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本気の勇者

一体何体の魔物を切っただろうか?


数百?


数千?


もう数も数えてない。


「・・・大技は後一発か・・・」


勇者は魔王との戦いにのみ優れた強者である。


一対一では誰にも負けないが多対一なら負けることもある。


突如、目の前のオークが消し炭となった。


「マスター!!」


現れたのはティータ。


俺の相棒。


勇者の右腕。


「マスター権限。魔力炉1%開放」


「かしこまりました」


ティータから莫大な量の魔力が流れ込んでくる。


6000年間で溜め込んできた魔力。


そのほんの一部を開放した。


魔力が戻り天剣を握り直す。


「勇者技能:神剣滅魔」


天剣から放たれた光の奔流が周囲一体の魔物を飲み込んでいく。


数秒もしないで奔流は消えたがあとに残ったのは一体の魔物のみ。


やつがこの騒ぎの現況。


普通の冒険者では到底勝てない。


邪神の加護を持つ魔王の卵。


「ヨクモヤッテクレタナ」


「喋れるのか」


「トウゼンダ。ワレハマオウトナルソンザイ。チシキハキサマラダケノモノデハナイゾ」


「悪い。俺の平穏のために死んでくれ」


「ワガドウホウノカタキ、トラセテモラウ!!」


ゴブリンが剣を抜く。


禍々しい負の魔力を纏っている。


それは魔剣と呼ばれるものでどれも厄介な能力が付与されているものだった。


「ティータ、『同化』だ」


「かしこまりました」


ティータの肉体が俺の肉体と同化する。


同化したおかげで俺は半生命体になる。


「勇者技能:神威」


天剣に今の俺の10%の魔力が収束する。


これだけで小さな国なら滅ぼせるほどの威力を持つ。


「マサカコレホドトハ。ダガ!ワタシハマケルワケニハイカナイ!!」


魔剣を構えて俺の神威を迎え撃つもあっさりと魔剣は砕ける。


「・・・・・虚しいな」


あとに残るのは俺とティータのみ。



これが俺が勇者をやめた原因の一つだった。


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