僕は気づけない
鳥居高校では七夕祭りがあり、恋神さまの伝説もあるだろうが、普段なら下校時刻すぎたら帰らなければならないが七夕祭りのときだけは、申請すれば校内に泊まることも可能、ちなみに申請していなくても夜遅くまで学校公認で残れたりするのでカップルや仲のよい友達で遊ぶのは鳥居高校の伝統となっているため結構盛り上がるイベントだ。
そのイベントには恋神さまだからといって公式的に役割はない、せいぜい短冊に恋愛成就祈願の祈りをささげたぐらいだし、まぁそれがどれほど効力があるのがわからないけどその役目も終わった。
恋神さまの相談毎もふえるのかとおもったが、意外にもそのようなことはなく本番当日である今日まで文芸部長の仕事である会報の纏めのほうが忙しいぐらいだった。
まぁ、斉藤さんが文芸部にこなくなっていたからだと気づいた、恋神さま就任以降彼女以外から恋愛相談を持ちかけられることなんかなかったからだ。
「まぁ恋愛相談なんて君が持ってくるだけだったしね」
「開口一番それですか、いや女子高生は忙しいんですよ」
「テストの赤点補習昨日までだったよね?」
おそらくではあるがあんなに勉強をしている様子のなかった彼女だ、テストの結果が赤にまみれていても不思議ではない、彼女は目をそらしながら神田さんに声をかけていた。
「それは関係ないですよ、あっお久しぶりです神田先輩」
「そうね」
若干とげとか冷たさを感じさせてしまう声で答えた神田さんだが、別に斉藤さんと何かあったというわけではなくクラスメイト、先生など最近神田さんは誰に対しても不機嫌そうで優等生の部類にはいるので色々とストレスがたまってそのガス抜きが上手くいっていないのかもしれない。
こういうときに手助けができればいいのであろうが、上手く手助けできる自信などあるわけもなく腫れ物に触るようにそっとしている状況ではある。
「うーんこれは七夕祭り一緒に見ましょうというお誘いは無理そうですねぇ」
「あぁそうだねぇ誰かほかの友達でも誘ったら?」
僕も神田さんもそんなに遅くまで残る予定もない旨を伝えると心底がっかりしている、すこし悪い気がするので提案してみたが答えは芳しくなかった。
「いたら来てませんよ、友達みなラブラブですよ」
「それは何よりだね」
「ですね、周りを見ると恋せよ鳥居高生って感じですよね」
「まぁそれが鳥居高校の校風って所もあるからね」
「奥居先輩はそんな感じにはなってないみたいですね」
「そんな空気は一過性のものだと思うし色々と面倒なこともあるみたいだしそれを思うといいかなって」
「やだなぁ先輩高校2年生でさびしい人生まっしぐらですよ」
「さびしい人生って」
そこまでいわれなくても言いと思うんだが斉藤さんは身を乗り出して力説し、声が大きくなって神田さんも驚いてこちらを見ているので少しばかり声を落としてくれないかなぁとおもったが斉藤さんの声は力強くなるばかりだ。
「だってそうじゃないですか恋が面倒っていうのはあれですよ生きることが面倒ってことですよ」
「そこまでなの」
「そりゃそうですよ生きている限り遅かれ早かれ恋から逃れられませんよまぁ死んでからも恋する人はいますけどね」
「あぁあの幽霊のストーカーか」
「それほどまでに恋は魅力的なんでしょうね、まぁあれは怖かったですけどね先輩も恋をするべきです」
「そうだねぇ」
「まぁ気づかないうちに恋をしていることもあるみたいですし、近いうちにきっと先輩も恋のすばらしさがわかりますよ」
「だといいけどね、ところで斉藤さんは恋しないの?」
「恋に恋するお年頃ってやつです」
「あぁうんなんとなくわかった」
斉藤さんは楽しそうに部室から出て行った、本当に嵐のように賑やかな子である彼女がでたあとは、しばらく2人きりになったがお互い言葉を交わすこともなく神田さんの様子は相変わらず不機嫌のままだったがそれでも時間は過ぎていく。
校内放送では祭りの始まりを告げるアナウンスが流れていた。