5話
焦げ臭い臭いに耐えながら、討伐部位となるモンスター達の
耳や角を手に入れた俺はアイテムボックスに部位をしまって
ホクホク顔で冒険者ギルドへと向かった。
そして……。
「では、鑑定が終わり次第
新しいギルド証明書を発行しますお預かりしますので少々お待ちください。」
「はい、わかりました」
特に何もなかった。
いや、大量の下位モンスターと上位モンスターの部位を持ってきたことで
Dランクに一気にランクアップしたんだが……反応が普通だった。
どこかの小説や漫画の主人公なら、「上位クラスのモンスターを新人が倒すなんて!!」とか受付譲に言われて、周りからも「アイツ何者だ?」とヒソヒソ話をされたり美人な受付嬢とフラグが立ったり、美人な女冒険者に目を付けられて話しかけられたりしてフラグがビンビンにたったりするのではないかと少なからずラブコメみたいな展開を期待していたワケですよ。
俺も男ですから。
しかし現実にそんな事は起こらなかった。
目の前の受付譲はただ……。
「さすが上位クラスの翼龍と契約した方ですね。これからも期待しています」
の、一言で終了。
それ以降は鑑定やらランクアップの手続きなどの業務を淡々とこなしていた。
周りの連中も「アイツ、翼龍持ちか……」の言葉がちらほら出るだけだった。
うん、この世界は確実にゲームじゃない。
俺がよく知っている甘くない現実だ……。
「カイト様。お待たせしました。
報奨金の三万六千七百GとDランクの証明書となります」
「ありがとうございます」
金の硬貨であるGがいっぱい入った布袋と新しく発行された証明書を受付譲から
受け取る。
証明書を確認するが表示されているランクが変更されただけで特に変わりはない。
それにしても、一日で高級宿に一ヶ月滞在できる金額を稼いでしまうとは……。
「後、Dランクにランクアップされたことで今後龍舎と契約する場合
割引サービスと二階にある中位・上位モンスターの資料を閲覧できるようになりました
ので討伐以来の際にはご利用ください。またのお越しをお待ちしております」
大金の入った袋と新たに発行された証明書をアイテムボックスに収納し、ギルドを出る。
これまでの人生で大金を所持した経験がなかったから頭になかったが俺って今、凄い金持ちなんだよな。
ゲーム時代、どんなカスアイテムも売ってもしもの時の為に蓄え、どれくらい貯まったのか今ではメニュー画面で確認できなくなった大量のG。
三万程度で高級宿に一ヶ月も泊まれるならライオネルと一生遊んで生活することも可能ではないだろうか?
ハーレム…酒池肉林……シャンパンタワー……おっぱいバレー…
おっぱいフェイスティバル。
おれの理想の城……。
「あの……」
そのためにはってなんだ?
後方から声を掛けられたので妄想を中断し、振り返る。
「Dランク冒険者になったカイトさんですね?少しお話があります」
振り返ると目の前に居たのはレディースのスーツを着こなす赤いメガネをかけ、
青い髪をアップにまとめた巨乳美女だった。
☆☆☆
巨乳美女に誘われるまま、近くのカフェのテーブルに向き合うようにして座る
俺と美女。
なんだ?キャッチセールスか?
このあと怖いお兄さん達とチェンジして怪しい壺を購入させられるのか?
思わずあの大きく実った果実に誘われて付いてきてしまったが今は後悔を
している。
「オリヴィアン王国が設立した龍騎士を育成する専門学園『オリヴィアン学園』に勤務しているアンナ・ラヴィーと申します」
「Dランク冒険者のカイトです」
サラリーマン時代の習性か、美女の自己紹介につられ彼女に自己紹介する俺。
って龍騎士の専門学校?
なんでそんな所で働いている人が俺に用があるんだ?
まるで接点のない学校の名前が出て来て疑問に思う。
「突然で申し訳ありませんが、私はカイトさんをスカウトしに来たのです」
「スカウトですか?」
「はい。カイトさんには是非、我が校の実技講師をお願いしたいのです」
真剣な表情で俺に頼み込むアンナさん。
よっぽど冒険者に講師を頼むって事はそれほど切羽詰っているのだろう。
しかし、学校が冒険者に頼むほど教員不足になるってどうゆう状態だ?
疑問に思った俺は彼女に何故、俺に頼むのかを質問した。
「そうですね。カイトさんには説明する必要がありますね。
じつは……」
彼女の口から語られる理由。
それは……帝国にある龍騎士学校の引き抜きが原因らしい。
オリヴィアン王国大陸一番の龍の生息地であり、優秀な龍騎士が誕生しやすい国であるのだが、一番の生息地であるが故に土地を開発することが難しく経済が滞っているらしい。
周りの国は開発でどんどん潤っていくのに対し、焦りを感じた国は国の目玉である優秀な龍騎士の質を向上させる為に教育に力を入れてきたそうだ。
そしてそれは成功し、ドラゴン武道際にドラゴンレース、ドラゴンフラッグなど
定期的に行われる大会で優秀な成績を収めて来た成果もあり、有名選手
の出身国であるオリヴィアン王国の観光客は増加、出身校であるオリヴィアン学園も選手達に憧れた少年少女達が増えたことで生徒数も増加したらしい。
選手達のグッズも売れて国の経済は右肩上がりだったのだが、他国の女と金などのあらゆる策略によりじわじわと優秀な選手と講師が引き抜かれて
しまったらしい。
慌てて龍騎士と実技講師の給料アップなど引き抜き対策を講じてきたのだが
もう既に時は遅かった。
優秀な人材はほぼ引き抜かれてしまったのである。
そこで、学園と国は藁にも縋る思いで優秀な冒険者に頼ることに
したらしいのだ。
しかしだ、これが中々上手くいかない。
学園には平民のほかに沢山の貴族の少年少女たちが通っているのだ。
平民が多い冒険者達は、面倒を避けるためにアンナさん達教員の勧誘を拒否。
貴族で冒険者をしている人に頼んだりしたらしいのだが副業はしないと
断られてしまったらしい。
色々な冒険者ギルドを周り優秀な人や上位クラスである翼龍と契約した冒険者に声を掛けるも全滅し、最後の勧誘にここギルドに訪れた時、大量のモンスター部位を持ちしかも周りの人間から翼龍持ちと言われている俺に目を付けたということらしい。
うん確かに、貴族のボンボンを相手にするのはめんどくさそうだし
講師って聞くと自由をしばられそうな感じがして嫌だな……。
彼女には悪いけど断らせてもらおう。
「カイトさんお願いします!もう我々には後がないんです!
どんな条件でも飲みますので、どうか我が校の実技講師になってください」
説明が終わると、断ろうと決意した俺に必死に頭を下げて頼み込んでくるアンナさん。
そして、頭を下げると同時にテーブルに押し付けられ今にも零れ落ちそうな
わがままな果実。
俺は……。
「わかりました。引き受けましょう」
脊髄反射で彼女の頼みを引き受けていた。
……あれ?
感想・評価などをお待ちしております。