お告げと女の子
神田さんとのデートも終った次の日の月曜日、そろそろ、学園祭の準備期間も残り3週間近くへと次第にだが、近づいてきた。
この頃になると、部活動、クラスの出し物、有志による出し物への準備、授業が文化祭への時間へとあてがわれるようになり、学校全体がひとつの目標へと熱気を帯び始めているような気もしてくる。
そんな忙しさがだんだんと加速していく中で、神田さんからお告げがあったと言う事で、ひとまず部活を休む事にして、公園へと二人でむかうことにする。
「お告げがきたなんて久々だね」
「えぇまぁそうですね」
しかし、先日デートの練習をしたばかりの公園で、二人でならんで歩くと言うのは、あの時の気恥ずかしさを再現しているみたいで、むずがゆくなってしまうのだが、神田さんは、さすがに落ち着いている。
少し、しわ寄っているので、不機嫌なのかも知れないが。
「ここで待っていればいいのかな」
「多分そう聞いています」
公園のベンチで並んで、腰掛けている、こっちの意識の所為だろうか、どうにも会話が続かない、ケイタイをいじりながら、その場を取り繕うとした時に、やってきた。
「なんで、その人とデートしていたの」
いや、やってきたと言うよりは叫びながら詰め寄ってきた。
大きな犬というか犬も一緒のため迫力もそうだが、小さな女の子に先程のような台詞を大声で言われたという精神的な破壊力も抜群である。
「いや違うからね、なんで疑いの目を向けているの 神田さん」
「別に向けていません」
横にいる、神田さんの視線がいたい、痛すぎるのだが、そんなことはお構いなしに女の子は近づき、大きな犬は、今にも飛び掛りそうな状況だ。
「そんなことどうでもいいから、なんでほかの女の子とデートしているのお兄ちゃん」
「お兄ちゃん?」
「いや、君、三園さんの妹だよね」
さっきから問い詰めている女の子と犬は、見た事があり、とても怪しい三園さんのご家族だった。
そういえば、三園さんの家族に、仮とはいえデートしていた所を見られていたと言う事を今更ながらに、思い出した。
その後日に、神田さんとデートの練習をしていたのだから、事情を知らない人から見れば、浮気している男に見られてもしょうがない。
それに、三園さんのご家族は三園さんを溺愛しているみたいだし。
「三園さんとのデートは練習だったんだ」
「練習、本命の子との練習なの」
うわっ また誤解を招くような発言をしてしまった、どういえばいいんだ。
「今度の文化祭で発表があるから、その練習に三園さんと私が練習の一環でデートしたのよ」
「本当にそれだけ」
「えぇ ほんとうにそれだけ」
神田さんのフォローによってひとまず、助かったようだが、まだ犬はこちらに飛び掛らんとしている。
女の子も、神田さんのフォローの言葉を全面的に信用はしておらず、いまだどこか懐疑的な目で、こちらを睨んでいる。
「じゃあ お兄ちゃんまだ恋人いないんだよね」
「いないわね」
「いや、いないけどさ、うん」
なんで、神田さんはともかく、後輩の妹とはいえ、あまり知らない女の子に、まだいないと断言されると少しというか、結構心にザクッと切り傷をつけられたようになる。
「じゃあ改めてカエデの事よろしくね」
「えっ あっうん?」
「カエデの恋人になってください」
僕の疑問めいた返事は、軽く空へと流されたように、ふわりとその場から消え入りそうな声とともに
女の子の爆弾めいた発言のほうが強く頭の中に残り、立ち尽くすしかなかった。
そんな僕を尻目に小さな女の子はぺこりとお辞儀した後に、女の子は、犬を連れて去っていた。
「これが恋神さまのお告げのことなのかな?」
「そうでない事を祈ります」