舞台にあがりましょう
【私が恋神さまだ】
そう頭のわるそうな件名と、いたずらのメールが後輩から届きました、普段の私なら一笑にふすところですが、なぜかそれが現実だと分かります。
ともあれ、何故このタイミングでメールをワザワザ送ってきたのか、少々苛立ちを覚えます。
「斉藤さん、言いたいことがあるなら今いったらどうですか?」
「おや、忙しそうだったものですからメールなら好きなタイミングで伝えられるじゃないですか」
「忙しいのは恋神さまと全く連絡が取れない状況だからです」
「私の事ですか?」
ニヤニヤしながら、声をかけてくる彼女の頭につい手が出てしまった。
そんなに力をこめてはいないとはいえ、割と勢いが出たチョップは思いのほか痛かったのか、頭をさすっている斉藤さん。
「奥居君です」
「あははは、耳真っ赤ですよ神田先輩」
学園祭、当日の発表の前に急にいなくなってしまって、そうでなくてもここ最近はまともな会話やメールなどもできていない上に、練習が告白して以来ほとんどできていない状況で連絡が取れないという、そして三園さんも探しに言ったまま帰ってきていない、とてもまずい状況で、ふざけているのかメールで人をからかっている余裕のある後輩に頭がますます痛くなります。
「まぁまぁ間に合いますよ」
「そうだといいんですが」
「大丈夫ですって、いざとなったら二人で乗り切りましょう」
「それは私からしたら不安しかないですね」
そうですかぁといって、ニコニコ笑っている斉藤さんをみると、本当に苛立ちが募ってきます。
「まぁそんなに怒らなくてもいいじゃないですか、私が恋神さまなのがそんなに不満ですか?」
「不満というよりなにかイラってきているわね」
「それはそれで、傷つきますよ」
「そう、日ごろの行いって大事よね」
こうやって人の神経を逆撫でするような性格の後輩が、まさか本当の恋神さまだったなんて色々お告げうけてやらされた事を思うとイラっときてしまう。
「恋神さまとして色々やってくれましたね」
「まぁまぁそのおかげで、奥居先輩に告白できたんんですからむしろ感謝してほしいくらいですよ」
「そうね、確かにそうかもしれないわね」
確かに、斉藤さんが色々やったおかげで、奥居君とより近づけたのだけれど、ただ色々と思いだして考えてみたら、もしかしたらこの後輩はただ私や奥居君そして、三園さん使って人の恋模様を楽しんで射るだけなんじゃないかとそう考えてしまい、それが案外正解でなくても近いような気がしてきます。
「まぁそろそろ舞台の幕があがりますね、どうしましょうか」
「とりあえず貴女もう一発殴っていいかしら」
「そりゃあまたずいぶんと物騒なかんがえですね」
後輩はわらいながら、どうぞと答えた。