が気にかけないところをよく見ている。

「あのお客様、足が少し悪いようです」と誰も気が付かないうちから察して肩を貸したり、身分を隠してお越しになっていたお客様のハンカチに刺繍された紋章から、貴族であることを見抜いて接客したりなど、周囲に対してよく気配りができる女性。

 のちにその貴族様は彼女の行動をいたく評価し、アシュリー商会の常連になってくれた。


 自分に自信があまりないようで、特に秀でたこともなくアシュリー家のお役に立てていないのでは、と悩んでいた彼女だったが、最近はフリップ作りにしょっちゅう駆り出されるため、使用人の中では現在最も充実して働いている。


  ケイト・アゼリア


 19歳。

 漆黒の艷やかな黒髪で、斜め前下がりのぱっつんヘア。

 うなじ部分が一番短く、そこから横髪にかけて前下がりに切り揃えられている。

 最も長い部分はちょうど顎と同じ位置。

 前髪は中央が長く、そこに向かって左右斜めに切り揃えている。

 アメジストに似た紫色の神秘的な瞳。

 下まつ毛が長い。

 クラシカルメイド服で、全身モノトーンで統一されている。

 袖や肩元、スカート裾部分、エプロンの縁取りなど至る箇所に黒レースの意匠が施されている。


 無表情で物静か。

 おとなしいが、無口というわけではない。

 たまにボソッと面白いことを言ったり、鋭いツッコミを入れたりもする。

 冷静沈着。皆が焦っている中でも、ひとり冷静に行動することができる。


 口元がほんのり微笑んでいる時は、ものすごく楽しい証拠。

 醸し出す雰囲気でなんとなく言わんとしていることがわかる。

かしましファイブの面々がお喋りする中、何も発言せずにいる時も輪には参加しており、心では笑っているのだ。


 一度会ったことのある人は全て脳内データベース化されている。

 店内で困った様子のおばあちゃんに、「あの……これ……」と傘を差し出したり、いつも小売で買いに来るお客様からの卸の発注があり困惑していたところ、「あのお客様……遠くに嫁いだ妹さんがいるって言ってました……そのプレゼントではないでしょうか…………?」と発言したり。

 前者は四ヶ月前に来店した時の忘れ物であり、後者はのちに聞いたらその通りであった。

 ケイトのおかげで助けられてきた事態がこれまでに何度となく存在した。


 アンリの秘蔵っ子。

 ホテルにおいても、冷静な対応と脳内データベースで大活躍してくれるだろうと、アシュリー家から期待をかけられている。



 ー眉目秀麗伊達男トリオ(自称) 改めカルテットー


 元々は在庫管理や荷運びに従事していた男性従業員たち三人組。今はアシュリー男爵家の執事を務める。

 黙っていればイケメンなのだが、まあまず黙ってはいない。

 都会的な男性たち。仕事は真面目でとてもできる。

 一秒でも黙っていないことだけが残念な点。


 少し歳の開きがある新参の料理長シェフ、ギリスともすぐに打ち解けた。

 取り囲んでグイグイいったとも言う。

 彼からは馬車の操縦を交代で教えてもらっている最中。

 毎日実に楽しそうな彼らを、ギリスも苦笑しつつも可愛く思っている様子。

「バカ正直クインテット」とは、色々あって和解。

 互いに軽口を叩き合いながら、一緒に酒を飲みに行く仲になった。


  ジル・バーンズ


 24歳。

 地毛は茶髪。一部分を金色に染めている。

もみあげの部分が黒のメッシュで、妹ジニーとは色合いが逆。

 マーマレード色でアーモンド型の瞳。

 襟足が長い。

 前髪のセットが、無意識に毎日妹の対比になっている。

 シルバーアクセサリーが好き。

 耳カフスにチョーカー、バングルなど彼のこだわりアイテムは多数。小物使い上級者。

 黒の燕尾服。シャツにところどころ水色と黒の重ね布を仕込んでいる。

 ネクタイは妹とお揃い。


 近場で職探しをした際、メンズの小物類の取り扱いが多く、かつ体力仕事ができるアシュリー商会を発見。

 やがて「オレの職場はココしかねぇ」と思うまでになり、兄妹で楽しく働くように。

 指示がなくても自分の判断で動けるタイプ。

 彼が先回りして行動してくれていたおかげで、ヴィンスが想定していたよりもずっと物事が進んでいたことがままあった。


 ジニーのことが可愛くて仕方がない。

 ルシアをもう一人の妹のように思っている。

 お産の際にお祭り騒ぎの大盛りあがりだったのは彼。

 そして、出生の時に理性が全部飛んだかのように最もハイテンションだったのも彼である。

 一応男性使用人のリーダーの立ち位置にいるものの、彼らの間に特にそういった認識はない。

 妹と一緒に何かを任されると仕事がより早くなるため、なんとなく彼ら兄妹は一セットとして扱われがち。


  ロニー・ヒルトン


 23歳。

 オレンジベージュの髪のオールバック。

 瞳はヘーゼルブラウン。

 チャラい。硬派なパンクスタイルを目指しているそうだが、本人のノリが強烈でどうしてもチャラく感じる。

 ミッドナイトブルーの燕尾服。

 シャツは赤や黒を選ぶことが多い。腰元のシルバーチェーンがよく似合う。


 アシュリー男爵家一の力自慢。

 ルシアであれば片腕だけで持ち上げられる。ただ、危ないので毎度おそるおそる両手で持つ。

 細マッチョ体型。見た目ではわかりにくいが、触ってみると筋肉の盛り上がりや硬さが瞭然。

 地球の生まれだったならば、おそらくジム通いが日課。日焼けサロンの常連だろう。

 毎朝の自主トレーニングは欠かしたことがない。


 入荷日、在庫数、出荷予定日が全て頭に入っている。

 いちいち紙を見るよりも、彼に一言聞いた方が絶対に早く、取引先との仕入交渉の際などには彼が必須だった。

 一家に一人、ロニー・ヒルトン。

 メリーが気になっており、さり気なくアタック中。

 振り向いてもらえる日はまだ遠そう。


  ハロルド・ターナー 


 22歳。

 地毛の色は白。黒のメッシュを無造作に入れてある短髪。

 前髪は長め。

 目は水色で一部青も混ざっており、模様が入っているように見える。

 白の燕尾服。シャツは必ず黒。

 ネクタイは緩めて着用。しかしネクタイピンは付ける。

 小物にビビッド系のアクセントカラーを取り入れている。


 わりとケンカっ早いところがある。

 反面、一度わかり合うと誰よりも親しく接する。

 バカ正直クインテットと最初に打ち解けたのも彼。

 ジルとの力比べは、今のところほぼ引き分け。ロニーにはいまだかつて勝てたことがない。

 彼らがわいのわいのと騒いでいる光景は、ペットショップのふれあいコーナーのようだ。


 年配のお客様から人気を博していた。

 孫のようで、勧められるとついなんでも買いたくなってしまうそう。

「オレオレ詐欺の才能がある……」とルシアからは思われていた。

 領地に来てからも、年配の領民が経営するお店に買い出しに行かせると必ずおまけをもらって帰ってくるため、「ハロルド担当」の買い物ルートが設定されている。

 歩くクーポン券。


 実はユノーとお付き合い中。

 儚げで優しい笑顔にメロメロだとか。


  ギリス・ブルーベル


 36歳。

 金髪碧眼の精悍な男前料理人。

 ザンギリの金髪は、コック帽(トックブランシュ)を被ると完全に見えなくなる。

 海の色と同じ深い青色の瞳。

 清潔感あるダブル仕立ての料理人服を着用している。

 馬車を扱う時は、特に装飾しない普通の燕尾服を着る。

 料理人服のネクタイは緑。


 叙爵の褒美として、アシュリー男爵家の料理長に就任した。

 当初思い描いていた「シェフの生活」とは違っていたものの、尊敬に値する主人男爵夫妻と、自らの活躍の場を懸命に考えて与えてくれたお嬢様のもとで働けることが今の誇り。

 ホテルでレストランを運営するべく、男爵家の馬車を使用して大陸中で仲間を集める旅をしている。


 料理長シェフの座に就任するまでは、「ロティシエ」だった。

 肉料理全般とソースを作る役職。ありとあらゆるソース作りならお手の物。

 初めて見る食材であっても、味を引き出す完璧なソースレシピを瞬時に考え付ける。

 ソースと同様に、スープ料理も得意。そもそも苦手なレシピはないらしい。

 お嬢様がスープ好きだということがわかった今、大鍋に美味しいスープを作り置きしてからでかけることが日常となった。


 それから女性にモテる。とにかくモテる。

 料理人探しの旅を彼自身は真面目に行っているものの、年齢を問わないたくさんの女性が気が付くと彼を囲んでいる。

 ストライクゾーンならぬ、逆ストライクゾーンが広い体質。



 ー有能使用人頭コンビー


 商会時代からアシュリー家を取りまとめる、敏腕上級使用人。

 男爵夫妻からの信頼も深く、若き使用人からも敬愛されている、厳しくも優しいエリートコンビである。


「使用人頭」を設けなければならないようだったので、何の異論も出ないまま彼ら二人が指名され、満場一致で執事長・メイド長の座に就任した。


 本当にこの間まで商人だったのか、使用人歴がないのは嘘なのではないかと疑問が湧くくらい仕事ができる。

 若い子たちが気付かない、加えてアシュリー男爵家三人に奪われにくい家事や仕事を見つけ出すのが得意。


  ジョセフ・ホプキンス


 64歳。

 執事長ハウス・スチュワード

 シルバーヘアと白銀の口ひげがよく似合う、心優しい好々爺。

 黒き瞳が輝くのは、彼がひとたび収益計算とコスト削減に取り掛かる時のみ。

 いつも穏やかに笑っている、ルシアにとって祖父のような存在。


 幼少時に拾われたという先々代の時代から、丁稚としてずっと商会の仕事に携わり、自らの才覚と実力で番頭の座までのし上がった。

 アシュリー商会に残っている帳簿には、ルシアの曾祖父母がつけていた日記もあった。

 そこには「創始紀951年、孤児の少年を拾い丁稚とする」「創始紀962年、丁稚から手代に昇格させる。将来が楽しみだ」とジョセフの大出世物語が年表形式で記されており、もはや一代小説のよう。

 伊達男トリオはそれを読んで、「オレらもマジ頑張ればジョセフさんみたくなれんじゃね?」とやる気を出していた。


 若い使用人たちからは尊敬のまなざしを向けられており、彼の発言に対する信用はとても厚い。


 長年商人として生きてきて、それこそ執事歴はまだ一年にも満たないのであるが、登城した際に貴族たちから、また多くの領民たちから「熟練の執事」であると勘違いされている。

 それを面白がり、「あれは今から五十年以上前――……。『おまえは今日より執事となるのです』と、先々代の奥様から拾っていただいたことから始まりました――――」と、最近何やら面白そうなオリジナルストーリーを創作し始めた。


  アンリ・マグワイヤー


 62歳。

 メイド長(ハウス・キーパー)

 昔は茶色に近い金髪であったらしい。プラチナブロンドよりも薄い金色になった髪をギブソンタックにまとめている。

 銀縁の丸メガネを着用しており、一見キツい印象を与えるが、その奥のこげ茶の瞳は柔らかく優しい。


 色恋に脇目も振らず、ひたすら商売とキャリアに没頭邁進してきた結果、いつの間にやらこの年になっていたそう。

 しかしそろばんが彼女の恋人で、帳簿合わせをしている時が最も楽しい上、商会主で現男爵のヴィンスを息子、エイミーを嫁、ルシアを目に入れても痛くない孫娘のように考えているため、全く問題はないという。


 経理のプロ。アンリの右に出る者はいない。

 エイミーが体調を崩した時には商会時代から家事手伝いをしていたので、家事全般も得意。

 やることを全部終わらせた後、ジョセフと共にお茶を嗜みながら、ルシアや若い子たちの動向を見守り目を細めるのが日課で、至福のひととき。

 


 ーバカ正直クインテットー


 素朴で純朴な、自然の美しい領地と子供たち、今は亡き伯爵様を愛する若者たち五人組。

「投石事件」を心から悔い、アシュリー男爵家に忠誠を誓った。

 労役刑としてリゾート領地開発の総合職員となり、日々献身的に働いている。

 

 ルックスのレベルは非常に高い。


 ルシア・アシュリーを「領地の姫」と最初に呼び始めたのは彼らである。

 ルシアは命であり、生きがい。

 かつて伯爵様に感じていた思いと全く同じ尊敬の気持ちを、アシュリー家に抱いている。


 昔から何をするにも一緒だった、悪友であり大親友。

 五人それぞれに奥さんとのラブロマンスが存在する。


  ジェームス・バーキン


 30歳。

 赤土色の髪色。赤毛ではあるが、アシュリー家の赤髪よりは茶色に近い。

 オレンジ色の瞳。夕陽のような澄んだ目をしている。

 いつも笑っている印象が強いため、その綺麗な瞳を見る機会は少ない。

 体格が良く、がっしりとした骨格。身長も高い。

 ニカッと笑う顔がまぶしい。

 ルシア曰く、「肩車に最適な素晴らしい身体」。


 領地の頼れる兄貴分。

 その発信力、人望、求心力は今もなお健在。

 正義感が強く、困っている人がいれば放っておけない。

 他人の痛みを自分の苦しみのように感じる。

 幼い時には数々のイタズラでも名を馳せた。そのたびにあとでしっかり謝罪し、仕事の手伝いもしたそう。

 良くも悪くも短絡的で直感的。

「ほれ、バーキンとこの」と言っただけで、アシュリー男爵領を越えて近隣領地の住民たちは皆一瞬で彼の顔が浮かぶ。


 他の四人は、彼のかわいい弟分たち……らしいが、ジェームス以外からは言質が取れていない。

 ただルシアの所感としては、ジェームスの言うことが正しい気がしている。

 昔は皆「ジェイ兄ちゃん!」と呼び懐いてくれていたが、成人するや否や「おいジェームス」「ジェームスこの野郎」と呼んでくるようになったため、とても寂しいらしい。

 だが、今でもなんだかんだ自分を内心慕ってくれていることはわかっているし、彼らの子供たちが「ジェイおじちゃん」と呼んで同じように懐いてくれるので、まあいいかと思っている。


 テナーレ地区カンファー区域の在住。

 ジェームスが番長だとすると、奥さんは領地の裏番長だった。お互いに強い信頼を置くバディ的存在。

 尻に敷かれていると見せかけて、実はそうではないのだとか……。

 子供はまだいない。


  バート・アーチャー


 28歳。

 灰色の長髪。四角い黒縁眼鏡をかけている。

 髪の色と違う濃度の灰色の虹彩が、濃灰・薄灰・黒の三重層になっている瞳。

 肩甲骨辺りまで伸びた髪を首下で留めているバレッタは、奥さんからの贈り物だとか、「ベルくん、出稼ぎからちゃんと無事に帰ってきてよ……!」という想いを込められたものだとかいうことは断じてない(本人談)。

 それを大切に手入れしていることや、バレッタが付けられなくなるため髪を短くするつもりはないなどという冷やかしの類は、全て事実無根である(本人談)。

 バート(bert)を略して、ベルくん。

 本人たちは誰にも気付かれていないつもりなので、その呼び方について口出し無用なのは領地暗黙の了解。


 非常に聡明。領地では一番の頭脳派。

 昔からイタズラひとつをするにも、ジェームスが考えたことを彼がまとめて作戦を立て、参謀役兼指揮官を務め完成度の高いものにしていた。ある意味ジェームスより厄介な存在として、他領でもそこそこ有名。

 頭が回るという意味でも、立ち位置としても、領地のリーダーであるジェームスに唯一意見できる副官。

「投石事件」は、熱病の際に彼の弟と息子が最も重症で、本来ストッパーとなるべきバートこそが冷静さを欠いていたために起こった。


 エルト地区マーシュワンプ区域の在住。

 奥さんとは有名なケンカップル。お互い素直になれない関係。

「あーハイハイまたか」と生暖かい目で皆が見つめている、領地の日常風景。

 ルシアの影響で、近頃領民は「ツンデレ(つん-でれ) アーチャー夫妻のような人物を指す言葉」という王都語を覚えた。

 ロバートという歳の離れた7歳の弟と、ギルバートという5歳の息子がいる。


  ラルフ・ウォルフ


 25歳。

 茶髪で、肩までつかない程度の長髪。

 前髪上部分の束が犬耳のようになっている。

 犬耳の裏側にあたる部分の髪はクリーム色。そこだけ髪質も違う。

 人間の耳はしっかりあり、犬耳部分には聴力はないそうだが、彼の感情に呼応してぴこぴこと動く。

 犬耳(髪)の動きで、何を考えているかがだいたいわかる。

 垂れ耳オオカミの両耳にしか見えない。

 虹彩は満月色で、瞳孔は黒。

 ぼんやりした顔をしていることが多い。


 幼い頃は、いつもジェームスかバートの背中にくっついて回っている、「領地一の甘えっ子」であった。

 頭をなでられるのが好きだったこと、ジェームスがそばにいなければ一人で何もできなかったことは、触れてほしくない彼の黒歴史。

 しかし、シプラネやバレトノにまで広く知れ渡る周知(羞恥)の事実である。

 ジェームスのことを未だにカッコいいなどとは決して思っていない。

 バートの服の裾を引っ張ることがまれにあるが、それは昔の癖などではない。バートの服にシワがあっただけの話である。


 テナーレ地区ファンティム区域の在住。

 いつも兄ちゃんたちの背中に隠れていたラルフ少年の純情な心が、初めて恋心を意識した日があったそうな――……

 奥さんからの愛情は、今日も留まるところを知らない。

 また、奥さんへの熱い想いも留まるところを知らない。

「オレん嫁がいっちゃんかわいい」。

 クリフという6歳の息子がいる。


  ヒューゴ・ユーリー


 25歳。

 水彩絵の具で色付けしたような、紫陽花が雨でにじんだような紫色と白髪が組み合わされた髪色。

 メッシュではない。白に紫を垂らした不思議な色合い。

 長い箇所と短い箇所が混じり合う、ザンバラの髪型。

 薄紫ガラスをはめたように見える大きな瞳。


 愛嬌のある顔立ちで、言ってしまえば女顔。

「かわいい」と言われることを非常に嫌う。

 体格も五人の中では最も小柄で、色白なことを気にしている。

 いつもあまり似合わない黒タンクトップに腰巻きのジャケット、トレッキングシューズなどの採掘士のごとき出で立ちをしているのは、彼なりに男らしさを追求した結果。田舎在住でセンスが今ひとつ微妙なようだ。


 ジェームスに対する尊敬の気持ちなどは、欠片も持っていない。

 バートのことを頼りになんてしてはいない。重要な二点である。

 ラルフとオリバーはかけがえのない親友。


 エルト地区アイヴィベリー区域の在住。

 奥さんとは家が隣同士で、昔から結婚の約束もしていた純愛幼なじみ。

 実家を合体させて改築した、二世帯住宅に暮らす。

 妻にならば「かわいい」と言われても許す。むしろ嬉しい。

 ショーンという6歳の息子がいる。


  オリバー・ハワード


 25歳。

 黄緑がかったオリーブ色の金髪。

 耳の後ろより少し襟足があるくらいの短髪。髪質は硬め。

 素朴さがもったいない領民No.1。ルシア調べ。

「もうちょい髪伸ばして、アクセとか付ければ垢抜けんのに」とロニーに言わしめるほど、秘めたるポテンシャルが高い。

 深緑の森色の瞳。二重で切れ長、ツリ目ぎみ。


 昔の恥ずかしい話になると、じっと同い年三人で息を潜めて気配を殺し、ただひたすらに話が終わるのを待つという。

 その時、矛先が向くのは主にラルフ。特に顕著だったので話題になりやすいらしい。

 その後にラルフとヒューゴから酒代を要求されるのは、主にオリバー。おとなしく一番気配を殺すのが上手いため、二人の怒りを買いやすいらしい。

 ジェームスを今でもたまに「ジェイ兄ちゃん」とうっかり呼んでしまうことを指摘されるが、それはジェームスの都合のいい幻聴である。


 テナーレ地区ポンドウィスト区域の在住。

「行ってきます」と「ただいま」のキスは毎日欠かさない。

 押しかけ女房的なベタ惚れ彼女だったため、上手に取られがち。

 タジタジ感、してやられ感が見てとれる。

 領主ヴィンス・アシュリー男爵と『女所帯はつらいよ同盟』を結成している。

 ルシアのことを「うちの三姉妹の長女」と見なし始めて数ヶ月が経った。

 オリビアという7歳の娘とオリアナという5歳の娘がいる。

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