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4話 出現ニギハヤヒ

静かな山中。その謎の(ニギハヤヒ)は、こんな事態が現実になってしまう直前の日々のこと。


これまでのすべて(半年前の児湯郡内における出来事)を


想起していたのだった・・・・・・・・・・・・。その出来事が想定されるあれこれがもうすでに


日常ではひそやかに起こっていたからである。


ここは天孫饒速日命(にぎはやひのみこと)が降臨したという山、ハヤヒノミネ。


乗り捨てられた天の磐船(あめのいわふね)が存在するここへは、人っ子一人まったく誰も来ない。


ほんと~~~~~~~~~~~~~~~~~~~に


人が来ない。


これはやばいんじゃないかな・・・・・・というほどに、人がこなすぎるのであった。


人が全く来ない理由の一つに、頂上の尾鈴神社が到着まで1時間かかるということがあった。


遠くて険しい。登山初心者にはいくことさえ不可能。


麓の社殿は行けるのかというと、そこもかなり険しく、気が遠くなるまで歩く必要があった。


まして車でも登れないほど急斜面の坂道。


社殿周辺は天そのものだった。


あろうことか、イワフネまで禁止ロープがかかっており、危険区域のため観光客は見にいけない。


紹介看板があるのに、見にいけないとなれば確認もできない。


過労して簡単に行けるもう一つのふもと。そこにある細神社(尾鈴大明神)


そこにだけは誰でもたどり着ける。だがそこも、道沿いに田んぼがあって、鳥居がある。


鳥居はあるんだけれど、それだけ・・・・・・・・・・・・・・・


鳥居しかわからなかった。神社はその少し先の茂みに入らなければあることが視認できないのであった。


まして地域民は知っていても、そこのお札があり、信仰が広域に広まっているのでもなければ、


その情報を県がアピールしてくれていることもなかった。


最悪の場合、観光サイトでは


ニギハヤヒの弟であった、皇室の先祖ニニギノミコトがそこに磐船で天孫降臨


しているという情報にすり替わって伝えられていることもあった。


ニニギノミコトもニギハヤヒノミコトも、一般人からすると、ほんと~に


どちらでもいいくらいに見分けがつかないほど、生活とは縁が遠い存在になってしまったとおもう。


それより、細神社といえど尾鈴山といえど、付近にはお年寄りや地域を知る人々しか住みつかなく


なっており、若者はみんな町に、市街に、東京に・・・・・・・・・・・・・


幸い隣町に住むテルヒコというあの青年だけ私の神社にやってきてくれたものだが、


ほんとうに全然誰も来なすぎるから、すこしイラッと来るような


別に変にあらされるよりはいいような。複雑な今日この頃である。


それ以上にイライラするのは、私の神霊の名前や伝承だけが取り立てて研究家やマスメディアで


都合のいいようにムーブメント化し、プチブームになっていることである。


話題にしてくれるのは、黙殺よりはありがたいが、かなり間違った解釈や異なる説を


そんな勢いで断定されて、それで騒がれてもこちらは多くの神様のイメージまで


穢してしまったみたいで内心焦るというか、申し訳ないことがある。


もうしおくれたが、そんな偉そうなことを言っている私は尾鈴山の神。


それこそ絵本のようなあからさまな自己紹介に苦笑する輩もいると思うが


一つ広い心で付き合ってほしい。


私も昔は高鍋町を含む地域の住民に厚く信仰されていたものだけれど、


いまはそんな感じで誰も神社や聖地に来なくなってしまった。


宮崎県の聖地といえばもっぱら高千穂に、青島に


観光地としては西都原に・・・・・・・・・・・・・


尾鈴山とその周辺にいこうなんて人はいないものだから、そこにこんなところがあるとだけでも


多くの人々に知られることも、今後もないだろう。


最近なんだかメディアでは私のことを「天照大神の正体は男?!」とかいっているようだが


厳密には半分そうともいえるが、半分は全く違う。


「アマテル」という名前がつくため紛らわしいのでそう誤解されてしまうのも納得できるが、


ちょっとだけ、違うと訂正させていただきたい。


部分的なパワーとして言えば同一神ということもできるが、


名前や存在、神話が違う以上完全な同一神ではない。


わかりづらい形で封じられたのち、今や誰からも忘れられてしまった。


たまに私の乗る磐船は白馬の姿になって各地の視察に使うことがあったものの


それも気の遠くなるほどの年月がさせたきまぐれでもあった。


時代が変われば移動手段も変わる。


私の相棒(アメノイワフネ)は、今青年の乗る二輪車(バイク)になっている。


それこそ、すこしまえまでほんとうにむかしのような宇宙船で行動していることもよくあったものだが


さすがに毎度それをやっちゃうと、土地に住んでる人々が驚いたり


UFO研究家が週刊誌にそれを書き立てたりしたこともあって、さすがにまずいと判断した。


動物や乗り物に擬態する方が、普段は人目に怪しまれずに安全だと思ったことも理由の一つである。


さらには土地や地域で信仰されていくと、あまりにそれが長いと地域に根付いちゃって、


人が全く寄り付かないから、私の存在が世に出ていくこともないとおもう。


そんなことを一人ぶつぶつ言っていると、今日も


また一人一人魂がやってくる。いや、付近で死んだ人間たちが魂となってここに来る。


あーあ・・・・・・一家心中、次の男は奥さんに刺されちゃったか。


もう自宅に警察がいってるな。明日の宮日新聞はすごい一面になりそうだ。


旦那の風俗がよいと浮気が原因・・・・・これは誰が悪いのか定めがたしというものだなあ。


しかし人間というものは矛盾していて、情けをかけるべき面もはなはだ大きい


感情の機微の針小棒大なおもしろいものだとおもう。


人間相手はこれだから面白い。といっても私もかつては人間だった時期もあるのだが。


ほんの少しだけであるが、そんな時のことを話しても誰も面白くはないだろうから、


昔話も今日はこの辺までとしておこう。


・・・それにしてもこの親子は不憫だ。普通は自殺は地獄と決まってるんだが。


だが人間いろいろなパターンがある。一度閻魔大王に合わせるまで


多く魔者たちにやられちまわないよう


道案内が必要な場合はガイドをつけてやるんだが。どうだろう、閻魔様にあったら腰を抜かさないかな。


あんなに美しい閻魔様だとはおもうまい。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そういえば最近の話をさせてほしい。話はだいぶそれるが、意外な発見があったのだ。


こないだなんて、付近で少し霊感がある女の子、今井(イマイ)という人が東京から隣町にこしてきた。


彼女は町にパワーストーンショップを開くつもりだというので、私たちの神社にお数か所


お参りに来ていた。神社に来てくれれば、まあそれでなくとも守ってやるというのが


我々の仕事でもあるので


様子を見に行った。


その子のオーナーさんといいその子自身にも霊力があるというそうで、それならやはりその様子を


確認させてもらわなければいけない。


今後を予測すると、おそらくうちの(テルヒコ)もお世話になるだろうことがはっきり感じられた。


日本の老舗である心霊協会の研究員だと聞いてはいたが。


外界の情報に乏しい見えない世界のことを情報提供してもらえるいい機会なのではと直感した。


「ほう、霊力があるというが、どのくらい・・・・・・・・・・・・(ニギハヤヒ)」


お手並み拝見といわんばかり、私の実体は彼女の様子を見に行ったら、


地域の土着神や、低級霊たちと押し問答になっているじゃないか。


さらに分が悪いのは、そのタイミングで彼女のお店にテルヒコが足しげく通うようになっている。


やつのことを知ってるか今から言って聞いても問題ないよな?


すると彼女の横にいる霊たちの中に、一人見慣れない黒い半透明の男がいた。


普通ならば、地域の化け物や不幽霊程度なら、説得するかお祓いするかでどうにかなるが、この異様な


オーラは何だという。


こいつ、ちょっとばかし様子がおかしい・・・・・・・・・・・・あの子たちだけで大丈夫か?


このまま夢から戻れなくなってしまうのでは。


「おい、お嬢ちゃんたち!(ニギハヤヒ)」


これはひとつ、御挨拶といわんばかりに


彼女の夢に何度も現れて、闘いに加勢をしてやった。


もうすでに、そいつらに融合されてしまう寸前であった。これはやばい!


謎の黒い化け物のような男に体当たりして二人を引き離す。


こいつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


どこかで見たことがある。この魔物。


こいつは・・・・・・・・・・・・・やばいのとでくわしてるんじゃないか。この子たち。


こいつ、大悪魔(サタン)か?!


倒したと思っていたが。奴の残留思念、亡霊か。


霊に対して亡霊というのも変な話なんだが。


眼があったその怪物は、私の顔を確認した途端懐かしい時代から知り合いだった親友にでも


出会ったように、にかあっ!と笑って、うなずいて消滅した。


「これ、すべてはこいつが・・・・・・・・・・。


こりゃあ、とんでもない大戦争になっちまいそうだぞ!


はやいところテルヒコに知らせなければ・・・・・・・・・・・・・・。ぶつぶつ(ニギハヤヒ)」


今回ばかりは、相手が違いすぎる。


「あ、あの・・・・あなたはどこかであったような(今井)」


「少しウォーミングアップにやってやるか。君は全く修行がなってないね。(ニギハヤヒ)」


私の手にかかれば、低級霊程度の者たちならば片づけることはできた。


だが、まだテルヒコにすべてのことを見せるわけにはいかない歯がゆさもあって。


彼女と彼女の夫の前で、擬態していた悪霊たちが、空中で無数に爆発していた。


「ほら?(ニギハヤヒ)」


この子たちやたら笑顔でたてた親指(サムズアップ)


こんなかんじでいいのか?というか、意味、分かってるか?


彼女はびっくりして「あ、テルヒコくん?!」


とかいっちゃって。確かに顔は似ていますよ。これもまた甚だしい誤解かもしれんが・・・・・


私とテルヒコの顔がうり二つのため、テルヒコに助言されたと彼女は思い込んで、


その衝撃に目覚めてしまった。あいつのキャラじゃないか・・・。


起きた後ことを説明すると、彼はふてくされたように言った。


「あんたってひとは!その姿で現れるなよ!(テルヒコ)」


自分の立場がまったくわかってない男だと今更ながら思う。


そしてほら・・・・・・・・・


悪魔の手先は次々にこの地域でも青年を狙って、ついには部下たちを使って


町を占領しだしたのもここ数か月前後のこと。


なんども繰り返す時間軸の、これが最初の闘い。


なんの変哲もないただの男に、荷が重すぎはしないか。


私がテルヒコの前に現れた理由の一つがそれでもある。


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