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宣戦布告

「いやぁ昨日は失礼しました ロボットな彼女ですが文芸部員に入りたいそうです」

「オ オネガイシマス ワ 私 は ミソノ カエ カエデト 申し といいます」


 入部届けを渡す時も緊張からか動きがカクカクして、なにより口がほとんど動いていない腹話術の人形のようだ、もっとも見た目的には日本人形のように髪はおかっぱで目元まで前髪が伸びているが、それでも美人な顔立ちではある。

 ただその美人の顔立ちが無表情のせいなのか、前髪で目が隠れているせいなのか私にはなぜか少々不気味な雰囲気を感じたが、確かに斉藤さんの言うとおり片言や緊張でカクカクした動き方のは、何十年前のロボットの動きとかに似ています。


 そして文字が震えて書いたのかかろうじて読めたのがクラスぐらいで後は雰囲気と先ほどの自己紹介で判断するしかないがおそらく三園 カエデと書いているのだろう。


「えーと 三園カエデさんでいいのでしょうか」

「ハイ ソウデス」

「三園さん緊張しなくてもいいですよ」

「ダイジョウブ キンチョウして イナイ」


 どう見ても緊張していて片言の留学生みたいになっているのですが、とリあえず彼女のクラスメイトでありつれてきた斉藤さんに目線を投げ、どうにか緊張をほどいてほしいのですが、斉藤さんは任せろと言わんばかりに、親指をあげているのが妙に不安になります。


「カエデ 神田先輩はキツイ顔していますが、あれは元々で、根は優しい力持ちなのです」

「余計なことは言わないでいいです」


 誰が私のフォローを頼みましたか、力もちではないですしキツイ顔も余計なお世話です。

 

「もう先輩が怒るからカエデがびっくりしているんですよ」

「ビックリシテイマセン カンダ先輩トテモ ヤサシイ イイヒトデ チカラモチデス」


 なんでしょう、多分悪気はないんでしょうけど片言で棒読みに近いとイライラしますね、そして何気なく力持ちという余計な情報を刷り込まれているような気がします。


「とりあえず入部はいいですが、幽霊部員にならないようにしてください」

「ハイ ユウレイブイン ダメ ゼッタイ」

「そこまでは言っていません」



なんで警察の標語みたいになっているのかは、この際置いておくことにしますが、やはり緊張し過ぎなのは良くないと思いますが、私ではどうにもできませんが、授業や私生活でもこんな状況なのか他人事ながら気になります。


「三園さんはいつもこうなの?」

「イエソンナイツモドオリデ モンダイナイ」

「神田先輩、カエデは緊張しているんですよ」


たかだか、高校の部活に入部するだけにしては緊張しすぎな気もしますが、転入生ということも何か影響をしているのでしょうか。

 

 そう結論づけて、微妙に納得をしようとしているときに斉藤さんがこの疑問に

しっくりとそれでいてじわりと心を揺さぶるような現実を私に教えてくれた。


「何せ 奥居先輩に告白するそうですから」

「はい?」


斉藤さんは笑いながら、だからいったでしょと言わんばかの態度で所々トゲがある言い方で私に現実を突きつけてくれた。

 確かに、告白するのであれば緊張もするだろう、ここまでになるのかはわからないが、たかだか高校の部活にはいるから緊張するというよりは、少なくとも私が納得する答えではあります。

 

「ほら恋する乙女の顔でしょ」

「それはわからないわ」


相変わらず、無表情な彼女からは、何一つ読みとれない美人な顔の不気味さだけが私の前に立ちふさがっていた。


 恋神さまが今この場にいなくてよかった、きっと私はいつも以上にキツイ顔をして後輩達を睨んでいるだろう、睨んでもどうにもならないことを知っているが、現実を直視するために、額にしわを寄せ、いまだに何一つ表情をかえる事の無い三園さんの不気味さを振り払うように私はにらみつけた。

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