釘を刺す
「いやぁ2人きりというのは久しぶりですねぇ」
「何か用?」
「いやだなぁ遊びに来たんですよ」
わかっててきたのではないだろうかと勘繰りたくなるように、斉藤さんが部室にやってきた。
何も知らない人からみれば、いつものように明るい後輩と端からは見えるだろうが、私には彼女は端々にあきらかに何かの魂胆がすけてみるようないやな笑みにみえてしょうがない、いやこれも、私が彼女によくない感情を抱いているからそう見えるのかもしれない。
何せ私は彼女をあまり好ましく思っていないのはこうみえて敏い斉藤さんにも伝わっているのかもしれない。
「まぁ邪険にしないでくださいよ、ほら女の子同士仲良くやりましょうよ」
「女の子同士ねぇ」
「いやそういう趣味はないですよ勘違いしないでくださいあくまでも友達の範囲です禁断とかではないです」
何を考えたらそういった反応が返ってくるのかさっぱりわからないけれど、この後輩と禁断の恋に走るという選択肢は私にはなかった。
「私だってあなたはいやよ」
「あれ?予想外に辛辣な答えです」
「どういった予想していたのよ」
「いやあれ?おかしいな顔を染めて小声でバカとつぶやいてくれるような感じですかね」
「それ誰?」
「いやいや、まぁほらなにせ最近奥居先輩から神田さんがかわいすぎてヤバイという話を聞かされていたものですからね」
どうやら恋神さまはバカなようだ、そんな話をこの口が軽そうな後輩として私に伝わるということを考慮しなかったのだろうか、うかつすぎるし、見る目が節穴もしくは彼の目にはフィルターでもかかっているのか、私がかわいいだなんと本当にバカなんだから。
「可愛くないということがわかったかしら」
「先輩のまえだけ可愛くしているとかですか?」
「そんな事はしてないわよ」
「ですよねぇどう見てもそういうタイプじゃなさそうですし」
「それで私をからかいにきたのかしら」
さっきからどうもからかって遊んでいるようにしか思えず気分が苛立ってしょうがない。
「まぁそうですね、奥居先輩の悶えっぷりが面白かったのでつい神田先輩はどうだろうと思いましてね」
「あなた本当にいやな子ね」
「まっまっそこはほら愛嬌でごまかしてますから奥居先輩にはばれてませんよ」
「そう」
やんわりと忠告したほうがいいのか、いや告げ口しているようで結局は自力で気づいてもらうしかないような気もするが。
「まぁまぁでもほら褒められて悪いきはしないんでしょ」
「そうね」
「ただ、あの様子だとちらちら授業中みていますね確実ですまぁともすれば、神田先輩もちらちら見ていたりするんですか?」
「しないわよ」
「じゃあ盗撮とかそういった感じに走るんですか?」
「そっちのほうがもっとしないわ」
それはもはや犯罪の域になりそうなのだけれども、まぁ真面目な人が写真を盗撮、ストーカーとかに走りそうとかそんな感じなのだろう、人を犯罪予備軍扱いにするとはほんとうにいやな子だ。
「まぁいいですけどね、ところで携帯かえましたよね?それ写真とかたくさんきれいに保存できるものですよね」
「何が言いたいの」
「いや別になんでもないですよそうだ、アドレス交換します?」
このわかっています、そういうことにしておきますからという目線がうっとうしいのだけれど、とりあえずこの後輩に心を許すことはしないと、そうきめた。