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2話 土蜘蛛市街~激突する二羽の鳥~

ブロロキイイッ!(バイクの音)


「お、おまえたちその子をはなせ~!(テルヒコ)」


黒いガスマスクを着用した集団と、軍事用のものを改造した装甲車が、


宮崎県児湯郡高鍋町(日向の中央にある地域)そのものを占領していた。


ほとんどの人々は催眠ガスで、スーパーの店員から立ち読みしていた客まで倒れている。


「あ、テルヒコくん。なんであんたがこんなところに?!(幼馴染のマユ)」


事態は騒然としていたが、ここにいる人間は、彼らとテルヒコだけだったということは一瞬にして


テルヒコには理解できた。バイクから降りた彼は、無我夢中で、どうすればいいかわからない


我武者羅な戦闘法を試す。全力でタックルすると、誤って幼馴染の少女ごと吹き飛ばしてしまった


のだった。「あっマユ、おおま・・・・・・・大丈夫か?!」


「はっはっはっは!僕のことも忘れないでほしいなあテルヒコくん!


この町の人達は、僕たちのおもちゃになるために来たようなものなのさぁあ!(謎の美少年)」


聞いたことのあるような懐かしい声が響く。


テルヒコの眼の前に、深い藍色の髪の毛の、深紅の眼をもつ飾り物か、角の生えた美少年が立っていたのだった。


彼の周囲には無数の鴉たちが飛び交い、まさしく今ここにやってきていたテルヒコとは、太陽と月のように、大局的な絵づらであった。


「は~じめましてぇえ!僕の名前は秋月若彦!八咫烏陰陽道の新しい行動隊長になった君と同世代の人間だよ?!


その年齢で地位も財産も何もない君自身の不幸を存分に呪うがいいねぇえ!


僕は生まれてすべてを手に入れてきた。


でも、ただひとつだけ手に入んないものがあるんだ。テルヒコくん。(ワカヒコ)」


「なんなんだお前!もしかしてこないだの意味不明なメール、そりゃお前か・・・・お前ら、マユに何をした・・・!(テルヒコ)」


「あったり~!僕が大好きでそれ以上に死ぬほど大嫌いな君のことだから、わかってくれるとおもってたんだけどな~!最初にこの女で一緒に遊ぼうよ!おもしろいよ~!このブスと!あはは!(ワカヒコ)」


天にかざした謎のグレーの呪符には、五芒星が描かれていた。ワカヒコという美少年の彼が行った呪術により


天には真っ黒い空気がたまり、一瞬浮かび上がったよどみの上には黒い色をした得体の知れない魔物がほくそ笑む顔が浮かび上がった。


時すでに遅し。というのも、(テルヒコ)がマユに衝突する直前から、彼女の背中から生えている触覚、そして無数の手足


これらは彼女の人間性を突き破り、誰も見たこともない巨大な亡者となっていた。


手足は無数に生え、そして体色は半分土気色となり、毛の生えきった角質の強靭な角は二本


クリーム色に彼女の頭部を突き破り出現していく。あまりにもおぞましい。


表面的には善良な一市民だが、内心に秘めた彼女の本性が再現された瞬間であった。


そしてその正体は、青年テルヒコの乏しい歴史認識、神道知識でもってしても、


瞬発力的にわかるものであった。青年にはわかった。それが何であるのか。


「これは・・・・・・・・・・・・・・・・日本神話に出てくる怪物、土蜘蛛かっ?!(テルヒコ)」


きゃああああああああ!


女性の悲鳴ではない。


生物のある一種のうなり声が響いた。まるでそれは


得体の知れない虫を踏みつぶした時のあの感覚に似ていた。おどろおどろしい鳥獣戯画の一ページが


彼女の進化により、刻まれようとしていた。


どくん、どくん。


「テルヒコクン、あたし、あたし、どうなっちゃったの嗚嗚嗚嗚嗚嗚嗚?!(マユ)」


子供時代冗談で将来結婚しようなどといい合っていた青年と少女は、いまここで


一生涯忘れられない天国と地獄のボーダーラインに立たされていたともいえる。


もうすべてに取り返しがつかなくなっていることは明白だった。


「おまえよく知ってんなぁあ・・・・・・・・・可愛い()なんだけど惜しいね。こんな気色の悪い怪物になっちまうんだもの。これからは特定の占領区域のみでは、我々のおもうように土蜘蛛を作戦に使用できるようになったのよ。国民の血税のすべてはこんなきしょいもののために使われてたっておちなんだけどさぁア、ボウヤ。これ(マユが変貌した土蜘蛛の化け物)、一体いくらすると思う?めん玉飛ぶよ~。(ガスマスクの男1)」


※土蜘蛛とは、大和朝廷が成立する直前まで、皇軍(天皇家)と各地で対立した蜘蛛と鬼を合成させたような神話においてのみ登場したという怪物(クリーチャー)のことである。これらはまつろわぬモノとよばれ、一般的には抵抗の民や土着民。葛城地方などに住む無抵抗な人間たちの蔑称(一種のスラング・ネーム)かと解釈されていた。ある神社では土蜘蛛塚という手足を切断されうめられた場所も存在するという。


「で、でもこれはあんたたちがつくった化け物じゃ・・・・・・・・・・(テルヒコ)」


「はんぶんせいか~い!まだそんなこと疑問に思う余力残ってたんだ?これどうしてこうなったかわかる?クイズです!(ガスマスクの男1)」


この圧倒的な余裕、人を馬鹿にしてるとしか思えない。


他人事のように淡々と説明してくる男、そして周辺の人間たちは、装甲車に詰め込まれている・・・。


もしや、これらのすべての人々はマユのような姿に・・・。そんなわけには・・・


「やらせるかっ!(テルヒコ)」


「テルヒコクンテルヒコクンテルヒコ・・・・・・・・・・・・・・(マユ)」


ガがががっ!マユの強靭な腕が周囲の鉄柵を酸で溶かすかのように傷つけ、巨体は大いに揺れ暴れまわった。


「歴史はいつもソウ。土蜘蛛もそうなんだよね。何にも悪いことしてない人間たちの中にある闇!

俺らも土蜘蛛のことはよく知ってんのよ。

こいつを虐待して洗脳して、成長させちゃえば、リモコン一つであるときは正義の味方、ある時は悪魔の手先なんですよ。この子もそういうこと。(ガスマスクの男2)」


「それ以上言うな!彼女が何をしたというんだ(テルヒコ)」


ワカヒコら男たちの言ったこと。テルヒコの脳領域では奇跡的に実は逆算できていた。


つまりこうであった。これは仮説だが、①古代の抵抗の民や、先住民族は侵略民により血祭りにあった。

②そのなかでも従順に従ったもの、いけにえとされた者たちはのちの歴史に至るまで、不可解な方法で

朝廷に仕え、姿を貶めても生き残ったのであった。それを象徴するこの(土蜘蛛づくり)の歴史だったのか・・・・・・・・・・・


土蜘蛛、葛城鴨氏・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


土御門(ツチミカド)


陰陽師?!


軟体関節の人形のように、ワカヒコ以外の男たちは体を柔らかく屈折させて、手足をまるで生物の(蜘蛛)のように


頭を地にはわせ、手足をよつんばい状態になって、映画「エイリアン」の幼虫、フェイスハガー


の如くな体制となり、カサカサカサッ!と群がるのであった。


もしくはいい表現が見つからないのだが


ほら、あの楳図かず夫の漂流教室に出てくる「未来人」の顔だけが普通の人間になった・・・みたいな。


っていったらわかるだろうか。(余計わからなくなったかもしれないが、柔軟すぎる体の人間たちといったらいいのか)


「うっ!なんちゅう体の柔らかさだ!ホントの蜘蛛じゃないのか?!」


こいつら、普通じゃない。テルヒコは直感した。自分の常識が通用する集団ではない。


「我々の幻術に科学技術が融合すれば、世界は八咫烏陰陽道、そして裏天皇のものになる!(男たち)」


よもや青年には理解できないその使命に心酔する、彼らの姿は不気味を通り越して、


ここが日常の延長であることを信じるわけにはいかない、そんな本能へと青年の心理を持っていった。


マユがこうなったのも。さっきの男たちの集団といい


「こ、これは呪いのちからなのか?!(テルヒコ)」


呪いの力により、自らを変貌させても生き延びてきた能力者集団、それが隠密となり。


時には伊賀忍者、陰陽道となって、結果的にはここにいるこいつらとして脈々と受け継がれてる・・・


葛城地域の人々は、往古より呪術にたけ、独自の王朝または文化を形成していたという


噂さえあると聞いたことがある。果たしてそれは誠か、それとも


自分がやつら組織の口車に載せられているかテルヒコには把握できないでいた。


それも当然といえば当然なのだが。


彼の脳みそでそれを全否定しようが、いるものはいるのである。


ワカヒコは一瞬で瞬間移動し、テルヒコの眼の前に来ていた。彼は男同士なのに、何やら気色悪く顔を紅潮させている。一種のヘンタイか?!


そうテルヒコはドン引きしたがつかの間「逢いたかったよぉオ・・・・・・・そのカオどーにかならないかな。どうして君なの?(ワカヒコ)」


ドガぁあっ!


強烈な膝がテルヒコのみぞおちをとらえて離さなかった。


こ、この・・・・・・・・・テルヒコは心の中で自分の不覚を恥じ、反撃に出た。


「こ、こいつ・・・・・・(テルヒコ)」


「格闘術でも僕たちは仕事でやってるんだからね。君みたいなただの人間とは違うよ。間接全部外してあげてもいいよ。(ワカヒコ)」


数分間ぼこぼこにリンチされるテルヒコ。だがその時一瞬のスキをついて、ワカヒコの金的を手刀で突きあげるのだった。


「!!!!!!!(ワカヒコ)」


「それでもお前、戦闘のプロかよぉお!(テルヒコ)」


喧嘩などしたことの全くないテルヒコだったが、全力で力の限りワカヒコに反撃してゆく。


力のない彼だったが、驚くほどに光の速さでワカヒコの動きをとらえてゆく。普通の人間ではできないスピードに達してゆくことに


驚きを覚えてしまう。


「ふふっ、いいじゃない。僕と君は、出会うべきだったんだ・・・・・・・・・・・・僕もそれなら本気でいくよ。あのブスなんてほっとこうよ!

二人で愛し合おう!わかりあおう!(ワカヒコ)」


笑顔でうれしそうに微笑んだワカヒコは、先ほどの呪符を自分に向けた。


するとおどろくことに、彼の角は黒に変色し、彼の背中から、漆黒の天使のような、悪魔のごとき羽が生え空高く


その実体は飛翔しはじめたからである。


「僕は堕天した神、ルシファー。牛頭天皇様の護符を使用する権限を上層部から与えられているのさぁあ!(ワカヒコ)」


「牛の神だと?!(テルヒコ)」


ワカヒコの周辺に即座に体制をなした蜘蛛男、ガスマスクの人間たちによる一団は、まさしく魑魅魍魎という雰囲気を


かもしだしていた。集団と個人。不利は眼に見えていた。


「その通り!我々は世界中のすべての産業から霊術に至るまで、世界のすべてを支配掌握する秦一族!


物部の末裔なり!」


物部氏とは、一般的には天孫饒速日命(にぎはやひのみこと)の末裔といわれている。


物部は、モノ。すなわちありとあらゆる物質、森羅万象の事物や人間が生きてゆくうえで必ず必要なすべてのモノやコトを


司る氏族であることの意であった。確かにその名の通り彼らは技術者集団であった。


またある説には、聖書の民の信仰で、「牛=悪魔」を拝んではならないという禁を破って、それらを止められた


一族であったとする見方もあるとか何とか。秦一族は京都に拠点を持ち、陰陽師の中核となった。


彼らが信仰する神は、聖書では悪魔(ルシファー)と呼ばれた牛頭天皇・・・


牛の神である。一般的に牛頭天皇とはスサノヲノミコトのことといわれるが


同一であるとも、はたまた別の神であるという説もある。


のちの時代に陰陽師らにより無理矢理に習合された可能性が強いともいわれている。


これも偶然か、それとも意図的なものであったか。


彼らは果たして、悪魔に魂を売った一族なのであろうか。


秦氏とは、秦の始皇帝の子孫という見方もあるという。


それについてテルヒコは最低の知識はあるつもりであった。


だが、自分の先祖のことを知っていた分


根源的にもテルヒコも似たようなもの。という自覚であった。


「俺も、鳥の末裔(カモ族)なんだよぉおおおおおおおおおおお!(テルヒコ)」


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