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お告げ受けました

 鳥居高校には七不思議がある、そのうちひとつは恋の神様がいる。

そのため鳥居高校には近隣高校よりカップルの誕生率が以上に高いのだと、そんな風に噂されている。

奥居利一おくい りいちはその噂を聞くたびにそんな噂に流されて入ってみなよ、確実に後悔するからね。


 そりゃあ確かにカップルの誕生率は多いだろう。


 ただしそれはいわゆるモテル奴らだけだ、周りを見渡すといちゃつくカップルそんなな中で独り身だったら肩身の狭さが半端ではなくつらいから。


 まぁ生まれてこの方告白されたこともないし、告白するような恋に落ちたこともないので周りを見てうらやましいとは思うがさびしい以上の感覚は生まれない。

 

 それにカップルが生まれやすいということは、恋愛系のトラブルが生まれやすくそこからギクシャクする空気と幸せいっぱいの連中がかもしだす空気が溶け合う授業風景はなんともまぁ混沌としているなぁとは思う。

 

 あぁあらかじめいっておくと恋の神様なんているわけではない。


 ただこの学校の風紀がよその高校と比べてゆるく校則にも不純恋愛禁止とかそういった類のものがなく、長年噂されている恋の神様とやらの影響でみなの心のベクトルがそちらに向いているからカップルが誕生しやすいという理由であると僕は考えていて、要するに周りの影響であるというだけだ。

 

 高校生2年生の新学期早々その考えは半分間違いで半分正解だったということを同級生に告げられるわけとは夢にも思わなかった。



「ぱちぱち あなたは恋神さまになりました よかったね」


 クラスでも比較的真面目で成績も優等生な神田あかりが冗談にしては、すべりすぎる内容とともに声をかけてきたのは放課後の文芸部の部室であった。


「文芸部の部長就任ではなくて恋神さま?」

「それもあったわね おめでとう」

 

 内容を理解していない子供のようにオウム返しになってしまうが再度内容を確認してみた


「文芸部の部長じゃなくて恋神さま?」

「文芸部の部長も恋神さまもあなたよ」

「恋神さまって何さ」

「鳥居高校の神様ね ちなみに私は巫女よ」

「神田さんって電波なひとだったりする?」

「私はまともよ ちなみに神様 そろそろ依頼人がくるわよ」


 そうつぶやいたと同時に勢いよくドアが開くと、息を切らせながら少女は叫んできた。


「助けてください」

 

 加速的に何かがかわっていくような、それでも心情的にはついていけない気持ちのほうが強いが、さすがに目の前の切羽詰った少女の話を聞かないような真似もできずに話を聞くことにした。



「急にすいません先輩方 あっ私斉藤ももといいます」

「それで本日のお悩みは?」


 少女はどうやら新入生らしく恋神さまのお告げを聞いたそうだ、うん何度心でつぶやいてもまゆつばな話だが、神田さんも昨日お告げがあったらしい。


 僕からしたら、そんなお告げなど聞いていないので二人が示し合わせて僕をからかっているだけかと思ったが、それをして何の得があるのかと自問したところで何の意味もないと自答が返ってくるだけなのでどうしようもないのだが、新入生は斉藤ももというらしく中学を卒業したばかりということもありまだ初々しさを感じる。

なんでもこの高校に入学したと同時に携帯にへんなメールがはいってくるとの事だった。


「着信拒否設定しても入ってくるんですよ」


彼女が見せてくれた文面にはやっと会えたねだの、好きだ、答えてほしいとの文字が並んでいる。

 実に情熱的な単語ではあるが、まぁ正直知らないやつからのメールと考えると不気味以外のなにものでもない。


「熱意だけは感じるわね」

「情熱しか感じないけどね」

 単語だけならべて文面にはなっていないのだからそれしか言いようがないそんな不気味なメールだが削除しても削除しても送られてくるらしく今やメールを放置しているらしい。


「それでどうしたらいいんでしょうか?」

「それはこちらの恋神さまの出番よ」

「僕かよ」

 

 まだ納得していないのだが、斉藤さんはすがるような目でこちらをみているが、いや悪質なストーカーなら警察にいってほしいんだけど、今日は非常識なことがおこっているしなぜかどうにかできそうな気がしたので思いつきを口にする。


「このメールに返信はしてないんだよね」

「さすがにしませんよ」

「答えてあげたら 返信用のメールつくって相手の告白に返答したら」

「はぁ」

「あっ 念のため文面だけでいいよ 文面だけで実際に送信はしなくていい

返答だけでいい」


 半信半疑で斉藤さんが、お断りの文面を送ると愛の羅列の文字が変わっていく。


「あっ文面変わりました」

「幽霊って顔文字使えたのね」

「いや まぁあきらめたようで何よりだよ」

 

 ただの思いつきだったんだけど、うまくいってよかったのはいいんだが何か釈然としないのは僕だけのようで神田さんはのんきに幽霊の文面の顔文字を見ている。


 いやこれ顔文字じゃなくて怨念の顔だよ、悔しい心霊写真の域だよとはいえなかったが、まぁとりあえず斉藤さんは安心して帰ったようでなによりなだ。


「おつかれさまでした恋神さま」


 部室に常備しているお茶を出してくれた神田さんに聞いてみた


「ねぇこれ恋とか関係あるの心霊の域なんだけど」

「恋ですよ恋には未練もつきものですから未練を断ち切りあのメールの送り主も新たな恋に向かえることでしょう」

「いや 送り主は成仏してほしい」

「それは知りませんよ まぁこのように鳥居高校の恋の悩みを和らげていってください」

「あとなんで僕が恋神さまなのさ」

「さぁ それはお告げで聞いてませんしこれからも頑張って下さい 恋神さま」

「それはいつまで?」

「卒業するまでとお告げにはありました」


 高校2年生の春

 

 カップルができるのは恋神さまがいるからではないが、恋神さまは実在するということを体験することで知った。



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