01
国中で戦争により、人々は家を焼かれたり家族を失ったりしていた。
自然豊かな村に住んでいた湊は、自宅の自分の部屋で学校の課題をしていると勢いよく玄関の引き戸が開く音が聞こえた。
〜湊side〜
兄 「はぁはぁ、、、っはぁはぁ、、、」
玄関に向かうと兄が立っていて右手には白い封筒が見えた。
兄 「、、、母さん!母さん!」
兄は僕に気づいても僕を無視して台所にいる母親の元に向かった。
母 「何だい?騒がしいね。」
兄 「これ!」
母 「えっ?っ、この封筒、、、」
台所に向かうと兄の持っていた封筒を母親が焦ったように開けて中の紙を広げた。
母 「、、、」
母親はその紙を読み終わるなり僕の方を睨みつけた。
母 「はぁ、、、」
湊 「、、、それは?」
兄 「お前も終わりだってことだよ。」
湊 「えっ、、、?」
母 「、、、誰にも言うんじゃないよ。今夜、出発しなさい。」
湊 「出発?どこに、、、」
母親がぐしゃぐしゃにした紙を僕に向かって投げつけ、広げて見るとある文字が目に飛び込んだ。
湊 「っ、、、茜坂、、、」
兄 「家に閉じこもってばっかりいるからこうなるんだよ。」
湊 「、、、」
母 「さっさと支度しな。あんたが行かないと何されるか分からない。」
湊 「、、、い、行かないといけませんか?」
兄 「はぁ?」
母 「当たり前だろう?国からの命令なんだから。でも、誰にも気づかれず行ってくれ。」
兄 「知ってるか?茜坂に行ったやつは誰も帰ってこないんだよ。殺されてるって噂だ。」
湊 「っ、、、」
兄 「いっつも訳の分からない計算ばっかして家の手伝いもしないから、ばちが当たったんだよ。」
湊 「、、、」
母 「騒いでないで、早く支度しなさい。」
母親に背中を押され、訳も分からないでいると母親と兄の声が聞こえた。
兄 「あいつのこと、近所に何て言うの?」
母 「行方不明になったって言えば良いんだよ。どうせ、帰ってこない。」
兄 「まっ、それもそっか。食い口が減るから今夜から腹一杯食べれそうだな。」
母 「ふっ、確かにそうだね。」
その夜、母親に家を追い出され、僕は封筒に入っていた地図を頼りに歩き出した。
明け方になり、ふらふらになりながら木の下で休んでいると農民に声を掛けられた。
農民 「どうかしたのかい?こんな朝早くから。」
湊 「あっ、、、あの、茜坂という場所を知りませんか?」
農民 「っ、、、茜坂?お前さん、、、」
農民は顔をしかめて僕を見た。
農民 「、、、選ばれてしまったのか。茜坂はここをまっすぐ行けば分かる。今日の暮れには着くだろ。これ、持って行け。」
農民は僕に握り飯を渡した。
湊 「あ、ありがとうございます。」
農民 「、、、あんな場所に呼び出されて、不運な子だこと、、、」
湊 「、、、」
農民が行くと握り飯を懐にしまって歩き出し、人気のない道で握り飯を食べた。
どこに行っても同じように不運だ、可哀想だと言われ、煙たがられてここまで来た。
でも、家も追い出されてしまって行くところもない、、、
日も沈みかけた頃、山奥に高い塀で囲まれた広い敷地に大きな建物が建っていた。
湊 「、、、ここか。」
門の前には見張り番が二人立っていた。
男 「お前、ここに呼び出されたのか?」
湊 「は、はい。これが届いて。」
届いた紙を渡すと、見張り番の男は紙を見た。
男 「、、、鳴瀬か。入りなさい。」
見張り番の男について行くと強そうな男が立っていて、その人が目に入ると、見張り番の男は敬礼した。
男 「林教官。鳴瀬です。」
林 「分かった。お前はここまでで良い。見張りに戻れ。」
男 「はっ。」
見張りの男が戻ると教官と呼ばれたこの男は僕を見た。
林 「私がここの管理兼監視をしている林だ。教官と呼ぶように。」
湊 「わ、分かりました。」
林 「この奥の仕事部屋は、第一級人員が仕切っている。案内はその一番上である橘に頼んである。ついて来なさい。」
教官の後ろをついて行くと、廊下で繋がってはいるものの古びた学校のような場所に着いた。
一番手前にあった部屋の扉を教官が勢いよく開けると中で座っていた二人の男の子が驚いて立ち上がった。
林 「橘はどうした。」
男の子 「は、はい。今、こちらに向かっていると思います。あっ、来られました。」
振り向くと女の人が立っていた。
林 「橘。」
女の人 「教官、遅くなって申し訳ありません。」
林 「構わん。こいつが昨日話した鳴瀬だ。案内と世話を頼む。」
女の人 「承知しました。鳴瀬、ついて来なさい。」
湊 「は、はい。」
教官と分かれ、女の人について行くと女の人は急に立ち止まって振り返った。
女の人 「名前は?」
湊 「な、鳴瀬湊です。」
女の人 「湊か。良い名だな。私は、橘凛だ。」
湊 「よ、よろしくお願いします。」
凛 「あぁ。家に届いた紙を見せてくれるか?」
湊 「は、はい。」
母親にぐしゃぐしゃにされた紙を渡すと橘さんは普通に受け取って紙を広げて読み始めた。
湊 「すみません、、、ぐしゃぐしゃで、、、」
凛 「えっ?あぁ、家族にされたんだろ?」
湊 「え、えぇ。」
凛 「良くあるんだ。気にするな。」
思えばさっきの見張り番の男も何の反応も示さなかった。
そんなことを考えていると橘さんは紙を見ながら歩き出した。
橘さんについて行くと、長い廊下の両側にいくつも部屋の扉が並んだ場所で、橘さんはある部屋の扉を開けた。
扉の横には"人事部"と書かれた木札が掛かっていた。
凛 「入るぞ。」
中には男の人がいて本を読んでいた。
男の人 「凛。どうした?」
凛 「昨日話した新人だ。鳴瀬湊。第三級人員だ。」
男の人 「了解。」
橘さんは、壁に寄り掛かり腕を組んで外を見ていた。




