02
橘さんの側で大人しく待っていると、男の人は引き出しを開けて物を取り出したり書類を出したりしていた。
凛 「あいつは、早坂莉央。人事関係は、莉央が担当している。」
湊 「は、はい。」
莉央 「にしても、久しぶりの休みだったのに新人の世話を任されるなんてついてないな。」
凛 「まぁ、休みとは言え、皆仕事をしているけどな。」
莉央 「まぁな。俺もその一人か。」
凛 「明日からまた忙しくなる。」
莉央 「あぁ。体調崩すなよ?」
凛 「お互い様だ。」
そう言って橘さんは早坂さんに渡された紙を受け取って部屋の外に出た。
莉央 「早く行けよ。次は部屋に案内されるはずだ。」
湊 「は、はい。」
橘さんについて行くと長屋に案内され、橘さんは一つの部屋の障子を開けた。
凛 「失礼する。」
中には、僕と同じくらいの年齢の男の子が二人座っていた。
男の子 「橘先輩。どうされましたか?」
凛 「昨日話した新しい同室だ。鳴瀬湊。」
男の子 「湊か、よろしくな。俺は一ノ瀬優、こっちが雨宮界。」
湊 「よ、よろしくお願いします。」
凛 「これから、仕事部屋を案内してくる。鳴瀬の布団や机が届いているはずだから蘭にもらってきてくれるか?」
優 「はい、分かりました。」
部屋を出て橘さんについて行くと橘さんは歩きながら話し始めた。
凛 「鳴瀬は、兄弟はいるのか?」
湊 「、、、兄がいます。」
凛 「そうか、会いたいか?」
湊 「、、、家族にはもう二度と会えないんですよね?」
凛 「まぁ、、、そうなんだけどさ。」
湊 「僕は、、、会いたくないです。いつも兄には煙たがられていましたし、、、あの手紙が届いてからは母親も冷たくなって家を追い出されましたし、、、」
凛 「、、、そうか。家族のことは忘れなさい。私情が絡むと自分も辛くなるから。」
湊 「、、、はい。」
橘さんに仕事部屋や鍛錬場、委員会や部室を案内してもらい食堂に向かった。
食堂に入ると何人もの子供たちがいて、橘さんが入った瞬間に立ち上がって礼をした。
莉央 「凛、結構時間が掛かったな。」
凛 「あぁ。鳴瀬、朝、昼、晩の食事は担当者が作ることになる。担当は部屋割ごとに決まっているから同室の一ノ瀬たちに聞いてくれ。」
湊 「分かりました。」
凛 「それと、ちょうど良いから説明しておく。人事部で紹介した莉央に加えて、ここにいる六人が第一級人員だ。」
橘さんは一つの机に座っていた四人の男の人を紹介してくれた。
凛 「赤木藍、水瀬蘭、近衛柚月。青井結。」
莉央 「で、俺とここの統括役の凛。」
凛 「何か分からないことがあれば私たちに言いなさい。」
湊 「はい。」
橘さんは二つのお盆を受け取って空いている席に座った。
凛 「どうぞ。」
湊 「、、、これ、お米ですか?こんなにたくさん、、、」
凛 「まぁ、外の世界の料理とは違うだろうな。」
莉央 「俺たちは頭が命。食べて寝て、明日からの仕事に備えておけよ。」
湊 「は、はい、、、」
全員が食べ始めると食堂は静かになった。
湊 「、、、あ、あの橘さん。」
凛 「先輩で良いぞ。」
湊 「は、はい。橘先輩。」
凛 「何だ?」
湊 「、、、聞きたいことがあります。」
凛 「では、後で私の部屋に来なさい。」
湊 「分かりました。」
夕飯が終わり、風呂に案内され上がった後、第一級人員の部屋に向かった。
凛 「来たか。入れ、ちょうど今一人だから。」
橘先輩は机で読んでいた本を閉じてこちらを見た。
凛 「それで、聞きたいことは?」
湊 「、、、どうしてこの場所は他の人から煙たがられるんですか?僕も茜坂は何となく悪い場所としか思っていなくて、、、でも、僕にはそんな場所に思えませんし、橘先輩も優しい方ですし。」
凛 「、、、私が優しく見えるか?」
湊 「えっ、、、は、はい。」
凛 「そうか、、、私は鳴瀬が思っているような優しい人間じゃない。この場所が煙たがられる理由はすぐに分かるはずだ。明日の仕事から気づく。早く寝て、明日に備えなさい。」
湊 「、、、分かりました。」
部屋を出ると橘さんの咳をする声が聞こえ、振り返ろうとすると早坂先輩が部屋に戻ってきたのが見えた。
莉央 「鳴瀬。どうした?」
湊 「あっ、橘先輩にお聞きしたいことがあったので。」
莉央 「そう。凛、居なかった?」
湊 「いえ、もう話し終えました。橘先輩、、、風邪引かれたんですか?」
莉央 「えっ、そんな風には見えなかったけど、具合悪そうだった?」
湊 「あっ、いえ。咳をする声が聞こえただけです。」
莉央 「そう、、、まぁ、元から体が弱いからな、、、って、そう言えば鳴瀬に用があったんだよ。」
湊 「えっ?」
早坂先輩について行くと、人事部の部室に着いた。
莉央 「今日、渡し忘れたからさ。ほれ、これを胸につけて明日から仕事すること。で、服はこれな。」
湊 「ありがとうございます。」
莉央 「はいよ。鳴瀬、兄貴いるんだろ?」
湊 「え?え、えぇ。」
莉央 「俺もなんだ。小さい頃に少ししか一緒に暮らせなかったけどな。」
湊 「小さい頃からここにいるんですか?」
莉央 「そう。さっき説明した第一級人員は皆そうだよ。小さい頃からここに居る。凛なんて生まれてすぐここに連れてこられたし。」
湊 「そ、そうなんですか、、、」
莉央 「まぁ、家族にはもう会えないし、ここで家族のように友だちと過ごすと良いよ。一ノ瀬たちが同室だし俺らもいるから大丈夫。」
湊 「そ、そうですか。ここはもっと厳しい場所なのかと思っていました。もっと傷つけられたり苦しめられたりするのかと、、、」




