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次の日、委員会をしていると隣の統括部の部屋から声が聞こえた。
浅沼 「凛、居る?」
凛 「何ですか?」
浅沼 「あの医者も駄目?結構、遠くまで探しに行ったんだよ?」
凛 「どうせ勝手に辞めて行きますよ。」
浅沼 「、、、凛。自分の体のことを本気で考えたほうがいい。」
凛 「、、、とにかく、あの医者は必要ありません。早く帰してください。」
浅沼 「、、、全く、、、ちょっと外出ろ。」
僕らが外を見ると浅沼さんは肩を鳴らしながら刀を構えた。
湊 「な、何が始まるんですか?」
藍 「んー、本音を聞き出す会かな。」
湊 「えっ?」
橘先輩も刀を構えると浅沼さんの方から橘先輩に斬りかかり、橘先輩は浅沼さんの刀を飛ばして自分の刀の切先を浅沼さんの首元に当てた。
凛 「、、、彼女を選定した理由は?」
浅沼 「医療知識と町の評判。それと、俺の勘。」
凛 「勘?」
浅沼 「あの人なら凛も受け入れてくれそうだなぁって。」
凛 「、、、」
浅沼さんはバック転して橘先輩の刀を飛ばし、その刀を片手で掴み、橘先輩を倒して橘先輩の首元に刀を当てた。
浅沼 「今度は俺の番。凛は、何を心配してんの?」
凛 「、、、ここで大勢が怪我をして彼女は誰から手当てに当たりますか?」
浅沼 「えっ、そりゃあ、、、」
凛 「それが嫌なんです。そんなのが罷り通る場所だから、金などに靡く大人は信用ならない。」
浅沼 「、、、あの人はそこまで金を気にしていなかった。これまでの医者の中でも提示した金は一番低い。」
凛 「、、、では、何に惹かれてここに?」
浅沼 「さぁね。でも、凛の話をしたら行きたいと言ってくれた。」
凛 「、、、無駄なことを、、、」
橘先輩が起き上がろうとすると浅沼さんは手を差し伸べた。
浅沼 「まぁ、もう少し様子を見てあげてよ。案外、良いかもよ?」
凛 「、、、期待はしてません。」
橘先輩が部室に戻ると浅沼さんはそのまま鍛錬を開始した。
僕らも部室に戻ると仕事が再開した。
蘭 「昔からあの二人はあぁしないと本音で話さないんだよね。」
界 「難しい年頃なんですね。」
蘭 「ふっ、そうかもね。」
それから二週間が経っても、瀬良さんはなかなか橘先輩に認められなかった。
そして、今日は午前中のみ仕事で、半日は休みの日。
広い中庭では、皆、思い思いに過ごしていて本を読んでいる者、焼き芋を作っている者、焚き火を見ている者、木の下で昼寝をしている者様々だった。
僕は縁側に座って中庭を見ていた橘先輩と近衛先輩の隣に座った。
湊 「こんな日もあるんですね。」
凛 「鳴瀬。あぁ、頻度は多くないけどな。」
柚月 「いつも、あまり明るい時間に外に出れないし晴れて良かったね。」
湊 「はい、快晴ですね。皆、楽しそうです。」
凛 「、、、そうだな。こういう時間が続けば良いんだけどな、、、」
柚月 「、、、」
湊 「、、、でも、前の僕にとっては羨ましい時間です。何をしていても受け入れてもらえる。」
柚月 「、、、前は受け入れてもらえなかった?」
湊 「、、、はい。計算ばかりしていたので変な子ども扱いでした。家族からも呆れられていました。」
柚月 「、、、どうして計算してたの?」
湊 「、、、数字は嘘をつかない。裏切らないんです。」
凛 「、、、」
湊 「、、、僕、父親に捨てられた子どもなんです。昔、父親が関係を持っていた母が僕を引き取って育ててくれました。だから兄とも血は繋がっていなくて、、、」
凛 「、、、そうだったのか、、、」
柚月 「、、、」
凛 「、、、数字は裏切らないか。」
湊 「橘先輩はそう思いませんか?」
凛 「、、、鳴瀬の気持ちは分かる。でも、鳴瀬には数字以外にも裏切らないと信じられるものができれば良いな。」
湊 「、、、数字以外ですか?」
凛 「これから見つけられれば良い。」
柚月 「そうだね。意外と近くに居るかもよ。」
湊 「近くに、、、」
先輩たちと中庭を見ていると界君がこちらを見ていて、立ち上がってこっちに歩いてきた。
界 「湊。焼き芋、食べようぜ。」
湊 「焼き芋か。」
界 「優が焼いてるんだ。もう少しでできるぞ。」
湊 「うん。」
僕が先輩たちに会釈して優軍の元に行こうとすると急に橘先輩が立ち上がった。
凛 「っ、全員伏せろ!」
その声に驚いて振り向こうとすると僕と界君は近衛先輩に強い力で押し倒され、近衛先輩は僕らに覆い被さるようにした。
隙間から中庭を見ると第一級人員の早坂先輩たちは橘先輩の声に反応して小さい子たちを僕らと同じように庇い、焚き火の近くで一人動けなくなっていた優君を橘先輩が抱きしめると近衛先輩に頭を押し付けられ、急に大きな音と強風が吹き荒れた。
風が止むと近衛先輩の腕の力が緩み、顔を上げると地面に大きく穴が開いていて他の皆が倒れたり怪我をしたりしていた。
湊 「えっ、、、」
柚月 「、、、二人とも怪我は?」
界 「へ、平気です、、、」
柚月 「じゃあ、ここで動かないで。」
近衛先輩は急に走り出し、そちらを見ると橘先輩が倒れていた。
界 「っ、、、」
界君も走り出し、僕も追い掛けると橘先輩は全身に怪我をしていて意識を失っていた。
橘先輩は優君を抱きしめるように倒れていて、優君はかろうじて意識を保っていた。
林 「っ、橘!」
教官や浅沼さんたちも駆け付けると、医者の瀬良さんも到着し、ほとんど全員が橘先輩の手当手に駆け付けた。
瀬良 「、、、」
林 「瀬良!早く橘の手当てを!」
瀬良 「えっ、、、」




