思考ループ
土曜日の昼過ぎに、近くの商店街を、歩いて、それを偶然見かけてしまったというのは、無理があるのでしょうか。
練習で、恋神さまと三園さんが、練習とはいえ、デートをするという事を私は知っていたはずです。
それを私は、認めたはずです。
認めたものと、想像したものと、現実は違うと言う事を、私は今思い知っています。
恋神さまと、三園さんが、手を握りながら、並んで歩いている姿を見てしまった時に、ぐっと握りしめている拳、何かを噛み砕かんと、歯と歯が音が鳴るほどにかみ締めて、眉間によせたしわはこれ以上増えることはないほどにギュッと寄せている。
お店のガラスに薄くうつる、私の姿は酷く見られたものではない。
叫びが体中に、駆け巡り、なにかの痛みが心を這いずり回る。
その痛みから、足は二人から逆方向を向き、手を大きくふり、顔を下に向け恋神さま達から離れていく。
一刻もはやく立ち去りたい思いだけで、舗装された道を通っているはずなのに、獣道を通るように、誰にも会いたくない、見られたくない、そんな思いが、重なるたびに足は、早く動き、叫びはさらに体中を駆け巡っていく。
私が自分の部屋に戻って、ベットに横になり、ゴロゴロと何度も身悶えしながらも、私にも恋神さまは、
前のように、手をつないでくれるのでしょうか、今日見かけた三園さんのように、はたから見たら紛れもなく、疑いようもないくらいに、恋人同士に見えるのでしょうか、
いま、考えてみてもしょうがない事ではありますが、来週の私とのデートでは、私はどうなっているのでしょうか、いつも気づかずにしてしまっている様に、ぶきっちょ面をしてしまうのではないでしょうか。
いえ、それどころか手すら握れずに、デートが終ってしまうのではないか、そんな事をグルグルと考えている時にケイタイの着信があり、開いてみると差出人は斉藤さん。
『二人の様子が気になって、悶々しているころだと思いますので、そんな時は甘いものがいいですよ』
どこかで、見ているのかとおもうぐらいに、ピンポイントなメールへ余計なお世話である旨を伝え即刻返信した後、でもまぁ甘いものを食べるというアドバイスぐらいは受け止めて、紅茶とお茶請けの市販のクッキーを食べようと部屋から出る。
クッキーと紅茶で一息いれると、確かに紅茶の暖かさとクッキーの甘さが染み渡り、リラックスできたような気がします。
そういえば、恋神さまに、クッキー焼く約束もしましたね。
この際ですから、話題づくりと、多少のアピールのために、手作りのクッキーでも持って行きましょう。
この場合は、弁当のほうがデートらしいのでしょうか?
それともやはり、軽く渡せるクッキーの方が無難でしょうか?
それより、三園さんは制服でデートに挑んでましたが、私も制服のままが良いのでしょうか。
それとも少しだけ可愛いと思った服を着ていったほうが、デートという感じになる気もしますが、恋神さまも、制服でしたし、こちらもそのようにしたほうがいいのでしょうか?
それよりも恋神さまは喜んでくれるでしょうか。
私とのデートを楽しんでくれるでしょうか、色々と考えているうちにまたグルグルと思考に沈みそうになる、私は残ったクッキーと紅茶でもう一度気を落ち着かせた時に、また斉藤さんからメールが届く。
『あっちなみにストレスを感じている時に甘いものは普段より太るそうですよ』
私は再度、余計なお世話とだけ返信して、また来週へのデートについて思考の海へと旅立つことにした。