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空虚の中に答えはあるか

 何も手が付かないというより、手をつけてもどうにもやった気がしないというのが正しいのだろう。


 自分が何かの空間に放りこまれて、作業しているような現実味の無いような感じが家に帰ってからもまとわりついている。


 僕がどうにかしなくちゃいけないと彼女、斉藤さんは言った。

 

 僕がどうにかできるといったら、三園さんと付き合うということだろうか、でもそれはなにか違うような気がするが、結局のところそれしか思いつかない。


 なにかやるべき事をさがしても、どうせやった気にならないのであるので、やる気が起きない。

 

 神田さんにもらった本をパラパラと文字を追うように目を動かす、好きな傾向の話であるはずなのだが、いつもより時間がかかっている。

 わざわざ、好きな傾向の話を選んでくれたのかなとか、余計な事を考えてしまって読みすることができなかった。


 もうひとまず、何か飲もうと本を閉じようとして栞を挟むとき、すこしだが香りがした。


 教室や、部室、学校ですれ違ったときに感じる神田さんの匂いに少し似ている気がする。 

 手作りといっていた栞からは神田さんの匂いがほんのりと移っていたのかもしれないとか少々脳の思考がおかしい状態になっている。

  

 斉藤さんの言葉が、頭をよぎってくる。

 

 好きなのは三園さん、神田さんのどちらかというアドバイス、もうきっと斉藤さんには分かっているから、あのアドバイスだったのだろう。

 

 どちらが好きかと問われたら、それは多分という不確かな言葉もつかないぐらいに神が好きだ。

 

 だから僕は神田さんの告白を受け入れるのだろう。


 ただそれは、三園さんの状況がないと考えた場合だ。

 

 告白されたのは嬉しいし、心ぐるしさえある。


 ただの文芸部としての先輩としてもなにもできないという状況で、恋神さまとしてもなにもできないという答えだけを三園さんに渡すというのは、どこか間違っているようにも思えてしまう。


 今の状況のように、何をしても空虚な後悔がしそうな気がして、そして三園さんになにかできる事がありそうで、その答えを見つけられれば前に進めそうな気がする。



  

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