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手をつなぐ

 土曜日、本日は快晴だ。

 

 ただそんな休日のお昼の公園を、僕は犬のように、グルグルと待ち合わせ場所の公園の時計台を回ったり、近くのベンチに座っては、立ったりして、うろちょろと落ち着きない行動をとっている。


 やっぱり待ち合わせ時間前にきてしまったのは、間違いだったのだろうか、いや遅刻するよりは大分マシとはいえ、そわそわしすぎていると自覚はするけれど、どうにも落ち着かない。


「オオオ オオオオオ オマタセ  シシシ シマ シマ シタ」

「あぁうん、大丈夫時間より早くきているから」


 自分より緊張している三園さんをみて、大分落ち着いた。

 動きも普段よりカクカクしている、まだ気絶していないのが、奇跡的といえなくもない。


「制服似合っている」


 大分落ち着いたと思ったが、若干の緊張が残っているようだ、いくら三園さんも普段どおりの、制服姿だとして、なんで制服に合っているとか、今褒めているのか自分自身でもわけの分からない事を口走っていた。

 

「アアア アアリガトウ ゴゴ ゴザ イマス」


 自分も心の中で突っ込んでみたのだが、三園さんも緊張しているのかお礼を言ってくれた。


「どこか行きたい所とかあるの?」

「オオ オマカセ シマス」

「あぁ えっとうん じゃあそこら辺歩きながら考えよう」

「ハハ ハハイ」


 さて、どこへ行こうか考えながら、時おり隣の三園さんを見る。

 

 緊張で震えて、カクカクしたりしてたり片言なんだけれども、前髪にかくれている目も、ふと髪がゆれて見える時には、透き通っている感じがするし、やっぱりこの子美人なんだよなぁ


「オオ オオクイセンパイ ドウカサレサレ タノデスカ」

「いや、うんなんでもない」


 思考を元に戻そうとするが、あまり良い案が浮かばない事もあり、どうしようもない、周りを見渡すと恋人同士らしき人が仲睦まじく手を握りながら歩いていたり、家族連れで遊びに来ていたりと、実に休日を謳歌している。

 

 行きかう人々も、こちらをみて笑ってきたりするので、会釈をかえしたり歩いていると、周りからの視線というのも気になって、あぁいまさらながら、三園さんと練習とはいえデートしているんだと、顔が厚くなり、胸の鼓動も先程より若干早くなってきている。 

 視線というのは、ふだん気づかないくせに、一旦気になりだすと、被害妄想かもしれないが、皆が皆こちらをみているような錯覚にとらわれる。

 

 とりあえず、その視線を避けるべく喫茶店にでもいって、気を落ち着かそうと提案しようとするが、ふとその中で、大きな犬の散歩をしている、少女に目がいった。

 心なしか彼女もこちらを見ている気がしたので、もう一度よく見ると、この前見た怪しい人達が家族連れのフリをしているが、間違いなく先日の怪しい人たちだった。  


「ねぇ 三園さん」

「ハ ハ ハ ハイ」


 そういえば、その時に、三園カエデの保護者といっていたような気がする。


「あの犬の散歩中の家族連れって三園さんのご家族」

「アァ アァ ハイ ソウデス ホゴシャ デス」

「そうなんだ」


 こちらに気づかれたせいか、慌てて公園から去っていく怪しい人たち、いや三園さんの家族に、怪しいと言うのもなんだけれど怪しすぎる。


「イツモ ワタシ ノ コトヲ キニカケテクレマス」

 

 そういえば、学校生活のことを聞かれたのは、やはり三園さんが、よく気絶したり、片言で喋ってしまうほど緊張しやすい性格だからだろうか。

 まぁかわっているといえば、かわっているけれど、仲が良いと言う事でもあるのだろう。


 先程までかなりの緊張をしていた三園さんが、いつもどおりといっては何だが、少しは緊張がほぐれてきたのか身体の震えも少し、収まっているように感じる。


「それで、どこ行こうか」

「ハイ、イロイロ カンガエマシタガ、オクイセンパイニ オマカセ シヨウカト」

「うーん」


 それが決まっていないから、困ってしまう。


「とりあえずお昼にしようか」

「ハイ」 


 とりあえず昼食をファミレスかどこかで食べるために商店街へと、いこうとした時に後ろからなにやら変な視線を感じる。


 後ろから、明らかについてくる三園さんのご家族。


「ドウシマシタカ」

「いや、うん」


 君のご家族が、何故かついてきているんだけどと言いたいが、もしかしたら、たまたま行き先が同じなのかもしれないと好意的に解釈してみるが、後ろから感じる、計り知れない重圧は、やはりどう考えてもついてきているようにしか思えない。


 あれ、デートの練習で保護者が同伴とか、スゴイ居心地が悪い状況へと追い込まれているような気がしてくる、なんだろう僕の心が、キリキリと痛みだしてきた。


「チョウシワルイノデシタラ ザンネン デスケド デート オワリマショウカ」

「いや、大丈夫」


 デートすら始まっていないのに、緊張しながらも付き合ってくれ、しかもこちらを気遣ってくれる三園さんに、何一つデートらしく、楽しい思いをさせていないのに、此処で終ったら駄目なような気がする。

 

「とりあえず、食べてからどこ行くかとか考えようか」

「ハイ」

「手握ってもいいかな」

「ハハハハ ハイ ヨヨヨ ヨロシク オネガイシマス」


 まぁ 先程公園で見かけた恋人達のように、とりあえず、手をつないだりする事はデートっぽいとかな思いながら握った、三園さんの手はヒンヤリと、冷たかったが、それでも今日のデートを楽しむために、また僕と三園さんは並んで、手をつないで歩き出した。 


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