帰ってきた勇者
6000年前、北の森に建てられた『勇者の墓地』
勇者は国に裏切られてその塔に篭ってしまった。
以来勇者を見た者は誰一人としていなかった。
そんな『勇者の墓地』と呼ばれる塔の最上階。
ギギギギギギギ
6000年ぶりに扉が開かれた。
「ふぁぁ。久しぶりに部屋から出たなぁ・・・えーっと、何年ぶりだっけ?」
「6000年と3ヶ月17日と11時間17分43秒ぶりです」
扉からは一人の少年と一柱の精霊が現れた。
黒いキリングコートを見に纏う白髪の少年と金色の髪の掌サイズの精霊。
「それにしてもマスター。やっとあの魔法の研究が終わられたのですね」
「あぁ、長かったな・・・王国に援助してもらって研究してた空間魔法・・・裏切られてもう研究はできないと思ってたが女神のお陰でなんとかなった・・・」
少年の名はシン。
6000年前、勇者として魔王を討伐した者だ。
「ティータ。6000年でどれだけ変わってると思う?」
「わかりません。私は隔離空間から出たことがなかったので」
「そうだったな・・・これが外の世界だ」
空間魔法:空間転移
瞬間、石造りの壁を見ていた俺たちの景色が変わり目の前には森が広がっていた。
「ここが・・・森。これが土・・・」
「そういえばちティータは隔離空間内の擬似的なものしか見たことなかったな」
少し余韻に浸っているティータは気がついていないが魔物が近づいてきている。
俺はそっとその場を離れる。
ティータの実力なら魔物程度一捻りだろうだが初めてのものをみて余韻に浸っている女の邪魔をさせるわけがない。
「さてさてさーて」
俺は異空間から一振りの剣を取り出す。
天剣
最上位の魔物天空龍の爪とアダマンタイトで作られた剣。
魔王との決戦時にも使用していた俺にとっても相棒と行っても過言ではない剣。
俺は現れた三つ首の犬・・・ケロベロスの足元に転移してその3つの首を一瞬で切り落とす。
血を払いティータのもとに向かうとそこには既に戻ってきていた。
「すみませんマスター。気を抜いてしまって・・・」
「いいんだ。それより・・・早くここを出て人の街に行こうか。ティータも楽しみだろ?」
「・・・はい」
ティータは俺の肩に乗る。
「さて、ゆっくりと行きますか」
俺は北の森を歩き始めた。