順番
「ゼゼゼ ゼヒ」
息を引きつらせながら、倒れた。
いやまぁ、慣れたとはいえ気絶するのは、やはり心臓に悪い。
僕の迂闊な一言で、斉藤さんは楽しんでいたので、除外するとして、神田さんと倒れていた、三園さんに改めて、練習のためのデートの、了承を頼んだのだが、三園さんは、それを聞いた途端に、一言発して、倒れてしまった。
「やれやれ まぁカエデの了承も得たところですし」
「得たの? あれ?」
呼吸困難に陥っていたように思えたんだけど、それは僕の気のせいだったのだろうか。
「大丈夫です、カエデとの付き合いは、私のほうが長いです」
「それは、ある程度期間が長い人がいうものです」
確かに、同じクラスといっても、付き合いの長さは僕達と、あまり変らない。
「やだなぁ、神田先輩 人付き合いは時間じゃないですよ」
「貴女が最初に言い出したんだけれど」
「まぁ細かい事はいいじゃないですか、といっておいてなんですがデートの順番どうします」
「順番?」
順番っていわれても、正直、ピンとこない。
神田さんも同様らしいが、なにやら眉間にしわを寄せて、真剣に考えているようだ。
「まぁ私は奥居先輩が、デート終ったらムービーの消去をするので最後ですけどね」
「私と三園さん、どちらと先にデートしますか、恋神さま」
「えっっと」
なんだろう、変な汗をかきそうなんだけど、練習とはいえ、デートとかやった事ない、いや違うか、Wデートもどきをやった事はあるか。
唯それは、こっちがメインというわけでなかったし、そういえばあの時、神田さんの手握って歩いたなぁ
しかも夜道、思い出すと赤面しそうな事をやっていたとか、うわっ恥ずかしい。
「なに、動揺しているんですか奥居先輩」
「なんでもない」
「とても、面白いのでムービーにしていいですか」
「これ以上傷増やすのやめてください、お願いします」
「まぁそこは冗談として、それで順番どうします」
「いや、うん三園さんが起きてからで、いいんじゃないかな」
「うーん、カエデしばらく起きないと思いますよ」
ひとまず、時間を稼ごうとしたが、斉藤さんに却下されるてしまう、確かについさっき気絶したのに、すぐ起きると言う事は、難しいだろうと思って提案したんだけど、それすらも先回りされてしまう。
ちらりと、神田さんに助けを求めるべく、顔をむけると、ため息をつきながらも助け舟を出してくれた。
「私は三園さんの後で、いいですよ」
「そうですか、ならカエデが一番先ですか」
「そうなるわね、恋神さまもそれで、いいですよね」
「はい ありがとうございます」
神田さんが、順番を決めてくれたおかげで、謎の緊張感から解放された、その安堵とともに疲れも流れ込んできたため、その後の練習は、ただひたすら身がはいらず、神田さんもそれにつられてか、なんどか珍しく、とちったりしてしまっていた。
余計な気苦労をかけてしまった所為なのかもしれない。
「今日は早めに練習を切り上げようか」
「そうですね、どうも今日は調子が悪いですし」
「はいはい、じゃあカエデを起こして帰りましょうか、あっ何か食べに行きます?」
「そうだねぇ、じゃあハンバーガーとかなら奢れるよ」
「マジですか、いやぁ太っ腹ですねぇ」
「いえ、昨日からお疲れのようですし、恋神さまは、早く帰ってお休みください」
「あぁ うんそうだね」
多少今月ほしかった新刊などを我慢すれば、皆とくに、今日気苦労をかけた神田さんにも奢れると思ったのだが、どうやらまた気を使わせてしまったようで、こちらの身体の心配をしてくれ、早く帰るように言われてしまった。
どうにも上手くいかないと頭をかきながら、とりあえず神田さんのいうとおり、帰って休む事にした。