08
蘭 「、、、教官だろうな。」
湊 「えっ、教官ですか?」
蘭 「教官が凛を育てたんだよ。」
湊 「そうなんですか、、、でも、厳しい人ですよね。あんなに体調を崩している橘先輩を休ませてあげようとしないじゃないですか。」
蘭 「、、、あの人もあの人なりに何かを抱えてるんじゃないかな。」
湊 「えっ?」
蘭 「、、、初めてここに来た日、お前は家族が生きていて良かったなって言われたんだ。どうしてあんなこと言われたのか分からなかったけど、手が震えてたんだ。顔を見たら何かに怯えてるみたいでそれ以上は何も聞けなかったよ。」
湊 「、、、教官は家族が居ないってことですか?」
蘭 「んー、、、何となくそういう意味には聞こえなかったんだよな。」
湊 「、、、」
蘭 「でもさ、あぁ見えて優しいんだ。小さかった頃は俺らの間違いをこっそり訂正して上に報告してたんだよ。」
湊 「えっ、教官がですか?」
蘭 「そう。教官と浅沼さんって人がいて、二人が俺たちを育ててくれたんだ。浅沼さんは、教官の部下で鳴瀬が来る少し前に遠征に出掛けたから鳴瀬は見たことないんだけどな。」
湊 「そうなんですね。」
蘭 「俺らが小さい頃は教官もまだ教官じゃなくてさ大きくなってから教官になったんだ。教官になる前は今みたいに厳しすぎず甘やかしてくれることもあったんだ。」
湊 「意外です、、、全然考えられない、、、」
蘭 「まぁね。浅沼さんはそんなに変わらず接してくれるんだけど俺らのことは担当外になっちゃってあんまり会えなくてさ。今でも俺らのことを思ってくれてるかは分からない。」
湊 「、、、あの、橘先輩は小さい頃にここに来たんですよね?橘先輩のご両親はそんなに小さい橘先輩が茜坂に来ることをどうして許したんでしょうか?」
蘭 「、、、それは俺からは話せないよ。でも、少なくとも凛がここへ来たときは茜坂もできたばかりで今のように悪い噂は立っていなかったよ。」
湊 「そうなんですか、、、言うなれば茜坂は国のための機関ですもんね、、、」
蘭 「、、、そうだね。」
片付けを終えて橘先輩の様子を見に行くと第一級人員の部屋には近衛先輩が居て、横になっていた橘先輩と話をしていた。
柚月 「無理しないで。横になっていて。後二日は休めるように言ってあるから。」
凛 「あぁ、、、助かる。」
柚月 「、、、さっき、吐いたもの確認したけど、全然ご飯も食べてないんでしょ?そんなんじゃ持たないよ?」
凛 「、、、食欲が無くて、、、」
柚月 「、、、ごめん。僕らの仕事を引き受けてくれて無理させちゃったよね、、、統括役の凛なんて元から仕事が多いのに、、、」
凛 「、、、謝ることない。仕方ないことだから、、、」
柚月 「、、、もう少しで実験段階に入るんだ。だから、僕らの役目は終わる。それまでもう少し掛かっちゃうんだけど、、、」
凛 「、、、一番辛い時期だな、、、こちらこそ心配掛けて悪い、、、」
柚月 「、、、そんなの気にしないでよ。何か食べる?」
凛 「いや、、、」
柚月 「食べないと持たないよ。何も食べれなそう?」
凛 「、、、食べられるか食べられないかで言った、食べられるけど、、、」
柚月 「じゃあ、待ってて。何か作ってくるよ。」
そう言って近衛先輩は部屋を出て食堂に向かった。
凛 「げほげほ、、、げっほげほ、、、」
部屋の外にいると橘先輩の咳き込む声が聞こえ、部屋を覗くと胸を押さえて苦しそうにしていた。
湊 「た、橘先輩、、、!」
傍に行って背中を摩ると橘先輩は僕に気づいた。
凛 「、、、な、鳴瀬?」
湊 「大丈夫ですか?」
凛 「あ、あぁ、、、」
僕は橘先輩が水を取ろうとしていたのに気づいて水を取って渡した。
凛 「ありがとう、、、」
橘先輩は水を飲んで少し落ち着いてきて僕を見た。
凛 「、、、ここには慣れたか?」
湊 「え、えぇ、、、でも、まだ分からないです。ここが煙たがられる理由が。計算ばかりの仕事をしていて、、、」
凛 「、、、何の計算か分かるか?」
湊 「えっ?いえ、、、」
凛 「、、、」
湊 「、、、何の計算なんですか?」
凛 「、、、ここで作られているものは、外の世界では兵器と呼ばれている。感染病も外の世界の人々を守ることにも繋がるかもしれないが、逆に考えればその感染病を兵器として利用することもできる。ここでの感染病に関する研究は後者のために行われている。」
湊 「、、、つまり、、、」
凛 「、、、つまり、人を殺すための道具づくり。それを行っているのがこの場所、茜坂だ。だから皆、ここを煙たがり、ここに送られる者から距離を置こうとする。これから自分たちを殺すかもしれない兵器を作りに行くのだから。」
湊 「、、、で、でも、ここで作っているのは戦争をしている相手国への攻撃のための兵器ですよね、、、?」
凛 「、、、本来の目的はそうだ。でも、ここの情報が相手国に抜き取られ、ここで行われた研究や開発が相手国によって兵器として使われ、そしてこの国に被害をもたらしたこともある。」
湊 「、、、そんな、、、」
凛 「、、、しかし、その兵器を作るのに直接関わっているのは、第一級人員の私たちだけだ。お前たちはその手伝いのような感じだ。だから、責任を感じることはない。全ての責任は私が引き受ける。」
湊 「、、、それじゃあ、橘先輩だって辛いじゃないですか。そんな無情で出来るようなことではないでしょう?いくら貴方だとしても、、、」
凛 「、、、無情でなんて出来ない。自分のしていることが誰かを傷つけ誰かを苦しめている。たとえそれが敵国であっても毎日心が痛む。だからこうやって、体調に出てしまうんだ。って、いくら私でもって、、、」
湊 「、、、橘先輩は完璧じゃないですか。何でも出来て皆から慕われていて。」
凛 「、、、でも、していることは最低なことだ。誰も笑顔にできない。そんなことをしている。」
湊 「、、、橘先輩はここに小さい頃から居ると聞きました。」




