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お告げが聞こえません

 高校2年生になったある朝に私は天啓を受けた、鳥居高校に伝わる七不思議の恋神の巫女として恋神さまの現世での姿である奥居利一という男性徒が恋神として鳥居高校の恋愛を見守る使命をはたしていくようにとの旨のお告げをもらった。

 正直な話、疲れていると感じて寝なおそうとしたが何度寝なおそうとしても頭の中でお告げは続いている。

 私は文芸部に所属していて小説をよく読むが、さすがに自分がこんな状況に置かれると想像することはなかったので対処法がわからずともお告げはずっと続いてくる。


 ため息とともに受け入れることにした、同じクラスメイトで同じ部活の部長である奥居君に恋神になったということを伝えないといけないのだが、幸いにして同じ文芸部で他の部員があまり活動的とは言えない部活動この話を密かにすることは、容易であった。

 奥居利一という男性徒を一言であらわすのであれば可もなく不可もなくといった人物である、正直な感想ではおそらくこの男性徒が恋神さまになった理由は天啓によって恋神さまとなっただけ、それ以上は私も何もしらない

 こんな胡散臭い話であるのに流されるままではあるのだが、私も彼も恋神さまの役割をこれまでこなしている、彼も心の片隅のどこかで恋神さまであるという本能にしたがっているのであろう。


 まぁなんにせよ音楽室の件ですこし気まずい思いをしたが、それは私の中では終わったことだし彼もそのように振舞ってくれている。

 そんな彼だが風邪をひき2日ほど前から休んでいる、恋神さまなのに風邪をひくとはまぁ実際は人間の体なので風邪をひくのは当然といえば当然なのだ。


 部室には後輩の斉藤ももがやってきたが、今日は恋神さまは風邪で休んでいることを伝えるとすごく残念そうにする、どうやら今回は遊びに来たわけではないようだ。


「どうしたの」

「いや七夕祭りが近いじゃないですか」

「あぁ」


 テストが終わると鳥居高生のカップル達がタガが外れるように楽しみにする祭りだ、去年は恋に興味がなかったのであまり記憶にはないのだが、恋神さまの影響で笹にかざる短冊に恋愛成就のご利益があるらしい、カップルの祭典でもあるので、それに関するトラブルや相談事が増えてもおかしくはない。


「それでですね 生徒会にいる友達が恋神さまに短冊のパワーを頼みたいそうなんです」

「なるほど」 

「まぁ 休みならしょうがないですね」

「少量なら今からプリント渡しにいくからついてくる?」

 

 クラス担任に渡されたプリントをこの後私に行くことになっている、一人じゃ先日の音楽室の件があるので若干の気まずいのがぶり返す恐れもあるので、これ幸いにしてこの後輩をつれていくことにした。


「お邪魔じゃないですか?」

「プリント渡すだけよ」

「あぁそりゃそうですよね」


 何か期待はずれの目でこちらを見てため息をつくが、結局一緒についてきてくれることになり、弱っている中申し訳ないと前置きをして短冊の束に恋愛成就の祈願をしてもらい、私はプリントを渡して帰ることになった、なんの変哲もないただそれだけの話だ。



 まぁ でもそれは彼女があんなことを言わなければの話だった



「いやぁ病み上がりの人ってのはいつもと違う風にみえましたね」

「あれは弱っているというのよ」


 いつもとおなじに見えるのであれば、学校に来ているだろうし


「そこにぐっときたりとかはないんですか?」

「ないわ」

「そうですか 神田先輩はなんか必死ですね」

「なにが?」

「やだなぁ 音楽室でなにかあってそれで奥居先輩と会うのが気まずいだけだったんでしょ」


 急にこの後輩は何をいいだすのだろう


「だって短冊祈願なんて学校においてからでもいいのにわざわざ私誘う意味ないですよね?」


 ただからかっているだけでそう、この後輩はからかっているだけなのだ。

 だから、毅然とした態度でいればごまかせる


「急いでそうだったからそれだけよ」

「そうですか」

「えぇ それだけよ」

「いやぁ二人きりになる勇気がもてないだけかと思いましたよ、神田先輩って私の友達に似て真面目だから恋とか極力考えないようにしていざ直面すると臆病風邪にふかれそうですからね」


 それはないと強く言うことはできず、後輩と別れたあともしばらくは呆けていたらしく自分がどうやって帰ったかもわからずに帰宅しベットに横になっていた。


 恋神さまのおつげはこんな時にはまったくもって私には聞こえない



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