正論
「やばい」
「あぁ懐かしいですね佐賀県でしたっけ」
「それはがばいって違うよやばいんだよ」
あの祭りから数日たったいまでもあの夜のことを思い出しては悶々としていてとくに祭りの夜に2人きりで星をみて、ちらちらとみてしまった横顔とか
脳内が僕に断ることなくあの横顔とか音楽室での吐息とかを再生したり、授業中にも気がついたら見ているということも起こり始めている。
後輩は僕が相談料としてだしたややプレミアムなコンビ二のスイーツをおいしそうに食べて、人の話を利いているかどうか微妙な回答を返してくれた
「ふむまぁなんとなく察しますが、なにがやばいんですか?」
「神田さん」
「あぁ その手のさかっている話ならあまり聞きたくはないんですが」
「さかってはいねぇよ」
「いや先ほどから佐賀の話をしているじゃないですか」
「だからそれはがばいって僕が言っていない」
「ですよねぇ先輩はヤバイしか言っていませんものね」
「いや、まぁ本当にヤバイんだって」
「まぁ神田さんがヤバイって何か暴力でもふるわれたんですか」
「いやそういうヤバイでもないんだが」
まぁある意味暴力的に僕の脳内に現れてくるので、あながち間違ってもいないのだけれども、とにかくあの祭り以来神田さんを妙に意識してしまうのがつらい。
「じゃあなんですか」
「その最近神田さんがかわいすぎてヤバイ つらい」
「それを失恋した私にいいますか」
「いや まぁ悪いとは思うけど」
「先輩がふったわけでもありませんから気にしないんですけれどまぁまさに3日ほどの恋でしたが」
お祭りのときの彼とは盛り上がったらしいが、そのあと自然消滅となった、斉藤さんがいうにはよくある話らしいが、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
「まぁそのご利益のない恋神でごめんね」
「それはこっちの話ですし、まぁいいんじゃないですかモンモン先輩」
「なにかのゆるキャラにいそうだよね」
「すでに恋神というゆるキャラですけどね」
「あぁうんそうだね」
そりゃあご利益もありがたみもない恋神さまが僕なので否定はできないんだけれど、モンモン先輩というのはそれに輪をかけて駄目な感じになっている。
「さて話を戻しますがそれは恋ですね」
「あぁ?うん?どうなんだろう」
アイドルとかそういった感じの憧憬ににているのかもしれないし、恋なのかもしれないがそれはわからないので素直に答えることにする、
「よくわからないね」
「まぁ明確な基準ってものがあるわけではないですしね、まぁ今の先輩は恋煩いでいいんじゃないですか」
「恋なのかな」
「恋ですよ先輩」
やけに断定されると、そうかなぁと思う気持ちと少しばかり恋と認めるのが怖いためちょっとだけ否定してみる。
「勘違いってこともあるかもよ、憧れかもしれないしあの祭りの熱気がまださめていないだけかもしれないし」
やれやれわかっていませんという外人かっていうぐらいでしか見たことのない大げさなジェスチャーで後輩の講義は続いていく。
「神田先輩にお熱ってことで言いと思いますけど」
「君は時々古い言葉つかうよね」
今時、お熱なんて言い回しはしないと思うけれど彼女は僕の突込みを気にすることなく続けていった。
「憧れは実ることはありませんが恋は実ることがあるってのが私の好きな言葉でしてね」
「あぁ聞いたことあるかなぁ」
「私の場合実ったら恋で実らなかったら失恋って事で割り切って育てますけどね」
「あぁそんな感じだね」
「まぁ私は実ってもそこから失恋もするので、実が上手く育たないんですけどね」
「自分でいうのそれ?」
自虐させてなんか申し訳ないので僕の分と買ったポテトチップスをさらに進呈する。
それを食べながら手についてしまった塩分をなめ取りながら斉藤さんは続けてくれる。
「まぁなんにせよ意識してしまうんだったら意識すればいいんですよって事です」
「そうなのかなぁ」
「それにですね先輩」
「ん?」
「女の子が可愛いくてなんか問題でもあるんですか?」
うん実に正論だった、確かに神田さんが可愛くても特に問題はなくむしろお礼を言いたいぐらいだった。
やはり名ばかりの恋神の僕と、目の前の後輩との神田さんの居ない部室での恋愛相談はこうして正論にて終わりをむかえたのだった。