8話
気合を入れていると龍舎から青い作業着を来た一人の金髪の青年がやって来た。
「お疲れさまっス、アンナ先生!もしかしてその立派な龍をつれた人が……」
「はい。彼が新しい実技教員となっていただく冒険者のカイトさんです」
「俺はこの学校で働くブリーダーのガンチっス!ガンチって気軽に呼んでくださいっス!
この学校の卒業生なんで龍についてや、困ったことがあったら相談してくださいっスね!カイト先生、よろしくっス!!」
「よろしく、ガンチ。何かあったら相談させてもらおうよ」
「了解っス!」
金髪の青年ガンチは人懐っこい笑みを浮かべて手を差し出してきた。
そんな彼に俺も手を出して固い握手をした。
人柄も良さそうだし、同じブリーダー職だから親近感も湧く。
今後何かあったら相談させてもらおう。
そして同じ男同士だ、可愛い女子や女性教師についても詳しく聞かせてもらおうじゃないか。
期待しているよガンチくん。
「それではバオとライオネルくんをよろしくお願いしますね、ガンチくん」
「はいっス!任せてくださいっス!」
「じゃあ、カイトさん。校長室まで案内しますので付いてきてください」
ライオネルをガンチに預けて城のような巨大な学園と足を踏み入れる。
石畳の床にレンガの壁。
かなり年季の入った校舎だ。
パンフレットだと大昔に軍人の育成施設だったらしいから歴史的価値も
かなり高いのかも知れない。
校則とか、かなり厳しいのではないだろうか?
そんな事を考えながらアンナさんに付いて行き、石階段を登る。
すると……。
廊下を歩く生徒達が目に映る。
男子は茶色いズボンに茶色いシャツその上に白いベスト着ておりネクタイをしている。
女子はなんと男子と同じ色である茶色のミニスカートに黒いニーソックス!!
そして茶色いシャツに白いベストに首元にはリボンをつけている。
この女子の制服を考えた奴は中々にいい趣味をしているな。
しかし……何で生徒達は窓際に集まっているんだ?
外を見ているようだが何かの授業か?
「すみません、カイトさん!ちょっと見てきます」
俺にそういうとかなり焦った様子で窓際の生徒達を押しのけていくアンナさん。
もしかしたらあまりよい状況ではないのかもしれない。
「またですか!?」
窓際に到達し何かを見たのだろう。
アンナさんの絶叫のような声が聞こえる。
生徒達を再びかき分けて出てくるアンナさん。
「カイトさんはここで待っていてください!私はちょっと生徒を止めきますので!!」
そういうとダッシュで走り去っていくアンナさん。
一体何を見たのだろうか。
動くなと言われたがどうしても気になる。
女子生徒に気を付けながら、アンナさんのように生徒達をかき分け窓際へ
到達する。
そして、窓の外を見ると二頭のドラゴンが空中で激しくぶつかり合うように戦っていた。
もしかしてドラゴンを使ったケンカか?
ドラゴンは二頭とも翼を持つ翼龍で一頭はライオネルと同じ白い色をしたドラゴンともう一頭は緑色のドラゴンだ。
白いドラゴンはバランスのとれた体系をしているからライオネルと同じバランス型のドラゴンのようだが緑のほうは腕が太い。
おそらく緑は近接型のドラゴンだな。
乗っている人間はドラゴンたちが激しく動いているせいでよく見えない。
そして状況は変わった。
白いドラゴンが距離を取り、相手のドラゴンに対して
光属性だと思われるビームのようなブレスを吐いたのだ!
おいおい!!さすがにやりすぎじゃないか?
白いドラゴンのブレスに緑のドラゴンは腕をクロスすることで耐えたみたいだが
衝撃を殺すことは出来なかったようで体勢が崩れ、背中から乗っていたであろう
人間が落ちる。
「きゃーーー!!」
「やべぇ!!ドラゴンから落ちたぞ!!」
予想外の展開だったのか、騒ぎ出す生徒達。
このまま落ちたら死ぬぞ!!
どうする?どうすればいい!?
もしここにライオネルが居たら…一瞬で!!?
一瞬?
そうだ!!アレがあった!!
「『サモン』!!」
俺は窓に脚をかけて窓の外へと勢いよく飛び出し、相棒を呼ぶための
魔法であるサモンを唱えた。
サモンとはドラゴンファンタジアで相棒のドラゴンと距離が離れてしまった時に
プレイヤーの元へと召喚する魔法である。
魔法のレベルが高ければ高いほど遠くに居るドラゴンを呼び出せることが
出来るのだ。
俺のレベルはMAXだ、たとえ何所にいてもライオネルを呼び出すことが
出来る。
足元に魔法陣が一瞬だけ展開され、直ぐ下にライオネルが魔法陣と入れ替わるようにして姿を現す。
「ライオネル!!全速力で落ちている人間を拾いに行くぞ!!」
「ガァアア!!」
俺の指示に従い全速力で空を閃光のように翔けるライオネル。
現実になって初めてだす全速力だが、問題ない。
おそらく騎乗スキルの恩恵だろう。
瞬く間にライオネルは落ちてくる人間をその腕で捕まえた。
ケガはしているかもしれないが死ぬよりかマシなので許してもらいたい。
女の子だったらフラグが立つのだろうか?
若干、淡い希望を持ちながらライオネルの速度を緩めて地上に着陸する。
「ありがとうライオネル。よく頑張ったな」
「グルルル」
頑張ってくれたライオネルを労い、ライオネルがキャッチした人物を見るために
ライオネルの肩に移動する。
さて、一体どんな人間が振ってきたのやら……。
肩によじ登り、ライオネルの掴んでいる人物を見てみると……。
なんと……涙と鼻水で薄汚れ、気絶した茶色いズボンとロングコートを来た男だった。
世界のバカヤロウ!
見事に俺の淡い期待は粉々にぶち壊れた。
「ほう、貴様。なかなかに立派な龍を従えているな。
それに落下中のそのクズを捕らえるという巧みな操作……貴様、何者だ?」
「何者だ?じゃないだろう!!コイツはもう少しで死ぬ所だったんだぞ!!」
バサァと大きな羽音を白いドラゴンがライオネルの前に舞い降り、騎乗している
であろう人間の情け容赦のない声に腹が立って、声の主に怒鳴り返した。
そしてその姿を見て、怒りを忘れてしまうほどに俺は驚いた。
声の主は、女だった。
金髪のストレートロングに龍を思わせる鋭く、青い瞳そして彼女の格好はアンナさんと同じ体のラインがよく分かる服装で胸は
アンナさんにも勝る形のよい、ナイスなおっぱいだった。
しかし、残念な事に性格はアンナさんと違ってかなりきつそうだ。
「ふん!ケンカを売ってきたのはそこのアホだ。
女を胸でしか見ないそんなクズを処断して何が悪い!」
「……」
彼女の言葉に何も言い返せない俺。
うん、男が悪い。
何も言い返せねぇよ。
セクハラをした挙句にケンカを売って負けた。
完全にこのアホが悪いが……。
「いやいや、いくらクズ野郎でも殺したら犯罪だろ?」
「問題ない。そこのクズと決闘証明書に血判を押してある。
もし、仮にそこのアホが死んでも、事故として処理される」
やべぇ…何このやるせない気持ち。
助けたのにすげぇ損した気分だ。
それにしても……うん、気持ちは分かるぞ。
あんなステキな果実を見たらバイオ引力的な感じて視線が吸い寄せられるよな。
ちょっとだけ、お前の気持ちは分かるよ。
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