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第14話
あの日から彼女の隣には、毎日のようにあの男がいた。それでも毎日、達也は彼女に手紙を送り続けた。ほとんど何も変わっていないが、唯一変わったことは手紙の内容だ。彼女への愛を綴っていたものが、彼女への怒りや憎しみを綴ることが多くなった。
達也は彼女をいつも見ているのは自分だと証明するかのように、手紙とともに彼女の写真を送った。彼女は、達也に振り向くことはなかった。それどころか、電車を変えたのか会う回数も減っていた。達也はまた会えるように、ギリギリまで彼女を待って通勤した。それでも彼女に会うことはなかった。次の日も、その次の日も彼女に会うことはなかった。
SNSもあの男性との投稿を最後に、更新されることはなかった。何回更新させても変わらなかった。コメントも更新されていなかった。
彼女の家に行くと、玄関前に置いていた手紙が消えていた。彼女はまだこの家にいると思った達也は、手紙を玄関前に置いた。白いゼラニウムとともに。
“俺はあなたの愛を信じない”