それは一歩も動けていない
何か話でもしているのだろうか、散らばったティーカップの大きなかけらを集めながらぼんやりと考えてしまうのは、先程の三園さんからの告白。
今更ながらに告白されたことにドキドキして、顔が赤くなっているのか、顔が熱をもって痛い程だ。
告白には応えないといけないはずだけれど、今は出せる答えがない。
考えても分からない、それはそうだモテたこともなければ、浮いた話とは無縁だったし、告白された嬉しさはあるものの戸惑いもある。
三園さんが、元ロボットというのも衝撃的だったけれど、恋が終ったらロボットに戻るというのは、さらに戸惑いに拍車をかけているのかもしれない。
三園さんは、問いかけたのか?
どんな答でも覚悟して僕に告白したのか?
決めることが出来ずに、先延ばしをしたら、時間が解決してくれるのだろうか。
でもそれは解決ではなくて、放棄じゃないだろうか。
三園さんが告白してくれたのに、断る理由はない。
ただ断る理由がないからといって、受けとめるというのは、正しいのだろうか。
「恋神さま 危ないですよ」
「奥居先輩ボォーとしすぎです」
「あっごめん」
ふと気づくと、二人が部屋に戻ってきたらしく、ティーカップの欠片をもったままだったらしい、よく怪我をしなかったものだ。
二人は割れたカップの欠片を箒であつめて、新聞紙にくるんでいった、それをどこか遠くにあるように見ながら思い出す。
神田さんに女の子からの告白されたことがないと言った事、それに対して神田さんは祈ってくれた。
そして三園さんに、告白された。
ただなんにせよ女の子から告白された。
あの時の冗談とも本気だったのか区別が付かないような、曖昧で現実味のない願い
あの時の言葉は現実になった。
それなのに、三園さんから告白されて、恥ずかしくなって、身悶えて、結局答えを出せていない。
僕の願いは叶ったのか、それともただの偶然なのか分からないけれど、どちらにせよ告白されたなら、答えをださないといけない。
「奥居先輩 頑張ってくださいね」
斉藤さんの言葉にで思考がもどってくる。
どうやら、またボォーとしていたようだ。
そう、こう考えても仕方ない事と分かっているのに、同じ考えをぐるぐるとしている、結局僕は一歩も動けずにそこで立ち止まっているだけだ。
ただもう立ち止まれるような場所がいまはもう無くなってきている、それだけは分かっている。
「そうだね」
いまだ顔の赤みと痛みがとれないまま、つぶやくように答えるしかなかった。
何を頑張ればいいのかさっぱりだったが、今はそういうしかなかった。