犯人は僕
「もしもしそこのお嬢さん 大丈夫ですか」
とりあえず呼びかけてみるが返事がまったくなく、息をしているのかどうか分からないぐらいぐったりしている。
保険室に連れて行ったほうがいいのかと思い女の子を起こそうとする前にふと思う、急に倒れた女の子触るのは医療行為であってセクハラではないはず、いやこういう考えの時点でセクハラになるのか?
そもそもこういう時って動かさないほうがいいんだっけ? 保険の先生呼びにいくにしてもこの状態の女の子を一人放置するわけにもいかないような気がする。
部室を右往左往しながら、必死に考えてみるがいい考えが一向に浮かばない、とりあえず僕一人ではどうにもすることができないのは事実なので神田さんに助けを求めるべく携帯を手にするときに女の子が目をさました。
「あっ 気がついたんだ良かった」
「ウッ ズツウガシマス」
「大丈夫? 立てる?」
「ハ ハハイ セイジョウイジョウナシ」
頭うったせいでボーっとしているなのか片言で棒読みになっているし、身体もなんか微妙に震えているこれはもしかしなくてもとても危険な状況ではないのだろうか、とりあえず目を覚ましてくれたおかげで保険室に連れて行けばどうにかなるだろうと考えて声をかけてみる。
「そう、一応保健室にいこうか歩ける? 」
「ハイ ナントカ」
「ふらつくなら肩とかかすから」
「メッソウモ」
バタンとまた倒れてしまった女の子、いやちょっと待ってなんで倒れたの大丈夫といっていたのにといっている場合でもなく、とりあえず声をかけても目を覚ます様子はない。
とりあえず神田さんに連絡をとらないとと思っていると、この状況をなんと説明したらいいのだ、部室に女の子が倒れているんとかあまりにもわけの分からない状況だ。
女の子が倒れている状況で僕がいるという状況って下手したら僕が彼女を昏倒させたみたいな状況になっているような気もしてくる。
いや、一切やましいことを考えていないし、あっでも美人だなぁとか足きれいだなぁとか思ったけどそれでも何かしたというわけではないし、この状況をきちんと説明すれば神田さんはきっと分かってくれるとは思うのだが、上手く説明する自信もなく携帯を操作する指が止まってしまう。
「もしもしそこのお嬢さん 起きてくれませんか?」
携帯を閉じてズボンのポケットにいれなおして、再度声をかけてみるがやはり反応は返ってこない、倒れている女の子を起こすことも放置することもできずに、なんか振り出しにもどってしまった感じがあるが重要なことに気づく。
神田さんたちが戻ってくるということだ、部室をよくみると神田さんのカバンが置きっぱなしになっているとういうことはまだ帰っていないということである、つまり運悪くこの状況で返ってきたときに言い訳できない。
いやまぁ言い訳も何も恥じることもないはずなのだが、妙な罪悪感が生まれているということはこれは心の中でやましい部分があってそれで罪悪感がでているのではないかとかまったくわけの分からない思考のループにはまった状況を打開すべく行動した。
「もしもし お嬢さん起きてくださいお願いします」
土下座しながらぺちぺちとほほを軽く叩く奇行を繰り返すという行動に出ても起きず、そんな行動をしている間に刻々と時間は進んでいたのだろう、部室のドアが開き少しいきぎれをしている神田さんと斉藤さんが入ってきた。
「何をしているんですか恋神さま」
「……人命救助のはずだったんだけどね」
神田さんの冷たい視線に苦笑いしながら僕はそう答えるしかなく気まずい雰囲気の中斉藤さんの笑い声だけが部室に響いていた。