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猫なで声

 あの一件から数日ったても、何も決めれずにいた。

それだけならば、まだ良いが、文化祭の練習にも気分も中々に乗らず、半ば惰性的に学校にきているような気がしていた。

 今日も、だれもいない部室に入っても、特に何をするわけではなくただ椅子に座っては、肘をつきながら壁にかかった時計を見ていた。


「何かお悩みのようですね奥居先輩」


 そんな状態だったので、声をかけられるまで斉藤さんが、いつ部室に入ってきたのかも気づかずにいた。


「あっ 斉藤さんうんちょっとね、それより三園さんは今日も休み?」


 少し、後ろを見てみると三園さんの姿は今日も見えず、返事は斉藤さんは首を横に振り、学校にきていない事をしめした。

 正直あの件をどうしたらいいのか決めかねていた、僕にとってはありがたくもあり、ただ心配でもある。


「それでどうかしたんですか? ここ数日おかしいですよ」


 言うべきか、言わないべきか悩んだが、結局数日前に恋神さまの役目として、三園さんの恋人になってほしいというものができてしまって、ここ数日悩んでいるという事を伝えた。


「全く練習に身が入っていないと思えば、そういう事でしたか」

「申し訳ない」

「いえ、そうですか カエデの家族がやっちゃたんですねぇ」

「やっちゃったって」

「まぁその所為でしょうが、カエデここ数日学校休んでいるのは」

「その所為って」

「奥居先輩の恋人となってと家族が頼んだ事が、恥ずかしすぎて、これないとかですかね」


 あぁ、なんかありえそうだ。

 緊張のしすぎで、倒れてそのまま体調でもくずしたのかもしれない。


「それより、奥居先輩も恋神さまとして大変ですねぇ」

「あぁうん」

「だからといって私と明日のデートがなくなるわけではないんですけどね」

「あぁそうですよねぇ」

「楽しみにしているんですからね これでも」


 明日の休日に、斉藤さんとのデートの練習がある、正直そちらは勘弁してほしいのだが、流石にそれは許してくれないみたいだ。


「それに、ラブレターの件とか解決していないんですよね」

「それもあったね」

「やっぱり忘れていましたか」

「そうだねぇ」


 文化祭当日に読むはずの、ラブレターはアレ以来手をつけておらず、その問題がある事も目をそむけていたみたいだ。


「うふふふ 忘れんぼうですね」


 急に猫なで声になり、人差し指で胸をつく、一体全体急にどうして、からかいはじめているのかは、分からないが、対応に困ってしまう。


「急にそういうノリやめてね」

「いやぁ面白いかと思いまして、神田先輩どうでしたか」


 いつの間に入ってきたのか、この光景をみて練習もせずにとあきれているのかもしれない。

神田さんは険しい目つきで、こちらを睨んでいた。


「あまり面白くはないわね」

「そうですか、うんうん、つまらないものはつまらない、面白くないのは面白くないと、はっきり言う事も時には大事ですねぇ」

「ニヤニヤしながら言われると、とても腹が立つのですが」

「はいはい、さて私は、今日はカエデの見舞いでもして帰ります」

「あぁじゃあ三園さんによろしくと伝えておいて」


 からかう事にあきたのか、斉藤さんは教室を出ようとしていた、ついでにお見舞いの言葉を伝えてくれるように、お願いしていたのだが、何を思ったのかモジモジと身体をくねらすように、うそ臭い態度と猫なで声でこたえてきた。


「えっ そういう告白めいた言葉は、自分でカエデにいってくださいよ」

「違う、お大事にねという意味で」

「わかっていますよ 冗談ですよ冗談」


 もしかしたら、少しあの件で、考えすぎていた僕を、斉藤さんは少しでも、和まそうとしていたのかもしれないが、ただなぜか、とても神田さんの視線が痛いので、結局なにかマイナスな効果になってしまっているような感じだけど。


「それでは明日のデートでまた会いましょう 奥居先輩」


 そして最後にもう一度、先程までのような甘えるような声で、わざとらしくいいながら、にこやかに微笑んだ斉藤さんは、部室から去っていた。


 


 



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