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チャンス

 すこし頭を冷やすために、文芸部の部室をでてそこらへんを歩いてもどろうかと思案していると、後ろからひょこひょこと斉藤さんがついてきた。


「みつかってしまいましたか」


 振り返ると、わざとらしく驚く仕草をしてくるところがなんとも癪に障る。


「私を睨んでもどうしようもないですよ」

「残らなくていいの三園さん一人になるわよ」


 睨んだつもりはないのだが、それとも本能的に斉藤さんは敵とでも認識して気づかないうちに睨んでいたのかもしれない、その証拠に自分の口からでた言葉に自分でも八つ当たりに近い苛立ちが含まれているのに気づいた。


「カエデも子供じゃありませんし、それに奥居先輩が部室に来たら二人きりになれるじゃないですか」


 確かにそうだが、それを聞いても戻る気はしなかった、戻ろうとしても斉藤さんが邪魔をしてくるだろう、いや彼女にしてみれば友人の三園さんの協力といったところでしょう。


「いやぁ 本当にライバルが現れるとは思いもしませんでしたよ」

「そうね 本当にそう思うっているの?」

「何がです? 」

「ずいぶんと楽しそうだから」

「えーそうですか? いや私も心苦しいですよ神田先輩と奥居先輩の事も応援してますし」


 それは本心かと聞くまでも無く、斉藤さんの言葉の後半はいつになく真面目に答えていた。


「そう」

 

 それをつぶやいた後は私と斉藤さんは、特に行くあてもなく放課後の廊下を二人誰ともすれ違わずに歩き続けた。

 それでも無言に耐えることのできなかった私は他愛の無い話をして、斉藤さんもそれに他愛のない返事が続いていったが、不意に気になった事を聞いてみる。


「三園さんは恋神さまに会った事あるのかしら」

「一目みただけですけどね ありますよどうしたんです急に」

「不意に気になっただけよ 転入したてで接点があるわけでもない彼女がどうしてってね」

「理由なんてあってないようなものじゃないですか 恋なんて」

 

 確かに斉藤さんの言うことはもっともで、どうしてなんていっても恋した理由なんて説明できるほどに分かりやすいものであったり、上手く説明できなかったりそういったものだし、私も強く意識するきっかけはあったにしろ、他の人でも同じだったかと問われたらそれは多分違うだろうというしかない。


「それにまだ付き合っているわけじゃないんだからチャンスはありますよ」

「それは励ましているの?」


 さっさと告白していない自分を責めているのか、励ましているのか分からないが、結局のところチャンスがあるということは、恋人がいない今だから言えることなのだ。

 チャンスをつかめるのは一人だけということになる。 

 

今のところ確かに転入したての三園さんにもチャンスはあるし、私にだってチャンスはあるし、斉藤さんにもチャンスがある、他にも恋神さまを好きな人がいたらその人にだってチャンスはあるのだ。


「えーいったじゃないですか神田先輩と奥居先輩の事も応援してます」

「友達応援してもいいのよ」


 いつまでも先延ばしにするということはできないし、三園さんというライバルの出現には心を乱されたが、それでも恋神さまに告白するというのは変らない。


 まぁそれでもまだ告白までにはすこしばかり時間がかかるだろうがそれでも後悔しないようにしなくてはいけない、頭も少し冷えたところで部室に戻ることにした。


「さて、そろそろ戻りましょうか」

「そうですね 奥居先輩とカエデの事気になりますか?」

「なるわよ」

「まぁ心配しなくてもすくなくとも進展はないでしょうねまだチャンスはありますよ」


 斉藤さんは肩をすくめながら断言する、確かに三園さんのあの極度の緊張でまともに告白なんてできるということは、無いだろうがそれでも少しだけ斉藤さんに気づかれないように若干部室を出たときよりも早足になりながら部室にもどることにした。




  





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