ニートと 空気を読む だけ の人々
つれづれなるままにひぐらし
ニートとは
Not in Education, Employment or Trainingの略語
十五歳から三十四歳までの、就業をせず、職業訓練も受けていない者を指す。
なお、通学・家事を行っているものは
この範囲に含まれない。
1999年にイギリスの政府機関が使い始め
現代世相の影響かすっかり市民権を得た単語である。
ある日youtubeにある動画が投稿された。
再生を始めると
覆面をつけ、サングラスをつけ
髪は金髪の人物があらわれた
肩幅からして男性であるらしい
動きから若者であることが伺える
どうやら机の上に
カメラを置き撮影しているようだ。
青年は証明写真のようにバストアップで映っていた。
ほかには
よくある白い壁紙と
本棚、細い金属で作られたラックが見える。
あきらかに青年の自室だった
青年が大人と子供の間のような
だがみずみずしさのない気だるげな声で話し始める。
「こんにちは
またおちてしまいました。
いったい俺のなにが悪いっていうのか
資格だってがんばってとったし
一般常識だってちゃんともってるのにな」
どうやら青年は就職活動中であるらしい
「というかあんだけ面接うけさせて
面接官の受けもよかったのになんでおとすかな
あーーーーーもう
交通費ねえよ遠いんだよ東京!くそが」
青年の愚痴が続く、話していくうちにヒートアップしてしまったのか
だんだんと口調が荒々しくなっていった
「だいたいなんであんなくたびれたおっさんに
おれの何がわかるっつーんだよ!はげてんだよ頭!
みっともなくバーコードにしてんじゃねえよ!
あーーーーひっぱりたい!
ブチブチってやってやりたい
ひいいいいいいとか言わせてやりたいーーーーー」
熱が入っているからか ところどころ"てにおは"も狂いはじめている
ひとしきり大きな声でわめいた後
青年は机に突っ伏しうめきだす。
「ううううううう、親は帰って来いていうし
姉ちゃんは結婚するしぃぃぃ、金はないし家賃がああああ」
「おれがなにしたっつーんんだよおおおおおおお」
青年はひとしきり愚痴を言った後、泣き出した。
これが
最初の動画
何の変哲もない
たくさんいる若者の
何の意味もない
だれかに聞いてもらいたかっただけの愚痴
その後、青年は
就職難民を引き連れ、堕落した勤め人を襲撃し
家族も会社も老人も警察も政治家も振り切って
独立国の王として君臨する。
ある人は彼を救世主と呼び
ある人は彼を迷惑な暴走族と呼び
ある人は彼を社会が生み出した怪物と呼んだ
これはふとした拍子にレールから
滑り落ちた才能のない青年がつむぎだす
怒りと悲しみと破壊と創造の物語