カメラ
斉藤さんに相談してから数日、自分が神田さんに恋煩いと診断されたのだが、よくよく考えてみると僕が神田さんを可愛いと思うことを暴露しただけで根本的に何の解決もなっていないような気がする。
どうしようもないといってしまえばそれまでで、結局のところ神田さんに告白しないと結局は悶々とした日々を送ることになるが告白ってどうすりゃいいのさと思うということは流石にないが、告白して関係が壊れたらと思うとどうしても一歩踏み込むことができない。
うん世のカップルはこういった事を踏み越えて言っていると思うと全く持ってすごいエネルギーの持ち主たちだと思う。
「どうかしましたか恋神さま」
「いや なんでもないよそれでこのカメラが斉藤さんから預かったもの?」
「はい」
「なんの変哲もないカメラに見えるけどね」
今じゃ見ることの少なくなった古めかしいカメラにしかみえない、僕が来る前にどうやら恋愛相談をしにきていたらしく、それに関係するものらしいのだがどうみてもただのカメラにしか見えてこない。
「未来の彼氏か彼女が写りこむそうなんです」
「なんで斉藤さんの恋愛相談は怪談じみているか現実離れしていること多いんだろうね」
「さぁそれはわかりません」
「それでどうしろと?」
「まぁ露天商はからかったそうで実際には写らなかったのが妙に悔しいらしく、斉藤さんは恋神さまの神通力でどうにかならないかと」
そりゃあそうだよ、ただのカメラだし何も違和感は感じないんだけどそれを写せるようになるかといわれてもねぇ、正直何もできないというのが本音なのだが、恋神さまやっていらい僕自身にご利益はないのだが周りには多少のご利益があることが多いらしい。
「まぁ 願えばいいのかな?」
「そうですねその後に実際に取ってみるのが一番かと思いますよ」
そういうと神田さんはなぜか自分の最近買い換えた携帯のカメラ機能を起動させていた。
「何しているの?」
「検証してみようかとそのカメラで撮ったときと私の携帯でとった時の違いがあれば成功でしょう」
「あぁなるほど」
違いを比べてみてもしなにか写っていれば堂々と渡せるし写っていなければごめんなさいということで、ご勘弁願おう。
「まぁということで笑ってください」
いきなりとられたので微妙な笑顔になっている可能性があるのだがまぁ検証用なのでそれはかまわないだろう、続いて写りますようにと願いを5分ほどこめて神田さんに渡してもう一枚写真を撮ってもらう。
「結果は現像してからですね」
「そうだね」
なにせ少し古いカメラなのでフィルムを現像に出す必要があったのだが、それは神田さんがやってくれるというのでお言葉に甘えることにした。
「でも毎回思うけれどこれ恋神さまの仕事なのかね」
「実際写りこむというのは恋占いみたいなものなんでしょうね」
「まぁ露天商の人もそういった面につけこんで売っていたんだろうしね」
未来の恋人がどんな人なのか?今の思い人なのかそれとも別の人なのかそういった事が気になってしまう人もいるんだろな。
僕だったらどうだろうかと、自問してみるが自答はそんな未来とか考える余裕がないとしか答えようがない、今でさえ神田さんのことで悩んでいるのに未来のことなんて考えている余裕がないんだから。
「恋神さまどうかしましたか?急に黙り込んで」
「えっいや、写っていなかったときの言い訳考えていた」
「まぁ考えなくても大丈夫だと思いますよ」
「そう?」
「カップルで写真とっていればそれは未来の恋人同士なんですから」
「あぁ」
まぁ確かにカップルで写真とれば露天商のいうように未来の彼氏や彼女が写りこんでいるといえなくもないわけだ。
「なるほど全くの嘘ではないのか」
「そういうことです」
それはそれで、現実的ではあるけれど一回くらい祈祷したんだから誰かの未来の彼氏や彼女を写すことができますようにと改めて祈りなおした。