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就職先、親父の実家  作者: イダイラ
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到着してしまった。

 テレビ業界、国際関係の機関などを含め15個くらいは受けたから、どこかの内定は取れると思っていた。決して余裕をこいていた訳ではなく、むしろ死ぬ気で内定を奪い取ってやるぐらいの気持ちで就活を戦ってきた。


「○○」大学から参りました、野図丸 貴大と申します」という言葉に心を開いてくれた企業は残念ながらなかった。

 神はなんて残酷なことをするのだろうか、

「ウソだろっ!オイ!」

「ここで若者の人生が終わってしまうかもしれないですよー」

と心のなかで呪文のように神様と面接官に呪いをかけた。


 一週間程、多少落ち込みながらも卒論を進めつつ時を過ごした。数日後、とある企業から内定通知が届た。その企業とは唯一親父が、「これだけは受けておきなさい!」と大いなる希望と期待と夢を込めて息子に薦めてきたトコであった。

 私自身さらさら行く気が無く、どうせ他の企業で働くから受けるだけ受けてやるよと心の表面で思いながらエントリーシートを提出し、筆記試験、面接、合格とスムーズに進んでしまった。


 そもそもなぜ親父がこんな田舎の企業に俺を就職させたかったのかというと、ここは親父の故郷であり、老後には家族一緒に先祖が残してくれた家や畑で田舎暮らしを満喫しようとしているからである。

私自身も小学生の夏休みに、良く遊びに行った場所であり大自然の中でザリガニやカブトムシを採ったのはサイコーに楽しかった記憶として残っている。

 しかし10年の時を経て私にも

「やりたいことをやる」「ワクワクすることをやる」

「ロマンを求めて偉大なる航路へと進みたい」などと多くの野望や信念が生まれた。

 かっこよくいえば「俺の居場所はここじゃない。俺は決して人生に悔いは残さない」みたいな感じだ。





しかし他に内定をもらった企業は無い。

現実はこんなもんだ。

 

 就職せずに世界へ飛び出し「俺は俺の道を行くぜ!」という度胸もないまま、結局私は横浜を飛び出して親父の田舎へ一人暮らしを始める事になった。


 卒業旅行にも行かずに植木屋さんで一心不乱に働いて購入した10年落ちのタントに乗り、私は親父の田舎へと出発した。日給1万円で親方がチェーンソーで切った大木を永遠にトラックに運んだことや地元の友達との思い出などに心を揺られながら5時間程で到着した。


約30分前に県内最後と表記してあるコンビニを通過して、親父の田舎に到着した

トトロの映画にでてきそうな7LDKの、親父の田舎に到着した

保育園の2年間しか住んでおらず友達もいない、親父の田舎に到着した

5年前にこの地区に唯一あった小学校が閉校してしまった、親父の田舎に到着した

友達はおじぃやおばぁ、親戚だけの、親父の田舎に到着した



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